「ポスト広告」時代のルールを再確認しよう!

コンテンツマーケティング
「マス広告時代の終焉」や「広告が効かない」という言葉を最近よく耳にする。テクノロジーの進展により、従来と異なる広告のあり方が求められている。広告の未来はどうなるのだろうか?
Web広告は、この10年間でテレビや新聞といったオールドメディア上の広告と比較し、著しい成長を遂げている。また、SNSの広がりなどから、メディアとプラットフォームといった二項対立で語られることも多い。
しかし、果たして形態の違いがポスト広告時代の新ルールなのだろうか? いくつかの事例をもとに考えてみよう。
広告は360°から365日へ~Amulのキャンペーン
Amulは、インドに本社を置くグローバルな乳製品のブランドだ。
インド国内で、Amulのキャラクター(ブルーの髪の毛で赤と白の水玉ワンピースを着た女の子=Amulちゃん)を知らない人はいないといわれるほど抜群の知名度を誇る。というのも、同社は1960年代から一貫して、Amulちゃんのキャラクターを使用した屋外広告のキャンペーンを続けているからだ。
このキャンペーンは、話題になっている時事ネタや人物をパロディにしたイラスト(Amulちゃんが登場する)の屋外広告であり、製品広告ではない。話題のニュースが出ると、数日のうちに新しいイラストに変わるスピード感と、消費者の共感するネタ(たとえ内容がネガティブでも)が人気を呼び、ブランドの知名度と信頼に貢献している。
新しいルールは、消費者が主役の広告
Amulのキャンペーンは、屋外広告(看板)にイラストという、アナログな手法だ。手法自体は決して新しいものでないが、従来の広告と異なる点は、自社の製品を語らず、消費者が共感する内容を自社のキャラクターと結びつけて提供していることだ。 このキャンペーンの成功が示唆するところは、広告が効かないのではなく、従来の広告表現が現在の消費者に刺さらないということだ。消費者に対して360度取り囲むように、企業が一方的に製品やブランド名を叫ぶものから、365日、消費者の人生に寄り添う、双方向のコミュニケーションに変わりつつあるということだろう。 SNSというプラットフォームの誕生は、消費者を物語の主役にした。いまやブランド体験は、消費者の嗜好(しこう)やライフスタイルを表現するコンテンツの一部になっている。そのため、企業は消費者に語り続けてもらうための広告をつくる必要がある。以下、新しいルールで成功した広告・キャンペーンの事例を三つ紹介しよう。
1.ヴァージン・アメリカ航空の事例:ひときわ優れたものをつくれ!
ヴァージン・アメリカ航空は、ミュージックビデオさながらの機内安全ビデオをYouTubeに公開した。機内安全ビデオといえば、シートベルトの着用や、酸素マスク、救命胴衣の扱いなど、どこの航空会社も同じで退屈なものという印象が強い。
しかし、同社のビデオはCAが見事な歌声とダンスで機内安全の説明をし、乗客も一緒に歌い、踊り、パフォーマンスを繰り広げるという素晴らしい出来栄えで、飽きることなく最後まで見てしまう。実用的な機内安全の説明を歌と踊りで、優れたエンターティメントに仕立てたところに目新しさがあり、瞬く間にWebで話題になった。
ヴァージン・アメリカ航空の動画事例については、「トイレットペーパー、電池……地味な商品でコンテンツマーケティングを成功させる方法5選」でも紹介しているので、そちらもご覧いただきたい。
2.ダヴの事例:従来の広告パターンを抜け出せ!
ユニリーバは、女性が自分の美しさに気づいてもらうため、「ダヴ リアルビューティスケッチ」という実験を行い、動画を公開している。実験では、FBIで訓練を受けた法医学画家が、女性が話す「自分の顔の特徴」をもとに、本人を見ないまま肖像画を制作。
次に、その女性と実験前に会ってもらった赤の他人に、「自分が会った女性の顔の特徴」を言葉で説明してもらい、肖像画を制作し、その2枚の肖像画を比較して「本来の自分の美しさ」に気づいてもらうというもの。YouTubeでは、公開後1週間で約1,500万回以上視聴された。詳しくは、「コンテンツ動画『ダヴ リアルビューティー スケッチ』に見る心理面からのアプローチ」を参照してほしい。
通常、化粧品のキャンペーンは、製品、ブランドの特長や他社との違い、理想の美しさを全面に押し出すものだが、このキャンペーンでは、女性の一般的な悩み(容貌のコンプレックス)について、仮説を立て、実験を通して新しい視点に導くという等身大のキャンペーンになっている。
3.スターバックスの事例:顧客との価値共創
スターバックスは、オンラインコミュニティ「My Starbucks Idea」を公開している。このコミュニティでは、ユーザーが店舗や商品についてさまざまなアイデアを投稿、ディスカッションできる。
投稿したアイデアをスターバックスが採用した場合、コミュニティで報告される。このサイトは、顧客の声を形にするという双方向のコミュニケーションを可能にしている。ブランドにとって、もっとも大事なのは、消費者といつでもつながっていることだ。それには、顧客とのコラボレーションが有効だ。
コラボレーションは顧客との価値共創を促し、ブランドと顧客の絆をより強固なものにする。
まとめ
三つの事例をご覧いただき、消費者が主役であり、顧客と一緒につくりあげるものこそが、「ポスト広告」時代の新しいルールだということが、おわかりいただけたのではないだろうか。
消費者と一緒にどんな物語を紡ぎ、どんなプラットフォームに載せていくか。そこに創意工夫が求められている。
参考元: Marketing in the Post Advertising Age : It’s Not About Advertisements. 2013年日本の広告費 My Starbucks Idea ユニリーバ・ジャパン ダヴ リアルビューティー スケッチ Amul Amul: Amazing story of India's most successful brand 【ヴァージン・アメリカ航空】機内安全ビデオ
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