書評:Facebook COOの自叙伝は社会の偏見と戦うためのバイブルだ

経営・ビジネスハック

FacebookのCOOのシェリル・サンドバーグ。彼女が自らの自叙伝を出版し大ベストセラーになっている。友達から薦められて、オーディオブックを購入して、全編を通して聴いてみた。かなりオススメだ。読み終えた時の一言で感想を言うと、この本は、「社会の偏見と戦うためのバイブル」だと思った。

シェリル・サンドバーグとは?

シェリル・サンドバーグは、Googleからヘッドハントされ、FacebookのCOOになった人物だ。ハーバード大卒で、かのラリー・サマーズの薫陶を受け、アメリカ財務省の主席スタッフを務めた後、Googleに転身、そして、2008年からはFacebookのCOOとしてリーダーシップを発揮している。彼女は、Times誌が世界で最も影響力のある100人に選ばれるなど、大変注目されている人物だ。

本のテーマとは?

今回、彼女が出版した本のタイトルは、”Lean in:Women, Work and the Will to Lead”。Lean inというのは、ニュアンスが伝えにくいけど、体の体重をかけて押し込む、中に入り込むという意味になる。タイトルのサブタイトルにもあるように、この本のテーマは、3つだ。女性の社会進出、個人のキャリア論、そして、マネジメントとしてのリーダーシップ論だ。そして、3つのテーマの中で一貫して流れているのは、社会の偏見に挑戦し、闘い、そして、成果を出すという事。

まだざっと読んだだけだけど、僕の学びは大きく5つあった。簡単に箇条書きで紹介しよう。

1 経験や知識を武器に仕事をする時代は終わった

これは共感する人も多いのではないだろうか?かつては一つの専門性を身につければ、一生それで食べて行く事が出来た。しかしその時代は既に終わっているという事だ。今は、高速学習する能力こそが競争優位性を築く時代。ストックとしての経験や知識ではなく、フローとして学ぶ能力が問われているという事だ。

2 未経験の仕事に挑戦すべし

一番目のポイントと関係するけど、高速学習のスキルを身につけるには、自分をどんどん追い込むしかない。経験が不足していて、自分に自信がなくても、積極的に飛び込んでいって、高速で学習するのが大事だ。特に、女性は、男性に比べて「謙虚」で、新しい課題に取り組むのを遠慮するらしい。女性は、特に意識的に、未経験の仕事に飛び込む事が大事だとの事だ。

3 感情を爆発させるべし

シェリルは、キャリアの途中までは自分の感情をコントロールするように努めており、コントロール出来ずに悩んでいたらしい。しかし、Huffington Postを作った、アリアナ・ハッフィントンの話を聞いて考えを改めたとの事。

女性は批判に耐える能力を身につける事が大事なのだ。アリアナは、仕事を始めて間もない頃、自分の考えを正直に話すと、周囲と衝突する事に気付いた。でも、彼女はこう考えているという。女性は、批判された時に感情的に反応するのが当たり前。「人に何を言われても気にするな」というアドバイスは的外れ。感情を抑える必要はない。怒りや悲しみを無理に押し殺さず、一度感情的になってもすぐ忘れるのが大事だと言う。彼女は、子供をロールモデルにするべきだと言っている。子供は、ある時泣いていたかと思うと、次の瞬間には遊びに行っているからだ。

僕はこれも重要だと思う。日本人は、普段から自分の気持ちを殺して生きるように訓練されている。特に企業でサラリーマンをしている人はそうだろう。仕事で泣いたり、笑ったりした事のある人がどれだけいるだろうか?

4 コミュニケーションの仕方が大事

感情を爆発させろと言っても、相手に一方的に腹を立てるようでは、コミュニケーション力不足である。相手を責めるのではなくて、自分の感じている事にフォーカスを当てる事が大事だそうだ。

例えば、「あなたはどうして私のメールを読まないのですか?」と、相手を責めるのではなく、「私は、あなたからのメールの返信が来ないので、とてもストレスを感じています。なぜなら、あなたが自分の事を重要視していないのではないかと感じてしまうからです。でも、それは本当にそうなんでしょうか?」と聞く方がいい。後者の聞き方なら、相手の不作為を問題視するのではなく、自分の気持ちへの共感を促す事が出来るからだ。

5 女性は、出産の時に絶対、職場を辞めてはいけない

これは、シェリルが常に主張している事で、TEDの講演でも話していたテーマである。女性は、出産・育児で職場を辞めてしまうケースが非常に多い。それは短期的に見ると、仕事を辞めて育児や出産に専念した方が経済合理性があるから。幼稚園や保育園に通わせたり、家事代行などを頼むと、割に合わないからだそうだ。しかし、もっと長期的に考える必要があると彼女は主張している。一生涯のキャッシュフローを比較した場合に、仕事を辞めてしまうと所得が激減してしまうからだ。

この点は僕も同感だ。せっかくキャリアを積んだのに、出産・育児で離職するとそれをリセットする事になる。その後は、アルバイトやパートなどの非正規雇用の道しかのこされていない。女性は出産を控えた女性は、子供を育てる事に全ての優先度が向けられる。それはそれで素晴らしい事だけど、会社を辞めてしまうのは、あまりにもデメリットが大きい。日本を良くしていくためには、一人でも多くの女性が、出産・育児と仕事を両立させ、キャリアを築く事が必要不可欠だ。

まとめ

以上、簡単だけど、僕が本を読んで感じたポイント、学んだポイントを紹介させて頂いた。

今や、FacebookのCOOまで登りつめたシェリルだが、その過程は、壮絶そのもの。そのすごさ、迫力は、マーチン・ルーサーキングとか、マハトマ・ガンジーにも匹敵するかもしれない。僕は、彼女の逆境を克服する強さ、不屈の精神に多いに刺激を受けた。本当に、シェリルを本当に尊敬するし、彼女のような人物を輩出できたのは、人類の幸運だとさえ思う。

これから、ビジネスの世界で活躍しようと思っている女性はもちろん、将来、ビジネスのリーダーを目指す人には、是非チェックして欲しい本だ。日本の社会を今後どうやって良くしていくのか?という観点でも本書は参考になる部分が多い。

ワークライフバランスとか、イクメンとか、変化の兆しはあるけれど、僕には、どうも表層的なブームのようにしか映らない。日本を本当に変えて行くのは、シェリルのように、既得権益と闘い、社会にメッセージを発揮できる人のように思う。まだ日本語版は出ていないけれど、興味のある人は是非本書を手にとって頂きたい。