「風が吹けば桶屋が儲かる」のか?“ジオマーケティング”攻略に必要な「3つのing」とは?

デジタルマーケティング
「風が吹けば桶屋が儲かる」。「風が吹く」という気象条件が、巡り巡ってものごとに影響を及ぼし、意外な「結果」を生むという意味のことわざだ。
では、作為的に「気象条件」を使って、何か大きな結果を生み出すことはできるのだろうか? その答えこそが、現代マーケティングの“醍醐味”と言っていいだろう。
そして、それを可能にするのが「ジオマーケティング」という考え方なのだ。
今回は、この次世代マーケティングとも言える新しい手法を攻略し、ビジネスチャンスにつなげていくためのヒントを考えてみたい。
目次
「晴れ・暑い」、この条件だけでジオマーケティングは成功するのか?
ジオ(地理)マーケティングは、その名の通り、ロケーションをターゲットにしている。ユーザーの位置情報を把握し、そこに各種データを組み合わせることで、ピンポイントで顧客分析(セグメンテーション)ができるのが強みだ。
例えば、ユーザーの心理・行動に直結しているロケーションデータとして有効なものに「天気」がある。
この「天気」を利用し、新商品の認知度アップと「カナダ第2位のビールブランド」というポジショニングのリフレッシュを狙った企業、「Molson Coors(モルソン・クアーズ)」の成功事例をご紹介しよう。
モルソン・クアーズは、15分間隔でカナダ8都市の気候・気温をチェックするAPIを使用し、各都市で「天候/晴れ・気温/23度以上」になった場合にだけ、気象条件に左右されやすいモバイルユーザーを対象に、特別な広告を送った。
その内容は、「暑い夏だね、サイダーを」というようなシンプルなものだったが、一般的な広告(天候を利用していない広告)に比べ、複数のカテゴリーでエンゲージメント率がアップしたというのだ。
しかも、Facebookユーザーを見てみると、この「天候を利用した広告」については、一般的な広告に比べ93%も多く友人とシェアする傾向にあったという。
また、この「天候を利用した広告」はクリック率(CTR)が高く、1クリック当たりの単価(CPC)は一般的な広告に比べて67%も低かったのだ。
たかが「天気」と思うなかれ、の好例である。「気象条件」1つを使っても、ジオマーケティングを成功に導くことは可能だと言えるだろう。
攻略のポイントは、フィーリング(feeling)、ハプニング(happening)、タイミング(timing)
この3つのing、「どこかで聞いたことがあるぞ」という方も多いはずだ。
それもそのはず、これは「恋愛」を成功させるための一般法則として有名である。しかし、これは認知科学(心理学)を応用した素晴らしいステップであり、ジオマーケティングと非常に相性のよい考え方と言える。
ジオマーケティングを成功させるテクニックとして、ぜひ参考にしていただきたい。
タイミング(timing)
まず、この「タイミング」の概念こそが、ジオマーケティングを成功させる一番のポイントである。
例えば、前述のモルソン・クアーズのキャンペーンで、最もエンゲージメント率が高かったのは、19~34歳の男性だったという。ここから、ひとつの仮定ができる。
おそらく、コアユーザーは屋外にいた可能性が高い。屋内(社内)では、勤務時間中に、個人モバイルを自由に操作できる人は少ないからだ。そう考えると、営業などで外回りするサラリーマン層がメインではないだろうか。であれば、広告を送る狙い目は平日の14時~16時あたり。
想像してみてほしい。夏の晴れた日、熱い陽射しに照らされながら、得意先に向かう途中でチェックしたモバイルに「よく冷えたサイダー」の広告。
そのサイダーを売っているコンビニのすぐ近くで、それを受け取ったとしたら……。あなたなら、買わずにいられるだろうか?
フィーリング(feeling)
これは、広告内容に対する「好感度」だと考えてみよう。その点でも、モルソン・クアーズはパーフェクトである。
新製品を発売する場合には、つい、発売日や価格、コンセプトなどの商品情報を盛り込んでしまいがちだ。だが、それは非常に「暑苦しい」。いくらベストタイミングで送られてきても、ユーザーに「押し売り」をイメージさせるボリュームでは敬遠されてしまうのだ。
ジオマーケティングのターゲットタイムは、他のマーケティングに比べ、非常に短い。その「一瞬」にふさわしい、軽やかで、さりげないメッセージであることが大切なのである。
ハプニング(happening)
これが最も難しいテーマだが、この「ハプニング」をことのほか起こしやすいのも、ジオマーケティングではないだろうか。
モルソン・クアーズの場合も、「天候を利用した広告」が「涼しい日には届かず、よく晴れた、暑い日だけに届く」ことに、いつしかユーザーたちは気づくはずだ。それを発見したときの「喜び」は、まさに「うれしい」ハプニングである。思わず、友人にシェアしたくなってしまわないだろうか?
このように、ユーザーが「どういう状況にあるのか」をよく把握できるからこそ、そのニーズに沿ったものを提供し、ユーザーを感動させられることができる半面、その裏をつく、「意外性のある」情報提供もできる。これも、ジオマーケティングの特徴である。
例えば、深夜の繁華街にいるモバイルユーザーたちに、次のナイト・スポット情報を送るのもいいアイデアだが、「あなた、何やってるの!?」と、妻の怒りの表情をイラストにしたアニメーション広告を送るのはどうだろう。
ドキっとした妻帯者ユーザーがクリックすると、「ま、許してあげるわ」というセリフとともに、近くで買える美味しいスイーツの情報……。
いずれの場合も、うまくハプニングを起こすことで、ユーザーの心を動かす「ストーリー」をつくり出していることが、おわかりいただけるだろう。
まとめ
いかがだろうか。
ジオマーケティングは、ユーザーの「今」がわかるマーケティング手法だからこそ、モバイルと現実世界を橋渡しし、先に仕掛けていく姿勢が絶対条件ではないだろうか。
そして、その「仕掛け」の影響がどこまで広がるのかを予測し、さらに先回りするようなマーケターの“想像力”と“瞬発力”が問われているのである。
参考元:?Why Weather-Driven Personalization is Hot Hot Hot?Molson Coors(adparlor)
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