マーケティングオートメーションの運用にシナリオは必須!その作成手順とポイントは?

マーケティングオートメーション
マーケティングの対象が細分化されるにつれ、マーケティングオートメーション(MA)の需要が高まっています。One to Oneマーケティングなどで多くの顧客に個別フォローを行う場合、人手によるオペレーションでは工数が膨大になってしまうからです。ただし、単純にマーケティングオートメーションを導入すればすべてが効率化されるわけではありません。効率的に期待した効果を上げるためには、ターゲットに応じたシナリオ設定が必須となります。今回はシナリオ設定の要素や手順、効果を上げるための注意点などについて解説していきます。
また、MAツールを既に導入しているが運用について悩んでいるという方は、こちらの『なぜ貴社のMAは軌道に乗らないのか? ?MA運用に悩んだときに見直したいたった三つのポイント』もぜひチェックしてみてください。
目次
そもそもマーケティングオートメーションとは?
マーケティングオートメーションとは、MAとも呼ばれるマーケティング活動を自動化するツールです。マーケティングの黎明期には、マスマーケティングと呼ばれる生産者目線のマス(大衆)向けたマーケティングが一般的でした。大量生産、大量販売の時代には、マーケティングの対象に個人という概念はなかったのです。しかしオイルショック(1970年代)によるインフレが世界経済を直撃し、マスマーケティングはニッチマーケティングへと変化していきます。マーケティングの目線(視点)は、マスからニッチ(小規模な事業領域)に、そして生産者から顧客へと移ります。モノの売れない時代には、顧客目線のマーケティングが必須となったのです。
ニッチマーケティングはその後、セグメントマーケティング、One to Oneマーケティングと細分化されていきますが、これに伴って発達したのがマーケティングオートメーションです。細分化されたマーケットや個別の顧客を管理するには、人手では膨大な時間がかかってしまうからです。一般的なマーケティングオートメーションには、メールマーケティング機能、リード顧客の管理機能、スコアリング機能、シナリオ作成(キャンペーン管理)機能、ランディングページやフォームの作成支援機能、アクセスログ分析機能などが実装されています。
マーケティングオートメーションにおけるシナリオとは何か
では、マーケティングオートメーションの機能の一つであるシナリオとはどのようなものなのでしょうか。シナリオとは、顧客が購買に至るまでの行動を予測し、その行動を実現させるための筋書きです。顧客の購買意欲は、その時々の情報によって思考や感情と共に変化し、最終的に購買するか否かの判断に至ります。これを購買プロセスまたはカスタマージャーニーと言いますが、これらは時系列で整理することができます。この顧客の動きを予測し、見える化(時系列的に整理する)することで、顧客とのタッチポイントを明確にし、適切なタイミングでフォローを行うのです。
この時の行動指針を決めておくことをシナリオといいます。たとえば、リード顧客に新商品案内のメールを配信した後のシナリオとは以下のようなものです。
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メールを開封した顧客に、更に詳細な商品情報や活用事例、キャンペーンの情報を送る
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メール内のURLをクリックし、キャンペーンサイトを訪問した顧客に無料セミナーの案内を送る
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メールを開封しなかった顧客に、視点を変えた別商品の案内メールを送る
顧客の行動によってその後のアクションを決めておき、これをマーケティングオートメーションの機能で実現するのがシナリオなのです。
マーケティングオートメーションのシナリオで設定する要素
適切なシナリオを作成するためには、必ず決めておかねばならない要素がいくつかあります。以前はよく使われていた5W3H(5W1H)でも整理されていた内容なので、マーケティング戦略の策定時には必ず設定しているはずです。
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ターゲット(Who:誰に)
まず誰にアプローチを行うのか、ターゲットを設定します。SFA(営業支援システム)やCRM(顧客情報管理システム)などで蓄積してきた情報から、年齢、性別、嗜好、地域で分類したり、B2Bの場合には業種内容や経営方針、リードの存在有無などでターゲティングします。
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タイミング(When:いつ)
先述の新商品案内メールの例であれば、メールを開封した、もしくは特定のWebサイトを訪問したタイミングで次のシナリオをスタートさせます。カスタマージャーニーにおいて、適切なタイミングでフォローや情報提供を行うことはその後の購買行動に大きく影響します。
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コンテンツ(What:何を)
発生したイベントに対して、どのようなコンテンツ(フォローや提供する情報の内容)を提供するかを決めておきます。同じく先述の例であれば、メールを開封した顧客には詳細情報や活用事例を、開封しなかった顧客に対しては別の情報を送るなどのようにです。
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チャネル(How:どのように)
どのような手段で顧客にコンテンツを届けるかを決めておきます。先述の例であればメールによるアプローチになりますが、他にもSNSや電話(アウトバウンドコール)、ダイレクトメールなどが考えられるでしょう。
シナリオ設定・運用の4つの手順とポイント
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自社にとってのペルソナ(理想的な顧客)を見極める
設定する要素でもお話ししたように、シナリオを設定するにはまずターゲットを決めなければなりません。これは「資料請求をしてきたものの、その後のアクションがない顧客」のように漠然としたものでも良いのですが、できればその商品やサービスにとって理想的な顧客をペルソナとして設定し、詳細にターゲティングすると良いでしょう。B2Bの場合は、理想的な企業と理想的な顧客の両方を設定します。
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ペルソナのカスタマージャーニー(購買プロセス)を考える
次にペルソナの購買行動を予測してカスタマージャーニーマップ(顧客の購買行動を時系列に並べた一覧表)にまとめ、顧客とのタッチポイントとチャネルを明確にします。B2Bの場合はその企業が抱える課題を明確にし、情報収集から課題解決のための行動に至るまでのジャーニーマップを作ります。
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個々のカスタマージャーニーに応じたシナリオを設定する
カスタマージャーにマップが完成したら、個々のチャネルとタッチポイントに応じたシナリオを作ります。マップの作成時にターゲットとタイミング(タッチポイント)、チャネルは明確になっていますので、ここでは提供するコンテンツを明確にします。
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PDCA(Plan ? Do ? Check ? Action)を回す
シナリオは、一度作成したからといってそれで終わりではありません。また最初からあまり詳細なシナリオを作り込む必要もありません。作成したシナリオを実行し、問題点を確認して改善していくことが大切です。また状況の変化によってシナリオは常に変化していくので、PDCAサイクルを回し改善していくことは必須です。
シナリオ運用で効果をあげるための注意点
上記のような手順でシナリオを運用する場合に、特に注意する点は以下の3つです。シナリオ機能は魅力的な機能ですが、もともとの設定が不十分だと、思ったような効果を上げてくれません。事前の準備は入念に行いましょう。
- 顧客データを十分に整備する
顧客データは実名をできるだけ多く取得し、実名に紐付く精度の高いデータが必要です。SFAやCRMのデータに加えて、展示会やセミナーで集めた名刺情報、アンケート情報なども漏れなく取り込みましょう。
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セグメントが意味をなしているか見直す
消費者の場合には年齢、性別、居住地や嗜好、B2Bの場合には業種などの属性で顧客はセグメント(分類)されているはずです。シナリオの運用前にはこのセグメンテーションが正しいか、また意味のあるものになっているかを確認しておきましょう。適切でないセグメントにコンテンツを送っても、顧客にとって意味のないコンテンツでは反感を買いかねません。
- コンテンツを充実させる
正しいセグメントにコンテンツを送っても、内容の薄いものでは良い反応は期待できません。送るコンテンツは顧客のニーズに合致した、魅力的なものでなければなりません。セグメントされた顧客のニーズをよく分析し、一番欲しいであろうコンテンツをタイミング良く配信することが重要です。
すぐに使える!代表的なシナリオ例3選
最後にマーケティングオートメーションでよく使われる、代表的なシナリオを3つほど紹介しておきましょう。実際のシステム上では詳細に分岐が設定されていますが、このような用途に使えるということを確認して下さい。
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展示会来場者のフォローアップシナリオ(リード顧客の見極め)
ターゲット:展示会来場者
提供コンテンツ:展示製品の詳細情報、セミナー案内、キャンペーン情報など
目的:リード顧客の見極め、リスト化
シナリオ:展示会来場者にお礼メールを送信
→ 開封(メール内の複数リンクをクリック)の場合 → コンテンツを提供
※リンクのクリック回数をスコア化し、スコアが一定以上になったらキャンペーンの案内メールを送信する。
→ 未開封 → 同様製品や新製品案内のためにリスト化しておく
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解約リスクの検知シナリオ(既存顧客のフォローアップ)
ターゲット:サブスクリプション契約中の既存顧客
提供コンテンツ:サービス更新の案内
目的:解約リスクの検知
シナリオ:サブスクリプションサービスの期限数ヶ月前に更新のお知らせを送信。継続キャンペーンの情報などもあれば併せて送る
→ 開封(メール内の更新案内リンクをクリック)の場合 → お礼メールを送信
→ 未開封 → サブスクリプションサービス期限の前に再度お知らせメールを送信
※継続キャンペーンの情報などもあれば併せて送り、返信がなければ解約リスクのリストに記載、営業にフォロー客として連絡
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採用セミナーのフォローアップシナリオ(入社意欲の確認)
ターゲット:採用セミナーの参加者
提供コンテンツ:会社紹介やオフィス環境、先輩社員の情報など
目的:セミナー参加者の入社意欲向上
シナリオ:セミナー参加者にお礼メールを送信
→ 開封(メール内のリンクをクリック)の場合 → コンテンツを提供
※以降、メールの送信とコンテンツ提供を繰り返し、意思の確認を進めていく
→ 未開封 → 後の活用を想定してリスト化しておく
まとめ
マーケティングオートメーションのシナリオ機能は、非常に便利で魅力的な機能です。ただし最初から高度な設計が必要なわけではありません。最初はシンプルなものから始め、PDCAサイクルを回す中で本当に必要な機能に絞ってシナリオを作るようにしましょう。大事なことは顧客データの整備、セグメントの確認、コンテンツの充実です。
また、MAツールを導入してみたけれど運用が上手くいかないとお悩みの方は、こちらの『なぜ貴社のMAは軌道に乗らないのか? ?MA運用に悩んだときに見直したいたった三つのポイント』もぜひチェックしてみてください。
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