Facebook – 囁かれる「若者離れ」と今後の成長の鍵

コンテンツマーケティング
Facebookの業績が好調だ。
先月発表された第2四半期決算によると利益は3億3300万ドル。前年同期が1億5700万ドルの赤字だったことを考えると、大幅な業績向上と言っていいだろう。
この決算発表の場で最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏は、囁かれていた「若者のFacebook離れ」について言及し「我々のデータによれば、それは事実ではない」と明確に否定した。
米ハーバード大学で生まれ「アメリカのクールな若者文化」の先頭を走ってきたFacebook。
主戦場がモバイルへと移行し、多くの競合がひしめく中、今後も若者にとって「クール」なものであり続けていくには?
「若者のFacebook離れ」が取り沙汰されていた背景を顧み、これからの成長の鍵を探る。
目次
1.「若者離れ論」の背景
業績発表の場でCEO自らが否定した、サービスからの「若者離れ」。それは裏を返せば、同社がこの問題に大きな危機意識を持っていることの裏返しでもあるように思える。
近年この問題が囁かれるようになっていた背景には、二つの理由があった。
1.単機能特化型SNS系スマートフォンアプリの台頭 2.Facebookへの親世代の大量流入
単機能特化型SNS系スマートフォンアプリの台頭
Facebookはもともと、デスクトップ上のWebブラウザでの利用が前提で立ち上げられたサービスだ。
プロフィール、フィード、写真、メッセージ、イベント、広告。。。多くの機能追加を繰り返し、人々が日々の生活のほぼ全てをシェアすることの出来る「プラットフォーム」を実現している。
しかし、スマートフォンの急速な普及により、人々の「ソーシャルライフ」は様変わりした。多くの人々がモバイル端末からネットを利用するようになった時に、Facebookはその対応に遅れをとったのだ。
高機能ゆえの足枷。 iPhone向けにリリースされた初期のFacebookアプリは動作が遅く、結局スマートフォンのブラウザからサービスにアクセスするユーザーが相次いだ。
その隙をついて台頭したのが、Instagram(後にFacebookが買収)やSnapchat、日本発のメッセージサービスであるLINEに代表される、美しいUIと直感的で使いやすい操作性を備えた、単機能特化型のSNS系サービスだ。
これらのサービスは、そもそもスマートフォンでの利用を前提として設計されており、非常にシンプルで先進的なイメージを打ち出すことに成功した。そして、若者ユーザーの心を捉えたのだ。
Facebookへの親世代の大量流入
マーケティング調査のアウンコンサルティング株式会社によると、2013年5月時点での米国におけるFacebookの普及率は52.17%。国民の半数以上がFacebookに登録していることになる。(日本は10.81%)
同社が13歳以下のサービスへの登録を禁じていることや高齢者層の存在を考えれば、生産人口層(15歳以上65歳未満)におけるFacebook利用はもはや”常識”といっていいだろう。
Facebookは、米国社会において完全に生活インフラ化したのだ。 この同社にとって輝かしい成功こそが、「若者離れ」の一つの要因であると見るむきもある。
米ハーバード大学の寮で生まれたFacebookは立ち上げ当初、特定の大学のメールアドレスが無くては参加出来ない「会員制」のサービスだった。若者達は自分達だけの「秘密の遊び場」を手に入れ、熱中した。
サービスの拡大とともに、その庭に土足で入り込んできたのが、親世代だ。家族であり、教師であり、上司である。いずれも、自分がパーティでテキーラを浴びながら羽目を外している写真を見られたくはない相手だろう。
ザッカーバーグ氏は、『フェイスブック 若き天才の野望』(デビッド・カークパトリック著、日経BP社)の中で「2種類のアイデンティティを持つことは、不誠実さの見本だ」、「仕事上の友達や同僚と、それ以外の知り合いとで異なるイメージを見せる時代は、もうすぐ終わる」と述べている。
Facebookの実名登録制という点に現れている若き理想家のこの信念は、しかし現時点においてはまだ「理想」の域を出ていないようだ。
「秘密の遊び場」で羽を伸ばしていた若者達は、大人達の侵入を機にそこでの活動に窮屈さを覚えた。
そして、より新しくニッチで秘密めいた新興サービスへと移っていった。
Facebookは2013年2月に公開した「10-K Annual Report」内でこの問題について初めて言及し、ティーンエイジャーの同社サービスからの離脱に対する危機感を明らかにした。
2.ザッカーバーグ氏が否定する「若者のFacebook離れ」
これらの背景と共に囁かれてきた「若者のFacebook離れ」論。
同社サービスへの年齢登録は自己申告制であり、中には年齢を偽って登録しているユーザーもいることを認めた上で、ザッカーバーグ氏は「それでもFacebookは今も米国の若者の心をつかんでいる」と自信を見せた。
その根拠として挙げたのが、月間アクティブユーザー数に占めるデイリーアクティブユーザー数の割合だ。全体で61%、米国とカナダに限れば70%超のユーザーが毎日Facebookを利用しているという。(この数字は過去最高を記録した第1四半期をさらに更新している)
次いで挙げたのが、月間8.3時間というユーザーの平均利用時間だ。これは全ユーザーが毎日17.39分をFacebookに費やしていることを示唆している。
Facebookのサービス全体としては、いまもってユーザーの心をつかんでいる、というメッセージである。
そして、ザッカーバーグ氏の自信を強力に後押ししているのが、モバイルでの成功だ。
3.結果が現れてきたモバイルへのシフト
世界最大のソーシャルネットワークサービスFacebookが先月24日に発表した2013年第2四半期決算は、多くの投資家を驚かせるものだった。
売上高18億1000万ドル(前年同期比53%増)、利益3億3300万ドルはもっとも強気なアナリストの予想をも上回るものだったからだ。
この成長を下支えしたのが、モバイル広告だ。
広告売上高に占めるモバイル広告の割合は41%。第1四半期から11%も増加している。「モバイル広告に関しては、その結果を非常に嬉しく思っている」とザッカーバーグ氏も述べているように、モバイル対応に苦慮していた同社としては、大きな前進と言えるだろう。
4.成長のための次なる一手は?
発表された第2四半期決算でもう一つ明確になったことは、今や新規ユーザーの大半はアジアや中南米といった新興国からきているということだ。(図1参照)
これらの国々では、固定回線の整備よりも携帯ネットワークの整備が先行しているところも少なくない。
これらの地域の若者ユーザーを獲得していくために、カギとなるのが、ロースペックな端末とさほど高速ではない通信回線でもストレスなく手軽にコミュニケーションを楽しめる単機能型のスマートフォンアプリだ。
Android端末向けにリリースした「Facebook Home」は、リッチかつ画期的ではあったがハイエンドマシンでなくては動作せず、新興国には不向きだ。自社でリリースしメッセージ&写真アプリ「Poke」のような、よりシンプルなアプローチが必要なのではないだろうか。
いずれにせよ、次なる一手のための準備は整った。 Instagramを買収し、モバイル広告からも収益を上げられるようになってきた今後が、本当の勝負と言えるだろう。
参考元: ・Zuckerberg Says Teens Still Steadily Engaged With Facebook ・Facebook Q2 Earnings Beat Expectations With $1.81B In Revenue, Up 53%, Mobile Hits 41% Of Ad Revenue ・Facebook beats revenue estimates at $1.8B, slam-dunks on mobile ・Facebook Investor Relations ・Facebook Annual Report From 10-K ・『フェイスブック 若き天才の野望』(デビッド・カークパトリック著、日経BP社)
Photo: Some rights reserved by Kartik Malik, flickr
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