改めて見直したい、KPIの活用が経営によく効くワケ

経営・ビジネスハック

企業の経営層や企画部に所属する担当者であれば、「効率的な経営」をいかに実現するか、一度は考えたことがあるでしょう。そんなときに再点検しておきたいのが、KPIです。

 

経営におけるKPIの意味

どのような企業でも目標が設定され、目標達成に向けた活動が日々の業務になっていると思います。その視点で見ると、企業経営の基本とは目標達成のための日常の業務(施策)を考えることといえるかもしれません。ただし、実際には計画と実践だけでは不十分で、必ずそれらを「どう評価するのか」という視点が必要になります。このときに役立つのがKey Performance Indicator、略してKPIなのです。

1990年代までの企業経営は今日から見れば、乱暴にいうとずいぶんと大雑把で、利益拡大のためにいかに売上を上げるか、という最終的な結果(ゴール)ばかりが注目されていました。しかし、そうした最終的な結果だけに注目しても、やってきたことが良かったのか悪かったのかを判断することはそれほど容易ではありません。こうした中、アメリカでキャプラン教授とノートン氏が考案したのが現在広く知られている企業の業績評価体系です。2人はこれを飛行機の操縦にたとえ、目的地に向かってどこをどのように飛んでいるのかを知る「計器」の役割を果たすとしています。

 

企業を操縦する「計器」の効果

KPIという計器を手に入れた企業経営はどのように変わるのでしょうか。1つが「どのようなルートで」目的地にたどり着いたかわかるようになるということです。たとえば、前年から売上が20%上がったというケースで、それが既存顧客から大口受注があったのか、新しい顧客を獲得したのか、理由によって次のアクションも変わってくるでしょう。この要因がKPIによる管理を行うことで容易につかめるのです。同じように、計器であるKPIで業績をモニターしていれば、最終結果が出る前に「ルートから外れている」ことを判断し、修正することもできます。

さらに、計器の表示は誰が見ても数字で把握できるものです。KPIも同じで、一部の経営者による勘と経験にたよった判断ではなく、誰もが活動内容を把握し、より論理的に次の一手を決めていく指標となります。言い換えればKPIは、社内のより多くのメンバーが経営に参画することにより経営を身近に感じることのできるツールにもなり得るのです。

 

管理会計とも密接に結び付くKPI

このように企業経営における計器の役割を果たすKPIですが、ともすると売上拡大施策を進めるためのツールと解釈されることもあります。しかし、実際にはKPIの効用はそうした側面に限りません。というのも、KPIは管理会計と密接に結びついているからなのです。

管理会計とは、企業を統治したり経営上の意思決定のために役立てられる会計の分野です。外部への情報提供を目的としさまざまな税制や法律によって規制されている財務会計と違い、管理会計は企業が自社のために使うものなので、実はどのような部門にとっても非常に身近なものといえます。

 

業績評価におけるKPI

大別すると管理会計が活躍する分野には2つありますが、その1つが企業の業績評価です。企業がどれぐらい儲けたのか、あるいは損をしたのか、どの程度効率的に事業を運営できているのか、といった情報は経営者がもっとも知りたいところでしょう。しかし、実は財務会計による情報だけではこれらのことが一目でわかりません。管理会計では、売上がどのように構成されているか(よく売れている製品や儲かっている部門など)、あるいは過去と比べて上向いているのかどうか、といった内情を知るためのブレイクダウンとそれを評価するさまざまな視点を提供します。ここで得られたブレイクダウンに基づいてKPIを設定、モニタリングしていくことで将来の改善が可能になるのです。

 

意思決定におけるKPI

また、もう1つの管理会計が主眼とする重要なことが意思決定への支援です。よく引き合いに出される例が価格設定ですが、たとえば製品価格を10%引き下げると販売する数量を増やさなくてはなりません。通常、販売には原価だけではなく変動費もかかり、数量増とともに発送費や販売管理費も同じだけ上がるため、値下げと同じ率だけの数量増では利益が減ってしまうこともあります。こうしたシミュレーションを踏まえて値下げをするかどうか決定する、ここに欠かせないのが管理会計なのです。KPIを設定していれば、部門ごとに重要な指標が絶えず可視化されていることでしょう(営業部門における重要モデルの販売数量や新規顧客獲得件数、製造や調達部門における原価低減率など)。そうしたKPIを用いることで、意思決定を迅速に行ったり、決定のための指針を常に明らかにしておくことが可能なのです。

 

KPI と バランススコアカード

企業にとって重要な指標を部門ごとにブレイクダウンしたものがKPIですが、これをたどっていくとマクロな視点ではバランススコアカード(BSC、”balanced” score cardとも。)の実施につながっていきます。これは先述のキャプラン・ノートン両氏が考案したもので、企業の業績をいかに評価するか、という視点に始まり、引いては戦略的企業経営に関する理論として体系化されています。

 

4つの視点とそれぞれのKPI

バランススコアカードでは、経営者が描くヴィジョンを具体的な活動にまで落とし込み、効果的に達成するためのプロセスが提示されています。その中でもっとも特徴的なのが、ヴィジョンを達成するための具体的な戦略シナリオを4つの視点で分解して設定するというものです。

  • 財務の視点

企業は利益を追求する集団なので、財務的業績向上は明確なステークホルダー(株主や従業員)への貢献となります。このための目標達成には売上やROI(投資に対しての利益)、あるいはROE(Return on Equity、株主が拠出した資本に対しての利益)といったKPIが設定されます。

  • 顧客の視点

ヴィジョン達成のために顧客に対してどう行動するか、という視点です。顧客満足度を代表として、マーケットシェア、リピート率や新規顧客獲得件数などがKPIとなります。

  • 業務プロセスの視点

株主と顧客への貢献のため(言い換えれば財務と顧客の視点のKPIを達成するため)、どのように優れた業務プロセスを構築するか、あるいは改善していくかという視点です。具体的なKPIとしては、生産リードタイムや在庫回転率が代表的です。プロセスによる生産性を測るのであれば、販売員毎の契約数といった指標も考えられるでしょう。

  • 学習・成長の視点

ここまで挙げた視点によってヴィジョンを達成するには、組織や社員個人の変化を促し、能力向上を図っていく必要があります。このためのKPIとしては、資格取得件数や従業員満足度、特許出願数などが挙げられます。

 

KPI策定にあたっての注意点

4つの視点を考えるにあたって、重要なのが「それぞれがつながっている」ということです。財務的業績を上げるためには顧客満足が必須であり、そのために業務プロセスをよりよいものにしていく必要があります。そこに不可欠なのは社員の能力なのです。

バランススコアカードが考案から20年以上たった現在でも広く使われているのは、業務のプロセスや組織としての成長、といった企業が持続的に発展していくための要素が盛り込まれているからといえるでしょう。これは、裏を返せば目先の利益のみを追求する手法では持続的な成長につながらない、ということかもしれません。たとえば、学習・成長の視点においては当期に直接的に影響を及ぼすようなKPIよりも、中長期的に見た人材育成への投資や組織の活性化につながるKPIが望ましいのです。また、企業によってはもっともわかりやすい財務の視点のKPIのみを設定するケースもありますが、正しいバランススコアカードの実施とはいえないでしょう。もちろん、企業にとっての当期利益はもっとも大きな懸念事項であることは間違いありませんが、BSCの実施にあたっては、できるだけ近視眼的にならずにマクロに企業としてのヴィジョン達成をとらえていく必要があるのです。

KPIは会社を良くするツールという側面も

ポイントを押さえたKPIを設定し企業経営を行っていくことは、会社を多面的な角度から点検し改善していくバランススコアカードの実施につながります。多くの企業で実践されている経営理論なので、この機会に自社でもチャレンジしてみてもよいかもしれません。

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