LEGOに学ぶ、ブランドにおける「物語化」の力

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誰もが子供の頃に一度は、レゴで遊んだ思い出があるのではないだろうか。

そういう筆者も、小さい頃レゴ遊びに夢中になったひとりだ。理想の家を組み立ててみたり、友達と一緒に街をつくってみたり。今でもレゴのピースにふれるたびに、当時のわくわくした気持ちを思い出す。

昨年、創業80周年記念としてLEGOはブランドストーリーのショートムービーを作成した。このムービーは、レゴに夢中になったかつての子供たちの心をつかみ、6日間で1万回以上視聴されるなど大きな話題を呼んだ。現時点でYoutube上にUpされたビデオは51万回も視聴されている。

レゴで遊んだ子供時代に対するノスタルジックな思いが、このムービーのバイラルを支えたともいえる。しかし、このLEGOのブランドストーリームービーには、それだけではない、コーポレートブランディングにおける「物語化」のポイントがいくつも隠されている。

LEGOについて

レゴは1932年にデンマークでオーレ・キアク・クリスチャンセンが、家族経営の玩具工房としてスタートした。それから80年がたった今では、全世界130カ国以上のこどもたちに愛されるトイメーカーに成長した。

だが、レゴの過去には様々な紆余曲折もあった。レゴブロックの人気の確立した後の1980年から90年代ですら、コンピューターゲームの登場で、一時ブランドコンセプトがゆらぎ、成長が止まったこともあった。しかしそのたびに、LEGOは自らのブランドの根幹に立ち戻り、事業を立て直していった。

ピクサー映画のような雰囲気をもつ、この17分のブランドストーリーには、そうしたブランドの紆余曲折と、その中でどんな時期にあっても変わらなかったLEGOのブランドコンセプトのエッセンスがつまっている。

レゴストーリー

ストーリーは1932年、不況のあおりを受け、後のレゴの創業者オーレが経営する木工所から最後の職人が去るところからはじまる。しかしその後オーレは、妻の死、火事での工房の消失など、いくつもの困難を、息子とともに、創造的なアイディアとあきらめない気持ちで乗り越え、徐々に玩具メーカーとして事業を拡大していった。

ストーリーの中では、LEGOというブランド名の由来も語られる。元々は、よく遊べという(“Leg Godt”)というDenmark語からオーレが考えついた言葉だったが、後からラテン語の「組み立てる」という意味ももっていることがわかった。

また、当初レゴのブロックは事業を引き継いだ息子のゴッドフレッドは、レゴに創造的な「遊びのシステム」を導入したい、と考え、今のレゴブロックのように、組み立てやすい形に改良を進めた。これは、レゴの「子供の創造性をサポートする」、というコンセプトを大きく発展させるきっかけとなった。

こうして、レゴは現在にいたるまで、子供の心をつかむ玩具としてその世界を広げている。しかし、どんなときも、丁寧につくること、「Only the best is good enough.(最高でなければ、よいと言えない)」というコンセプトが根底にあることはかわらない、といってムービーは終わる。

ブランドにおけるストーリーテリングの重要性

このショートムービーのように、ブランドをストーリー化することは、ブランドにキャラクターを与えることにつながる。すると、カスタマーはブランドに対し、友人に対するような親しみや、信頼をもつようになり、結果として、カスタマーとブランドの関係性強化につながる。さらに、ストーリーを通じてブランドの哲学や、守り続ける価値を自然なかたちで伝えることもできる。

例えば、レゴのブランドストーリーにおいては、最高な品質へのこだわり、困難に負けない不屈の精神、家族を大切にする想い、そして、常に新しいことを創造する姿勢、などがブランドの成長ストーリーから伝わってくる。

さらに、レゴのブランドストーリーには、典型的な「物語化のセオリー」が使われている。例えば、様々な困難を、家族や仲間とともに、工夫と創造でのりこえるプロセスは、スターウォーズや多くのヒーローストーリーに典型的にみられるパターンだ。こうしたフレームはブランドに対し、困難を乗り越え、よりよい世界を実現するヒーローというイメージを与え、カスタマーからの共感を生むことができる。

もちろん、レゴのブランドストーリーの成功は、ブランドがこれまで提供し続けたブランドコンセプトや価値とこのショートムービーの伝える内容がきちんとつながっていたからだといえる。しかし、昔からある物語のフレームをうまく利用することは、カスタマーの感情に訴える形で、ブランドのコンセプトを伝えるひとつの手段として、非常に効果的になりうるだろう。

まとめ

どうだろうか、参考になっただろうか?

どんなブランドにも、創業やその後の展開にまつわる様々なストーリーがあるはずだ。色々な困難を乗り越えながら、ブランドとして大事にしているものを確立し、世の中に提供していくプロセスは、それだけで、ひとつの心打つ物語になりうる。

あなたも一度、あなたの関わるビジネスやブランドの過去から今にいたる物語を書き出してみてはいかがだろうか?もし、それを動画などのビジュアル化してカスタマに伝えられたら、よりあなたのブランドに対する共感を呼び、つながりを強化するきっかけになるだろう。物語の主人公が、多くの人の共感を呼ぶように。

参考元:Transmedia Storytelling From Lego: A World Without Limits
Photo: Some rights reserved by ReillyButler, flickr

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