マーケティングは死に、アドボカシーが生き残る

コンテンツマーケティング
ハーバード・ビジネス・レビューに「マーケティングは死んだ」(“Marketing is dead”)というタイトルの記事が掲載された。
この記事を寄稿したビル・リー氏は、従来型のマーケティングが効果を失っており、今後は、マーケティングを顧客と一緒に行っていく必要があると主張している。
「マーケティングは死んだ」という刺激的なタイトルが付けられた事もあり、この記事は、大きな反響を巻き起こし、Webサイトには500以上のコメントがよせられた。以下、概要をご紹介しよう。
リー氏は、広告、PR、ブランディング、広報などの従来型のマーケティング手法はもはや効果がないと主張している。その根拠は以下の通りだ。
購買行動の変化
人々は、ネットで検索をしたり、ソーシャルメディアの口コミなどを見て購入の意思決定をしている。従来型のマーケティングで、人々の意思決定に影響を与える事は出来ない。
マーケティングへの不信
企業の経営者は、マーケティング部門に対して十分な役割を果たしていないと考えている。英国での調査によると、以下のようなショッキングな調査結果が出ている。(CEO600人を対象に行った調査)
- マーケティング責任者は、売上を伸ばせていない。全体の73%
- マーケティング責任者は、マーケティング予算の必要性を説明できていない。全体の72%
- マーケティング責任者は、「ブランド価値」を重視するが、それが、株価、売上、利益に繋がっていない。全体の77%
ソーシャルメディア
企業の従業員、広告代理店、コンサルタントは、消費者の事を理解していない。ソーシャルメディアを従来のマーケティングの延長だと考えており、成果が上がっていない。
どうだろう?「マーケティングは死んだ」というのは、とても刺激的な主張だが、彼が理由として上げている点は、いずれも納得のいくものではないだろうか?
では、リー氏が主張する今後のあるべきマーケティングの姿とは何なのだろうか?
顧客を巻き込むマーケティング
それは、商品開発、マーケティング、販売の各プロセスにおいて、消費者の協力を求め、消費者に影響力を行使してもらうという考えだ。一般に、アドボカシー・マーケティングと呼ばれているものである。
リー氏は、ハーバード・ビジネス・レビューの中で、いくつか興味深い事例を紹介している。その中でも、もっとも印象的なのは、フロリダ州が若年層の喫煙率を下げるために行った取り組みだ。
アドボカシー・マーケティングの成功事例
若者の喫煙はいつの時代でも大きな問題だ。フロリダ州は、喫煙の危険性を伝えたり、タバコを吸うのはかっこわるいというイメージを植え付ける、広告キャンペーンを実施し、全く効果を上げられていなかった。
そこで、やり方を180度変更し、影響力を持つ10代の若者600人を集めた集会を行い、この問題を話しあった。若者達は、過去の取組みの問題点を指摘し、今後どうすべきか、ブレインストーミングを行った。
その中で、「年配の顧客で死んで売上が減っていくので、若年の喫煙者を増やすべきだ」と書いた、タバコ会社の文書が公開され、若者達は、大きな怒りを感じた。
その結果、若者達は、タバコに反対する学生の会(Students Working Against Tobacco、SWAT)と呼ばれる会を組織し、一大キャンペーンを行った。自らワークショップを開催したり、Tシャツを販売したりして、地域にメッセージを届けた結果、大きな成果を上げる事が出来た。
タバコ会社の妨害があったにも関わらず、1998年から2007年の間に、10代の喫煙率がなんと半分になったのである。
それまでいかに広告宣伝を行っても、全く効果が無かった問題を、若者達が自ら解決してしまったのである。リー氏は、このようなアドボカシー型のマーケティングが今後の主流になっていくべきだと主張している。
まとめ
どうだろう? なかなか面白い主張ではないだろうか?
僕が、この話を読んでいて、思いだしたのは、オバマが大統領に選出された2008年の選挙である。この選挙活動は、Facebookの共同創業者が選挙本部に参画し、ソーシャル・メディアを徹底的に活用し、草の根運動を盛り上げて、圧倒的な不利を克服して、オバマを当選させた選挙だった。
この選挙活動が成功した最大の要因は、人々が選挙に参加しやすい仕組みを作上げた事、もっというと、ソーシャル・メディアやネットというプラットフォームを使って、大きなお祭りを起こす事に成功したからだと思っている。
今後のマーケティングにおいては、消費者が参加できる舞台作りがポイントになりそうだ。
あなたは「マーケティングが死んだ」と思いますか?あなたは、今後のマーケティングがどうあるべきだと思いますか?
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