ソーシャルメディアで話題になる、企業キャラクターの作り方

コンテンツマーケティング

企業イメージや商品イメージをキャラクターを使って高める手法は、昔から行われてきた。

特に、20世紀のアメリカ広告史をひもとくと、多くのキャラクターが誕生し、それぞれのブランドイメージをキャラクターが担う状況にあったことがわかる。

現代において、キャラクターによる企業や商品のブランディングは、相変わらず隆盛を極めているが、実は、その質や性格は大きく変化しているのである。

現在のキャラクターは、簡単に言ってしまうと、消費者との「共感・共生」を担うものになっている。それは、ソーシャルメディアにおける企業とユーザーの関係を象徴したものだ。

  • 「共感・共生」を担うキャラクターとはどういうものか。
  • そのキャラクターは、どのようなプロセスで作り出せるのか。
  • 企業や商品のブランディングを可能にするキャラクターの作り方とは。

本稿では、この3つを見ていきたい。

まず、20世紀アメリカの広告史に登場したいくつかのキャラクターを紹介しておこう。

アメリカ広告で成功した企業キャラクター

1928年11月18日、ニューヨークのコロニー劇場で、1本の短編アニメ映画が上映された。

「蒸気船ウィリー」というタイトルのその映画は、1匹のネズミが主人公のドタバタ喜劇だった。大勢の観客を笑わせた映画の原作と監督は、ウォルト・ディズニー。そう、ミッキーマウスが興行の世界に登場した瞬間だった。

その後、ミッキーマウスは世界中の誰もが知るキャラクターとなり、キャラクターの先駆けの象徴となる。

しかし、ミッキー以前にも、アメリカでは数々の企業、あるいは商品のキャラクターが存在していた。その代表的なものが以下である。

【オールドジョー】

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画像出典:R.J. Reynolds Tobacco Company

「I’d walk a mile for a Camel(キャメルのためなら1マイルでも歩く)」という有名なコピーがある。1875年創業のタバコメーカー、「R.J.Reynolds Tobacco Company」のブランド「キャメル」の広告コピーだ。

そのキャメルが、1913年から使用しているキャラクターが、ラクダの「オールドジョー」である。

オールドジョーというキャラクターによって、キャメルはアメリカの「国民タバコ」になった。当時、アメリカ人の多くが「タバコ」と聞いて「ラクダのオールドジョー!」と答え、キャメルをイメージしたという。

【バディー・リー】

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画像出典:Lee Japan

1922年、ジーンズメーカーのLeeが販促用に作ったキャラクター人形の「バディー・リー」。

炭鉱で働く人や農作業用の作業着として普及したジーンズを、普段着として販売する戦略によって誕生した。このキャラクターは、アメリカ中西部を中心としたデパートに販促用人形として置かれ、目論見どおり、子どもたちの人気を博すことになった。

同じく、ジーンズメーカーのLevisには「サドルマン」というキャラクターがいるが、時期的にはLeeの「バディー・リー」の方が早い。バディー・リーが販促を押し上げているのを見て、ライバル会社であるLevisも自社キャラクターを作ったのである。

認知されたキャラクターは消費者のもとで育つ!

キャメルのオールドジョーには、面白いエピソードがある。

キャメルは、パッケージデザインを1975年に一新したことがある。オールドジョーをパッケージから取り除いたのだ。ところが、それは消費者から猛反発を受け、キャメルの不買運動にまで発展しかけたという。

「オールドジョーを戻せ!」という声が広がり、結局キャメルのパッケージは、元のオールドジョーのデザインに戻すことになった。

これは、「キャメル」という単なるタバコのブランド名(つまりタバコを売るための記号)が、「キャラクターとして広く世界中に浸透することで、タバコのブランド名以上のものに成長してしまった」という例である。

この「騒動」で、キャラクターというものの本質が明らかになった。それは、「一度認知されたキャラクターは、企業の手を離れ消費者のもとで育っていく」という原則である。

「R.J.Reynolds Tobacco Company」は、この原則に気付かされた。以降、現在に至るまで、デザイン変更はあっても、オールドジョーのキャラクターはキャメルのシンボルであり続けている。

現代のソーシャルメディアでキャラクターを展開する際に、この原則は、より顕著になっていく。そして、それを証明する2つの調査報告がある。

消費者がソーシャルメディアに求めるキャラクターとは?

日本を代表する玩具メーカー、バンダイの100%出資子会社「キャラ研」が、2011年に「キャラクターに求められる効能」を調査した結果がある。上位3つは以下のとおりだ。

  • 1位 やすらげる(56.6%)
  • 2位 気分がリフレッシュする(40.4%)
  • 3位 やさしくなれる(39.2%)

キャラクターに対して、「癒し」や「ほっとする気分」を求めている人が多いことがわかる。

一方、アメリカのソーシャルメディアでのニュースをカバーするMashableは、2011年にFacebookに関する調査を行い、以下のような結果を発表した。

18歳から34歳のうち、朝起きてFacebookをチェックする人 48%

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画像出典:Are We Too Obsessed With Facebook? [INFOGRAPHIC]

起き抜けの時間に、多くの人がFacebookをチェックしている。これが何を意味するのかというと、「リラックスした状態でFacebookをチェック」するため、堅い内容のものや難しい文章のものは敬遠されがちになる、という傾向が明らかになる。

日米で行われた、この2つの調査結果を重ね合わせると、現在の消費者がソーシャルメディアで求めるキャラクターとはどういうものかが、はっきりと見えてくる。それは、「ともだち感覚」や「親しみやすさ」、そして「対話」である。

アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラーは、マーケティングには3段階あり、現代では3段階目の「マーケティング3.0」の時代になっていると指摘している。

これをキャラクターに当てはめると、ブランドや企業活動への共感、参加を促す「ソーシャルコミュニケーター」としての人格がキャラクターには必要になることがわかる。つまり、「“独立した人格を持ったキャラクター”を、ユーザーは求め、そのキャラクターとコミュニケーションを取りながら、自分たちがキャラクターを育てていく感覚を欲している」のである。

そう考えてみると、現代におけるキャラクターの成功例として、ボーカロイドの「初音ミク」、アイドルグループの「AKB48」が挙げられるだろう。どちらも、ユーザー(ファン)がコミュニケーションを取りながら、育てていくタイプのキャラクターである。

「企業キャラクターとは違うのでは?」と、思われる方もいるだろうが、本質的には全く同じだ。現代におけるあらゆるキャラクターは、消費者ベースにおける経済活動の促進という意味で、そのボーダーはなくなっているのだ。

ユーザーに共感されるキャラクターの作り方:3つのステップ

では、キャラクターはどうやって作るのか? それには、以下のプロセスを経て作られていく。

  1. キャラクターの人格化
    まず、商品や企業のコンセプトから「人格」を作り出す。ただし、その人格は完全無欠で高潔なものではなく、欠点や弱点もふんだんにある、きわめて人間くさい人格の必要がある。この欠点や弱点がユーザーの共感を得て、「育てていきたい」と思わせるのだ。例として、伊藤ハムの「ハム係長」が挙げられる。いつでもため息をついている哀愁のあるその人格に、多くのユーザーが親しみを感じて、人気を呼んでいるのだ。
  2. キャラクターの世界観の創造
    キャラクターが存在するには世界が必要だ。想像上の人格であろうと、その人格が生じた原因がある。その原因を作るものが「世界観」である。世界観がしっかりしているほど、キャラクターは生きてくる。例として、「クラスで3~5番目にかわいい女の子をアイドルにする」といったコンセプトのAKB48が挙げられる。この世界観から、多くの仕掛けが作り出される。
  3. キャラクターのストーリーを作る
    人格を持ったキャラクターが、その世界観というバックボーンで、どのような生き方をしているのかをユーザーに提示する。「共感」や「共生」を与えるためには、絶対に必要な要素だ。人は、他人のストーリーを知ることで、より深く理解し、共感できる。広告の世界において、ストーリーは特に重要だ。ストーリーを作ることで、大きな成功を収めた例は無数にある。キャラクターづくりにおいても、この原則は変わらない。

最後に……キャラクターづくりのまとめと復習

企業や商品のブランディングを考えるうえで、キャラクターの創造は、わかりやすく効果を発揮する手法だ。しかし、現代におけるキャラクターは、かつてのように、商品や企業の認知だけを担う存在ではなくなってきている。

現在は、消費者やユーザーが共感し、共に育てていこうと思えるキャラクターづくりが求められているのである。

そのためには、「課題設定」や「デザイン」、「メディアプランニング」までを考えた戦略性が必要となっていく。しっかりと戦略的に作られたキャラクターは、ソーシャルコミュニケーターとしての役割を持ち、企業や商品のブランディングを実現する「人格」となっていくだろう。

あなたの会社でも、キャラクターを使ってブランディングを考えてみてはいかがだろう?

参考元:
キャラ研
Are We Too Obsessed With Facebook? [INFOGRAPHIC]
『アメリカンコマーシャル傑作大全集』天野祐吉・金子秀佑之編 誠文堂新光社
『バージニアからの手紙 アメリカ広告の風と土―日米比較広告論』千場英男著 電通
『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』フィリップ・コトラー他著 朝日新聞出版

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