H&Mが描く、未来のアパレルマーケティングの姿

EC(Eコマース)

今夏、H&MのECサイトが満を持してアメリカに登場した。

これまでも、セレブを起用した広告などで常に話題を提供してきた同社は、マーケティングの巧みさでも有名である。あらゆるソーシャルメディアを利用し、次々にフレッシュな面を見せてきたが、この新ECサイトもまた、大いに注目すべきだろう。

今回特に注目したいのは、「H&M LIFE」というオウンドメディアのなかの「News」というページだ。ユーザー視点を徹底し、ユーザーにとって有益な情報を配信し続けるこのメディアは、まさにコンテンツマーケティングのお手本ともいえるだろう。

世界に先駆けるこのH&Mのコンテンツマーケティング戦略とは、一体どのようなものなのだろう?

宣伝を目立たせずに「情報」を提供

まずは、9月14日のトップコンテンツを見てみよう。『Grazia Italy』のエディターがミラノの街を案内する動画である。

編集者の女性が、ミラノのカフェやファッションブティックをぶらりと訪れ、まるで海外ロケ番組のような動画コンテンツになっている。

ここではH&Mの商品を使用しているわけでもなく、自社のブランド名も最初と最後にほんの一瞬現れるだけである。

通常の宣伝動画とは違い、消費者はこの動画を「エンターテイメント」として楽しむことができる。そして、そのエンターテイメントの中にH&Mの商品や世界観が内包され、訴求されているいるのだ。

この手法ならば、宣伝広告を嫌う近年の消費者にもメッセージを届けることができる。

「商品」を押し付けるのではなく、その「使い方」を提示

この動画に続き、画面をスクロールしていくと、ファッション誌のような鮮やかなコンテンツが次々と現れる。

内容は「完璧なワードローブづくり」、「お手軽に美を追求」、「ファッション界の成功の秘訣」など、どれもユーザーの興味を惹きそうなものばかりである。また、コンテンツもバラエティに富んでいて飽きが来ない。

そして、自社の商品を使用したコンテンツを制作する際も、ブランド名や商品名を前面に押し出すのではなく、その商品を「どう着こなすか」を提示している。「コーディネートの仕方」を知りたいユーザーのニーズに合った情報を提供して、彼らを惹きつけているのである。

例えば、この『英国風エキセントリック』というコンテンツでは、まず、H&Mの商品をこのテーマでコーディネートした画像を見せ、最後に価格などの商品情報を載せている。

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出典: H&M Life

このように、商品の宣伝色を薄め、ユーザーが欲しがる「着こなしのヒント」を提供することによって、まずは彼らのファッション熱を高めているのだ。そして、最終的に自社商品購入へと導こうとしているのである。

*その他のコンテンツもこちらから是非チェックしてみてほしい。
H&M Life News
*日本語版のページはこちら。内容はほぼ同じ。
H&M Life News Japan

ブランド名や商品名を連呼せず、トレンドセッターとしての企業姿勢を示して顧客の信頼を獲得

H&Mはこれまでもソーシャルメディアを駆使し、徹底して顧客目線に立ったマーケティング活動を行ってきた。

自社のブランド名や商品名を連呼して浸透させようとするのではなく、顧客側から近づいていきたくなるようなコンテンツを提供して、彼らの支持を得てきたのである。そして、いまやFacebookの「いいね!」は1,600万以上となった。

その際、H&Mは、トレンドを生み出す企業としての姿勢をこれらのコンテンツに反映してきた。すなわち、顧客が興味を持ちそうなものを探るために常に広範囲にアンテナを張り巡らせているということが、これらのコンテンツから伝わってくるのである。

今回のH&M LIFEのNewsページにもそれは現れている。その内容は、ミラノのようなファッションの中心都市のガイドといったものから、ニューヨーク州ブルックリンのブティックのようなローカルなものまで、多岐に渡る。

また、ケイト・モスなど一世を風靡したトップモデルのスタイリングを取り上げたかと思えば、ストリートファッションなど、より身近に感じられるコーディネートをクローズアップしたりなどして、幅の広さを感じさせる。

これらの多様なコンテンツにより、H&Mは「トレンド感溢れる情報」を提供する企業としての信頼を勝ち得たのである。このオウンドメディアはこれからも、ファッショントレンドのオンラインソースとなっていくだろう。

日本のアパレルブランド事例

欧米では、このようにコンテンツマーケティングが巧みに行われているファッション関係サイトが多数ある。ところが、日本のファッション関係サイトを見ていくと、まだコンテンツマーケティングが行われているとは言えない場合が多い。

ソーシャルサイトを設けていたり、店員によるコーディネートなどを見せてくれたりする場合もあるので、コンテンツがないわけではない。だが、いまだに宣伝色が強く、顧客が自ら探し求める情報とはなっていないことも多いのだ。

しかし、例えばオフラインto オンラインの流れを作ることに成功したUnited Arrowsのサイトには、MOVIEというページあり、バイヤーがモロッコを案内する動画など、一見の価値あるものが多数掲載されている。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=DZ4n5MGlSHQ

まとめ

アパレルブランドは、消費者のライフスタイルやイメージをプロデュースすることに価値がある。

今までも、TVCMや雑誌広告などでこのライフスタイル・イメージ訴求をしてきたアパレルブランドも多いが、自社メディアにまで徹底したブランドはそう多くないだろう。

だが、このH&M型のマーケティングこそが、アパレルブランドの訴求したいイメージ・ライフスタイルを消費者に届けられる最高の形だろう。

ぜひ日本のアパレルブランドもこの手法を実践していって欲しい。

また、他業界のコンテンツマーケティング事例について知りたい方は以下の記事をチェックして頂きたい。
コカ・コーラのコンテンツマーケティング戦略 ~「飲み物」ではなく「読み物」を提供~
ローカライズ型コンテンツマーケティング戦略で顧客との信頼関係を築く方法(スーパーマーケット)
3つの成功事例に学ぶ、ベンチャー・スタートアップ向け コンテンツマーケティング活用術(スタートアップ)
「地味な業界」ほどコンテンツマーケティングが効く訳

参考元:Content Marketing Close-Up: Four Ways That H&M Life Has Built a Successful Content Marketing Strategy

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