バイラルコンテンツを作る公式があった!「SIPS」であのヒットソングを読み解く

コンテンツマーケティング

「ソーシャルメディアから、ヒット商品はどのようにして生まれるのだろうか?」

“ソーシャルメディア時代”のヒットの法則を考えてみた。ヒット商品を生み出すためにはバイラルコンテンツが不可欠である現代において、ヒットの法則を考えることはバイラルコンテンツを作る公式を探すこととイコールである。

そのためには、まず、情報の嵐に翻弄されてしまう私たち消費者が、何を道しるべに目指す情報にたどり着いているのかを知らなくてはならない。

私たちは情報の嵐で溺れかけていないか?

私たちは情報の嵐の中にいる。インターネット上で爆発的に増え続ける情報の嵐の中で、自分に価値のある情報をどうやって探せばいいのだろう。

検索?

検索すれば、自分が今必要とする情報に、ショートカットして近付けるというのは幻想だ。検索エンジンが提示する“検索結果”でさえ、膨大な数の情報を目の前に提示してくる。その中から、本当に自分に必要な情報を見つけるのは、ほとんど苦行に近い。

提示されたすべてのサイトを確認できるわけもなく、検索結果画面の最初の2ページで表示されるサイトを、ざーっと流し読みするぐらいが関の山だ。そして、このような心の叫びを上げる。

「有益な情報、本当に知りたい情報、いま必要とする情報に、ショートカットしてたどり着きたい!」

ソーシャルメディアは知りたい情報に到達するための道しるべ

ソーシャルメディアは、このような私たちのニーズを満たすメディアとして育ったとも言える。なぜなら、ソーシャルメディアでは、友人や知人、趣味を同じくする人が簡単につながれる世界を形作っているからだ。言い方を変えると「インターネット上に(バーチャルではあるが)リアルな人間関係を持ち込んだ」のが、ソーシャルメディアである。

そのため、ソーシャルメディア上では、共感に満ちたリコメンド(推薦)が得られやすくなる。

Twitterのリツイートや、Facebookの「いいね!」が、情報に対する共感性を示す道しるべになるわけだ。つまり、情報の嵐の中で、自分がいま必要とする情報を、そのような道しるべをたどることで、ショートカットして探しやすくなったのである。

SIPS:ソーシャルメディア時代の新しい消費行動プロセス

ソーシャルメディアでの情報の伝達は、速度を増して消費者の元に届く。そのため、いままでとは異なる消費行動を、私たち消費者は取るようになっている。

これまで、消費者は情報や商品に対してAttention(注目)から入って消費行動のプロセスに移っていたのが、ソーシャルメディア上では、Sympathize(共感する)から入るようになった。これは、情報の流れ方の変化とともに、消費者である私たちの意識と行動が変化したことを表している。

この新しい消費行動のプロセスを説明する理論がある。「SIPS」という、ソーシャルメディアにおける消費行動プロセスのモデルだ。

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出典:電通「SIPS」来るべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念

バズるコンテンツはSIPSのプロセスを忠実にたどっている!

SIPSのプロセスを注意深く観察してみると、あることに気が付く。

それは、「ソーシャルメディア上で話題になるコンテンツはいかにして作られるのか?」という疑問への回答が、ここにあるということだ。つまり、インターネット上でバズるコンテンツは、ほぼSIPSのプロセスをたどっていることに気付く。すなわち、バイラルコンテンツは、SIPSの循環によって生まれるのである。

わかりやすい例を出してみよう。

「恋するフォーチュンクッキー」という楽曲がある。多くの人は、一度(もしくはそれ以上)は聴いたことがあるだろう。AKB48が2013年にリリースした、いわゆる“アイドルソング”だ。リリースして1年以上経っているにも関わらず、いまだにCDは売れ続け(2014年9月現在で150万枚超)、カラオケランキング、音楽配信ランキングでも常に上位に位置するモンスターなアイドルソングである。

通常のアイドルソングは、そのファン層以外は興味を示さない。ところが「恋するフォーチュンクッキー」は、そのセオリーを無視して、一般層にまで興味が広がっていった。

なぜこんなにウケたのか?

さまざまな立場から多くの仮説が出ている。だが、決定的で説得力のある説はいまだ現れていない。そこで上記のSIPSプロセスを当てはめてみる。すると、ピタリとハマるのである。

「恋するフォーチュンクッキー」大ブレイクまでの流れを、SIPSで説明してみよう。

1.Sympathize(共感する)

発端は、「恋するフォーチュンクッキー」のミュージックビデオ(MV)である。通常のMVとは異なり、多くの素人参加者がAKBのメンバーとともに踊る、ドキュメンタリーテイストな作品になっている。著作権の関係で、キャプチャー画像を載せられないので、リンク先のAKB48公式ページで実際にMVを観ていただきたい。

このMVを観た人が、一般人も踊っているダンスのノリを面白がって、自身のTwitterやFacebookなどを通して情報を流していく(元情報への共感)。

タイムライン上に流れてきたそのツイートなどを見て、一部の人が、「俺たちも(私たちも)踊れるんじゃないの?」とリツイートを始める。そして、リツイートを目にして、その内容・発言に“共感”した人が登場し(リツイートへの共感、この段階で2種類の“共感”が生まれている)、実際に踊る動画を作り始める。いわゆる「踊ってみた」動画の登場だ。

2.Identify(確認する)

「踊ってみた」動画は、YouTubeなどの動画サイトにアップされる。そこで、これまで「恋するフォーチュンクッキー」という楽曲に関心のなかった人が目にして、その楽しさを“確認”することになる。

3.Paticipate(参加する)

楽しさを確認した人の中から、さらに自分たちでも作ってみようと考える人が出てくる(参加する)。やがて、そうやって作られた「踊ってみた動画」で、出来の良いものがAKB48の運営母体の目に止まり、「AKB48公式動画」として紹介されることになる。

公式動画になった「踊ってみた動画」の存在が、この祭りに“参加”する人を爆発的に増やす結果となった(ひとつの“参加”が複数の“参加”を生み出す)。

4.Share & Spread(共有・拡散する)

新しい「踊ってみた動画」が登場するたびに、“共有・拡散”する人々が増えていく。そして、この段階で「踊ってみた動画」から、本来の楽曲の魅力に気付く人が多数出てくる。歌いやすいメロディ、元気の出る歌詞、何よりもみんなで一緒にカラオケで盛り上がれる親しみやすい振り付け。

最初はAKBのファンしか購入していなかったCDが、じわじわと、それまでアイドルには興味のなかった一般の人にまで売れ始め、購入した人が自身のソーシャルメディアを通して拡散していき、さらに新しい人たちが“共感”し、SIPSのスパイラルを繰り返していく。その結果、一種の社会現象になったのである。

「恋するフォーチュンクッキー」というヒット作品は、SIPSのプロセスをたどることで、バイラルコンテンツになっていったことがおわかりいただけるだろう。

ソーシャルメディアというミーメディア

ソーシャルメディアの時代に生きる私たち消費者は、消費行動様式の変化とともに、自らが発信源となる“ミーメディア”としての力を、(それぞれが小さいながらも)持つようになった。

SIPSは、新しいマーケティングの理論である以上に、消費者が発信源となる新しいメディアの力の可能性を示しているのではないだろうか?

大量消費社会の終焉(しゅうえん)とともに、マスコミや政治が規定していた“大衆”の存在は消え去っている。新しい社会で生まれるヒット商品は、個人が発信源となるソーシャルメディアを通じて、“共感→確認→参加→共有・拡散”のスパイラルから生まれてくるのである。

企業が自社のサービスや製品を広く社会に浸透させようとするなら、インターネット上でSIPSのプロセスに乗るような仕掛けのコンテンツを作るべきであろう。そのような仕掛けがあれば、ソーシャルメディアというミーメディアを持つ消費者たち自らが発信源となり、自動的にSIPSのスパイラルを作り出してくれるはずだ。

次のヒット作品(商品)は、ひょっとしたらあなたの仕掛けたコンテンツから生まれるのかもしれない。楽しみである。

参考元:
電通「SIPS」来るべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念
【MV】恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式]