インスタグラムをWebカタログに変えるIKEAの新発想マーケティング

デジタルマーケティング
2010年10月に、サービスをローンチしたInstagram(インスタグラム)。わずか3年半の間に、登録者数は全世界で2億人、投稿された画像は160億枚とも言われている。
Instagramをマーケティングに利用するブランドも増えている。IKEA(イケア)の事例から、活用のヒントを紹介しよう。
目次
Instagramとは?
2012年に、Facebookが約7億ドルを投じて買収したことで一躍話題になった、画像・動画共有SNSアプリの「Instagram」。
デジタルマーケティング調査会社の米イーマーケターが、3月末に発表した調査によると、1カ月に1回でも、Instagramを利用している米国のアクティブユーザー数は、2013年で3500万人。米国のスマホユーザーの25%が、Instagramを使っている。
また、35歳以下のユーザー数が90%で、半数以上が女性というユーザー特性がある。米国の調査結果ではあるが、日本国内においても、若年層向けのファッションブランドにおいて利用率が高い。
若者は、FacebookからInstagramへ
これらInstagramの成功を、「ビジュアル重視のサービスが、スマホ利用者にウケたから」と、マーケティング調査会社L2の創設者であり、ニューヨーク大学ビジネススクールでマーケティングを教えているスコット・ギャロウェイ教授は、そう分析している。
Instagramは、画像を加工できる簡便性だけでなく、テキストが不要という気軽さとシンプルさがあるために、若者に受け入れられている。
米国では、若者のFacebook離れが取り沙汰されている。実名登録のため個人を特定しやすい、また家族がアカウントを持っていることが多いため、親や家族に見られたくないということに加え、Facebookのnews feedには多くの広告が表示されるといったことが、敬遠理由となっているようだ。そのため、シンプルな画像SNSサイトを利用する傾向があるとみられる。
日本でも、Instagramをマーケティング活用する企業が増えている
国内のInstagram利用者数は明らかではないが、「見せること」を重視する企業では、積極的な活用が始まっている。
例えば、ユーザー参加型のキャンペーン。トヨタがレクサスのキャンペーンで実施したほか、サントリー食品インターナショナルとサーモスがコラボして、マイボトルドリンク「drop」キャンペーンを行った。無印良品が行った「みんなの手づくりヘクセンハウス」クリスマスキャンペーンなども記憶に新しい。
Instagramの良さは、自社の商品をアップしてもテキストがないため、広告のような押し付けがましさがないところだろう。美しい画像や、そのシチュエーションに共感ができれば、その画像の投稿主が個人であろうと法人であろうと、それに関係なく、「共有」される可能性がある。
従来のマーケティングでは、どうしても消費者を説得することに重点を置いてしまうが、若い世代のファンづくりという視点に立つと、説得よりも、やはり共感が重要だろう。
IKEA(イケア)の新発想ビジュアルマーケティング
グローバル展開する総合家具チェーン、IKEA(イケア)のInstagram活用の斬新さは、ハッシュタグを利用して、カタログとして活用している点にある。
IKEAでは、若手デザイナーを起用した「PSコレクション」を毎年発表している。今年(2014年)は、都会に住む若い世代をターゲットに、斬新で遊び心あふれる作品を展開した。そのプロモーションの一環で、Instagram内にデジタルカタログを作成している。
出典:IKEAのInstagram 内のキャンペーンページ ikea_ps_2014
このIKEAのアカウントページには、「テーブル」「収納」「テキスタイル」など、家具の種類別の写真を掲載している。
例えば、「テーブル」の写真をタップすると、さまざまなテーブルの写真が表示される。気に入ったテーブルの写真をタップすると、そのテーブルのアカウントページに飛んで、商品の詳細を見ることができるのだ。
Instagramをカタログとして利用しよう!
IKEAの事例をヒントに、Instagramをカタログとして活用するのも面白いだろう。
米国では、ブランド企業が活用しているのはもちろんだが、より親和性が高いのは、中小企業や個人のスモールビジネスではないだろうか。なぜなら、紙媒体のカタログやデジタルカタログを作成するには、それなりの資金が必要になるが、Instagramを活用すれば、無料で自社のカタログを作成できるからだ。
ニューヨークでアートレッスン教室を開いているValeen Parubchenko氏は、生徒の制作工程を写真に撮り、Instagramにアップしている。その写真を生徒の親がシェアし、SNS等に投稿することで、同じように子供を持つ親がスクールに興味を持ち、そこから新しい生徒の獲得に成功している。写真は、言葉よりもストレートに人々の心に刺さるのかもしれない。
人情は、デジタルマーケティングに最も遠いところだと考えがちだが、案外、デジタルと人情は、非常に近いところにあるのかもしれない。人とのつながりがスモールビジネスの肝であるとすれば、「つながる」ことを、既存の枠組みを超えて、さまざまな角度から検討する必要があるだろう。
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