BtoB企業マーケターがマーケティング施策を選ぶ際に考えるべき基準

インバウンドマーケティング

日本でも近年、BtoB(法人向けビジネス)領域におけるマーケティングへの取り組みが活性化してきました。しかし日本には伝統的に営業組織が強い企業が多く、必ずしもマーケティング部門に潤沢なリソースがある企業ばかりではないでしょう。

以前、BtoB企業マーケティング担当者が取り得るマーケティング施策18選についてまとめましたが、数多ある施策の中から自社に最適なものを選び取り、成果に繋げるためにはどうしたらよいのでしょうか?

法人向けビジネスの顧客に固有な特徴を考えながら、どういったBtoBマーケティング手法を優先すべきかを探ってみたいと思います。

B2Bマーケティング手法の分類

マーケティングの施策は、大きく従来型である「アウトバウンド型」と「インバウンド型」の2つに分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

アウトバウンド型

自社から見込み客に対してアプローチを行う施策。代表的なものに、新聞・雑誌・Web広告、テレマーケティング、ダイレクトメール、FAXDM、展示会などがある。

インバウンド型

Webサイトやセミナーなどを通して、有益な情報を継続的に発信することで、見込み客の側から自社に問い合わせをしてくるような仕組みを作る施策。代表的なものに、Webサイト、ブログ、セミナー、ソーシャルメディア、コンテンツマーケティングなどがある。

最適なマーケティング施策を選ぶには?

前述のとおり、B2Bマーケティングの手法は種類が豊富です。しかし、よほど恵まれた環境にない限り、時間と予算の制約がある中で、全ての施策を実行することは非現実的と言えるでしょう。マーケティングで成果を上げるには、より効率的に顧客の獲得につながる施策を、優先的に行う必要があります。

では、マーケティング施策の優先順位は、どのようにつければよいのでしょうか?ヒントとなるのが、BtoBの顧客に固有な特徴を理解することです。次に特徴をいくつか挙げるので、各種手法の優先順位を決めるのに役立てていただきたいと思います。

BtoB顧客の特徴その1:ニッチ性

法人向けの製品やサービスの購入は、見込み顧客側にそれぞれ特有の課題があって初めて実現するものです。BtoC(一般消費者向け)の製品・サービスと比較すると、BtoBは相対的に対象マーケットが限定されます。そのため、マーケティングやセールス活動においても、顧客像がはっきりしているケースが多いといえるでしょう。

ヒント:ターゲット顧客の明確なペルソナを作成し、意思決定に必要となるピンポイントな情報を、適切なタイミングで正しく届けられる手法が有効です。

BtoB顧客の特徴その2:長期的・組織的・合理的な意思決定のプロセス

BtoBにおいて、買い手である潜在顧客が合理的な判断を下すためには、上司や経営層を納得させるのに充分な、大量で綿密な情報収集や相見積りが必要となります。また、意思決定者に決裁を仰がなければならないので、検討期間が長くなりがちです。

ヒント:潜在顧客を段階的に、粘り強く、説得・育成するマーケティング手法が必要です。

BtoB顧客の特徴その3:複数のステークホルダー

BtoB企業の意思決定においては、意思決定者と情報収集者が異なることが多くあります。例えば、現場のWeb担当者がSEOコンサルティングを導入しようとした場合を考えてみましょう。

まずは担当者が情報収集を行い、SEO自体の情報に加え、サービス提供者の情報を収集します。その後、意思決定者である上長に収集した情報(と時には社内の情報と合わせて提案)を提供し、採用か不採用が決められるというプロセスです。

担当者は、自部門の仕事が楽になることを優先的に考えて、企画立案・情報収集をするでしょう。購買意思決定者は、より経営層に近いので、経営的な目線で購買の是非を問います。

つまり、組織的なニーズとROIを満たす必要があるということです。

ヒント:買い手の立場に応じた情報提供が有効です。検討段階前半の見込み顧客(情報収集者)には、企画立案のための情報を提示するとよいでしょう。検討段階後半の見込み顧客に対しては、具体的な投資対効果(ROI)や実績など、投資判断が可能な情報の提供が効果的です。

BtoB企業の購買検討プロセスに寄り添ったマーケティング施策を

ニッチ性、長期的かつ合理的な検討のプロセス、複数ステークホルダーの説得……これらのBtoBビジネス固有の特徴を考えると、特にテーマの広い“大規模”展示会や、マス広告といったアウトバウンド型のマーケティングは非効率であることが多いことも。

例えば展示会では、多くの見込み顧客から名刺を獲得することはできても、どの購入段階にいる顧客か分からないため、管理に手間がかかります。

やはり、アウトバウンド型だけでなく、インバウンド型の施策と併用することが、効率的なB2Bマーケティングの展開には有効です。例えば、前述のSEOコンサルティング導入を検討している企業であれば、情報収集者にはビジネスブログやソーシャルメディアを通じて役立つ情報を提供する。意思決定者には、具体的な効果を示すデータ(ホワイトペーパーなど)を提示する、といった方法が考えられます。

高まるWeb上の情報の重要性

デジタルデバイスの普及と検索品質の向上にともない、BtoBの顧客は製品やサービスの下調べをインターネット上で済ませるようになってきました。

BtoBユーザーが仕事で参考にしている情報源のトップが、企業のWebサイト(51.3%)という調査結果もあります(図1を参照)。マーケティング手法の最適化においては、こうした顧客の行動の変化も考慮しなくてはなりません。

図1:仕事上の製品・サービスの情報源
(参照元:第1回:業務上の情報源における企業サイトの位置付け | BtoBサイト調査結果分析2015 | トライベック・ブランド戦略研究所

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また、BtoBビジネスにおいて、買い手側はその意思決定プロセスの57%を、営業担当との接触前に済ませている、という調査結果が出ています(参照元:「BtoBコンテンツマーケティングの成功方程式|6つの事例で解説」)。つまり、潜在顧客との関係は、実際に面会する段階の前に構築しておく必要があるのです。

見込み顧客は営業担当に会うよりも、むしろWebやメールでの説明を求めている時代です。つまり、営業訪問の前に、“情報提供”の果たす役割が高まっています。

有益な情報の提供と、購買プロセスの早い段階での見込み顧客との関係作りはとても合理的であることが分かっていただけるのではないでしょうか(図2を参照)。

図2:ネットで情報収集をほぼ完結するB2B顧客とコンテンツの方向性
(参考: イノーバeBook「実践BtoBマーケティング(入門編)」

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まとめ

今回のポイントをおさらいしてみましょう。

  • ・BtoBマーケティング手法はバラエティに富んでおり、取捨選択が重要
  • ・BtoB固有の購買プロセスに照らすと、マス広告や大規模展示会は実施の負担が大きいわりに非効率である場合も多く、小規模・ニッチなインバウンド型の方が効率が良い
  • ・買い手側の行動の変化は不可逆的なものであり、今後はいっそうインバウンド型のマーケティング施策の重要性が増すと予想される

従来のアウトバウンド型マーケティングは費用もかさむので、少ない予算でも実践可能なインバウンド型は、中小企業にとっても理想の施策です。競合と比較された際に見込み顧客に選ばれるためにも、優良なWebコンテンツの提供は今後ますます欠かせなくなるでしょう。