2つのマーケティングアワードに見る、日本が「マーケティング後進国」である理由

デジタルマーケティング

「DM」

この単語を耳にした時、あなたの頭に浮かんだものはなんだっただろう?
多くの人が「ダイレクトメール」--通信販売の営業ハガキ、もしくは近所にできた新しいお店からのチラシ、のようなものを思い浮かべたのではないだろうか?

「ダイレクトマーケティング=DM=ダイレクトメール」

これが今の我が国における一般的な認識といって良いだろう。

しかし世界最先端のダイレクトマーケティングは、伝統的なマス広告もWebもソーシャルもコンテンツマーケティングも、すべて飲み込んで遙かに高度な進化を遂げている。

本日は、世界有数の知名度と権威を誇る二つの広告/マーケティングアワードである「DMA国際エコー賞」と「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」を例に、なぜ日本が「マーケティング後進国」と言われるのかを探ってみたい。

世界最高峰のマーケティングアワードは日本ではほぼ無名

DMA国際エコー賞は、世界最大にして最古のダイレクトマーケティング関連機関である米国ダイレクトマーケティング協会(Direct Marketing Association)主催のイベントだ。

1929年「ザ・ベスト・オブ・ダイレクトメール」としてスタートした同アワードは、世界でもっとも権威あるダイレクトマーケティングアワードと呼ばれ、同時に世界最難関の広告賞とも呼ばれている。

毎年世界中から約1000作品の応募を集め行われるその審査は、各国から経験豊富かつ第一線で活躍する250人ほどのプロフェッショナルを集めて行われるが、その際の審査指標は以下の3要素である。

1.優れたマーケティング戦略
マーケティングコミュニケーションの目的が明確であり、それを実現するための戦略が実際にどのように機能し、課題を解決したかが明快であるかどうか

2.群を抜いたクリエイティブ
新しい時代に即した革新性、斬新さ、そして外面のデザインだけでなく、コピーなどのメッセージがどのようにターゲットオーディエンスに影響を与え、行動を促したか。多様なメディアを複合的に用い、相乗効果によって新しい効果を生んでいるかどうか。

3.卓越した成果
KPI(重要業績評価指標)やROI(投資資本利益率)を基本とし、その他レスポンス率や販売実数、シェア変動率、その成果の汎用性や拡張性などが第三者にも容易に理解できる明確な数値や比較可能なデータが明示されているかどうか。

あなたが少しでもマーケティングに関わっているのであれば、この審査指標を全て満たすマーケティングキャンペーンの実現がいかに難しいかおわかりいただけるだろう。

そして同時に、いったいどんな作品がこのアワードを受賞するのか、興味が湧いたのではないだろうか?

この指標そのものがDMA国際エコー賞が「世界最高峰にして最難関」と呼ばれるゆえんであり、同アワードの受賞を価値あるものとしているのである。

このように世界的に非常に権威あるアワードであるにも関わらず、DMAおよびDMA国際エコー賞の日本国内での知名度は限りなくゼロに近い。

実際、毎年開催される同アワードへの日本からのエントリーはほとんど無く、2013年はキリンがかろうじてブロンズ賞を獲得したのが日本勢唯一の受賞である。

盛り上がる「カンヌ国際広告祭」ー広告プロモーション偏重の日本のマーケティング

無名なDMA国際エコー賞に対し、広告やプロモーションにたずさわる人間であれば誰でも知っているであろうアワードがある。

「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」、いわゆる「カンヌ国際広告祭」だ。

カンヌライオンズは、その名が顕すとおりクリエイティビティを競う場だ。

必ずしもマーケティング戦略や、その結果を評価するものではない。どちらかというと、アートの世界に近いアワードである。

「カンヌ金賞」は、おそらく広告にたずさわる全てのクリエイターの憧れであり、毎年日本からも応募が殺到し、多くの作品が賞を受賞する。

我が国は広告分野、特にクリエイティブに関しては世界トップの実力を備えているのだ。

そしてこの事が同時に、日本がマーケティングにおいて広告プロモーション偏重型の「後進国」であることの証左となっている。

広告プロモーションはあくまでマーケティングの1要素であり、1プロセスに過ぎないからだ。

いかに優れた広告も、優れたマーケティング戦略なくしては意味をなさない。
クリエイティブに優れる「カンヌ金賞」の作品でも、DMA国際エコー賞においては最終審査にすら進めないこともあるという。

なぜ日本は「マーケティング後進国」なのか

日本からのDMA国際エコー賞へのエントリーが少ない理由。

それは単純に、ここまで高水準なマーケティング施策をトータルに設計、実施、評価できている企業、そしてそれを第三者に伝わる作品にまで昇華できるエージェントが極めて少ないからなのだ。

広告やデジタルマーケティングなど、分野毎に日本が世界をリードしている部分もある。

しかし、調査/分析に基づいたターゲットの設定、戦略の立案から、各種メディアを有機的に連動させた戦術の実行、効果測定までの「マーケティングコミュニケーション」を統合的に見られる人材が企業内にもエージェント内にもまだまだ圧倒的に不足している。

日本人は部分最適が得意だと言われるが、部分最適を積み上げても必ずしも全体最適とはならないのがマーケティングだ。

これからマーケティングにたずさわる人々には、より複眼的な思考と、分野横断的な知見が求められることになるだろう。