紙面とWeb版でここが違う!イタリア日刊紙は動画コンテンツが満載

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イタリアの新聞社のWebサイトは、動画によるニュース配信が充実している。紙面記事の延長線上のコンテンツがならぶ日本の新聞社のWebサイトとは、かなり様子が異なるのだ。
それでは、さっそくイタリアの3都市・3紙のWebサイトを見てみよう。
3都市とは首都ローマ、経済の中心ミラノ、イタリアで最初の首都が置かれたトリノである。
la Repubblica ラ・レプッブリカ
ローマに本社を置く、1976年創刊の日刊紙。発行部数は、約55万部だ。イタリア二大新聞のひとつ。
地域の伝統や文化を大切にするイタリアでは、やはり地方紙の愛読者が多く、そんな新聞が数多く存在する。ローマが本社とはいえ、きちんと全国のニュースをカバーしている。 出典:la Repubblica
Webなのでタイムリーなニュースが続々とトップページにアップされるのは、日本の新聞社と同じだ。しかし、各コンテンツに出てくる「video」という部分をクリックすると、文章と写真だけでなく、そのコンテンツに関する動画を見ることができる。
また、ページ中央あたり、「Repubblica TV」をご確認いただけるだろうか。これはビデオコンテンツだけを集めたサイトで、動画に合わせてナレーションの入ったものなどは、まるでニュース番組のようだ。
ご愛嬌は、やはり記事コンテンツ内にある「foto Video」。該当の記事に関する何枚かの写真を、スライドショーで見せるものだ。というわけで、ビデオ動画ではない。紙面には掲載しきれなかった写真をWebサイトで公開するという、あるものは何でも素材として利用する新聞屋魂が感じられる。
Corriere della Sera コッリエレ・デッラ・セーラ
ミラノに本社を置く日刊紙。発行部数は「la Repubblica」とほぼ同じで、二大紙のひとつ。創刊が1876年と、イタリアで現存するもっとも古い新聞社だ。
こちらも同様に記事中の「Video」という部分をクリックすると、「Corriere TV」というページに飛ぶ。「Corriere della Sera」では、独自取材ではなくイタリア国営放送RAIなどの映像を拝借しての運営だ。いくつか見てみたが、自社取材によるコンテンツの配信はないようだ。
右上にこれらのビデオコンテンツだけを集めたCorriere TVサイトへの誘導がある。動画素材はバラエティに富み、YouTubeからの拝借や個人が投稿したようなものまでさまざまだ。どれも参考元が記載されていて、ニュースソースは明確にされている。
また、「Corriere della Sera」は、「Youreporter.it」という投稿型ニュースを配信するサイトをスポンサードしている。誰でも気軽にニュース写真や映像を投稿できるようになっていて、イタリアのTVやBBCなど世界の報道番組で使用される可能性もあるという。
日本からも投稿できるので、興味のある方は挑戦してみてはいかがだろうか。
出典:Youreport.it
上部の「InviaFOTO」「InviaVIDEO」から、「Registrati」をクリックして、ユーザーネーム、パスワード、メールアドレス、電話番号、住んでいる地域を入れれば、登録完了だ。あとは誘導に従って、投稿すれば良い。
LA STAMPA ラ・スタンパ
トリノに本社を置く日刊紙。発行部数は、約31万部。出版社も意外と多いトリノは、古き良きヨーロッパの香りただよう、イタリアでも文化度の高い土地柄だ。
出典:LA STAMPA
記事中の「VIDEO」をクリックすると上述の2紙同様、動画サイト、「LA STAMPA TVサイト」に行く。しかしその内容は、二大紙に比べると明らかに少ない。
スクロールしていくと、「MULTIMEDIA-NOVITA’」というマルチメディアニュースのコーナーがあるが、動画だけでなく、写真付きコンテンツもここに含まれている。政治色も低く、どちらかというと見て楽しい、バラエティ番組のような内容だ。
なぜ動画コンテンツを充実させるのか
イタリアには、日本のような個人宅への毎朝の新聞配達システムがない。そのため、町や駅にある新聞スタンドで買い求めるか、コーヒーを飲むついでにバール(喫茶店)に置いてあるものを読むことになる。
Webで本紙に掲載されている内容をそのまますべて読むための「Web契約」は、ポータブルPCの普及とともにイタリアでも増えてきている。そのため、Web版を充実させることは、即、部数アップにつながるというわけ。
各紙が動画を使って、自社サイトに読者を惹きつけるための努力をするのは、もっともなことなのだ。
動画コンテンツは将来への投資
日本と比べ、政治を語る人も多く、自身の支持している政党をしっかり持っている人も多いイタリア。新聞もそれを受けたように、政治色が強く、読んでいる新聞を見ればその人の政治的主義がわかると言ってもいいだろう。
それでも若者の新聞離れは、イタリアでも顕著だ。若年層の失業率が高いイタリアでは、若者自身が自分でお金を払って新聞を購入するようなことは少ない。それでも将来の顧客として、彼らを惹きつけておくことは重要だ。
Web版の学生向け新聞を出しているのは、「la Repubblica」。学生レポーターによる記事の投稿や、自分で撮った写真を手軽に投稿させてコンテストをするなど、本紙とはまったく別の内容だ。もちろんFacebookやTwitterとも連動。
彼らにとってなじみのメディアであるWebを充実させ、雑多な情報を提供するのは、将来に対する新聞社の先行投資ではないだろうか。
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