ソーシャルメディアのゲーム・チェンジャー「スナップチャット(Snapchat)」で活用が進むエフェメラル・マーケティングとは?

デジタルマーケティング

2016年に入り、「Snapchat(スナップチャット)がソーシャルメディア業界のゲーム・チェンジャーになる」という報道記事を米国のメディアで多く目にします。

Snapchatとは、写真や動画をユーザー同士で共有するSNSアプリで、受信側でコンテンツを開封後に閲覧可能な期間を送信側が設定でき、それが最大10秒と非常に短いことが最大の特徴です。Snapchatのアクティブユーザーは2015年時点で2億人を超え、Twitterのアクティブユーザー数を超える勢いに迫っています。

日本でも徐々にメディアで取り上げられるようになったSnapchatですが、マーケティング領域でも「エフェメラル・マーケティング」と呼ばれる手法に活用され、成果が上がっているようです。

日本ではまだ聞きなれないエフェメラル・マーケティングについて、Snapchatの機能とあわせてQ&A形式で理解を深めていきましょう。

Q. 1

エフェメラル(ephemeral)の意味は?

  1. 波及的な
  2. つかの間の
  3. 普遍的な

Q. 2

エフェメラル・マーケティングに親和性が高いSNSの代表格Snapchatをうまく使って、近年成果を上げた米国企業は?

  1. タコベル
  2. スターバックス コーヒー
  3. ケンタッキーフライドチキン

Q. 3

Snapchatの機能で正しいものは?

  1. 投稿写真や動画(以下スナップ)を、閲覧者はスクリーンショットに撮って保存できない
  2. 閲覧者がスナップを受け取ったあと、24時間を過ぎると自動的に削除される
  3. 来年(2017年)から広告機能が追加される

Q. 4

エフェメラル・マーケティングに適したターゲット層(世代)は?

  1. 15~35歳
  2. 36~45歳
  3. 46~60歳

Q. 5

エフェメラル・マーケティングを取り入れたSnapchatの人気が高まっている理由は?

  1. スナップが10秒以下のため、広告費用が安い
  2. スナップが閲覧後削除されるため、リアリティのあるスナップを気軽に共有できる
  3. 画像や動画の加工メニューが豊富なので、“リア充感”(実生活が充実しているさま)をより強くアピールできる

それでは、正解と解説です。

A. 1

答えは「2、つかの間の」です。

より情緒的には「はかない」という日本語をあてることもできます。

エフェメラル・マーケティングの特徴は、コンテンツに投稿期限や閲覧期限が設けられていることです。「つかの間」に限定することで、「見たい!」という人間の欲求を駆り立て、特定の行動への誘起率(CTA:call to action)を高める効果を期待できます。

A. 2

答えは「1、タコベル」です。

タコベルは、Snapchatを使ったキャンペーンで2014年にリブランディングに成功しました。1962年創業のタコベルは米国の老舗フードチェーンとして有名ですが、当時、新たな顧客獲得に伸び悩んでいたそうです。そこで使用したSNSプラットフォームが、当時まだ無名だったSnapchatでした。

タコベルの主なターゲットは、ティーンエイジャー(13~19歳)です。彼らは新しいものが好きで、飽きっぽい。エフェメラル・マーケティングは、そうしたターゲットに特に適していました。2016年5月に実施したキャンペーンでも、Snapchat史上最高の1日閲覧数2億2400万ビューを記録し、アプリ史上最高のキャンペーン効果を上げています。

そのほかにも、マクドナルドやGrubHub、NBA、20th Century FoxがSnapchatを使ったキャンペーンで多くのページビュー獲得に成功しています。

A. 3

答えは「2、閲覧者がスナップを受け取ったあと、24時間を過ぎると自動的に削除される」です。

また、エフェメラルであるもう1つの特徴は、本稿の冒頭でお伝えしたとおり、「相手がスナップを開いたあと、送信者が指定した時間(1秒から10秒の間)内に消える機能」です。

コンテンツを閲覧できる時間が非常に短く限られていることで、投稿者は本当に伝えたいことだけにフォーカスします。余計な情報のない、ストーリーが明確な洗練されたコンテンツを生み出す派生効果があるのです。

A. 4

答えは、「1、15~35歳」です。

1980~2000年ごろに生まれた世代を「ミレニアル世代」といいます。この世代が、エフェメラル・マーケティングの高い効果が見込めるターゲット層だそうです。Snapchatにおいては、ミレニアル世代でも若年層である現在のティーンエイジャーを中心に特に人気を博しています。

Snapchatには、絵文字やカラフルなペイントで画像加工のできる機能が豊富で、いかにもティーンエイジャーにうけそうな仕様です。これが果たして30代以上に浸透するのか、ビジネスに活用できるSNSプラットフォームになり得るのかと疑問を持つ方も多いでしょう。

しかし、いま思い返してみればFacebookが日本に浸透しはじめた10年前、まさかソーシャルメディア・マーケティングが、こんなにもビジネスで活用されるようになるとは誰もが考えていませんでした。

Snapchatが2011年にリリースされてから今年で5年。米国では企業での活用や成功事例も増えてきています。

A. 5

答えは、「2、スナップが閲覧後削除されるため、リアリティのあるスナップを気軽に共有できる」です。

Snapchatのメインユーザーとなっているティーンエイジャーは、スナップを1日に複数回送ります。日々の生活のなかで遭遇する面白い出来事や奇妙な出来事を写真や動画におさめ、その場にいない友人と共有し、楽しむことが目的です。スナップをたとえ1日に5回同じ相手に送ったとしても、閲覧後は削除されてしまうので「しつこい」という印象を残しません。

FacebookやInstagramに流れるコンテンツは、投稿者の充実した生活やハッピーな出来事があふれかえっており、ティーンエイジャーは疎ましさを感じはじめているようです。投稿したコンテンツは半永久的に保存されるわけですから、成功体験や完成度の高いコンテンツに限定したいというのが人間の欲求でしょう。そこでSnapchatは保存機能をあえてなくすことで、ユーザーがリアリティのあるスナップを気軽に共有できる環境作りに成功しました。

認知度向上と行動誘起(CTA)に効果的なエフェメラル・マーケティング

ユーザーがソーシャルメディアに求める特性は日々変化しています。従来は記録し、共有、保存することが必要不可欠な機能だとされていたソーシャルメディアですが、保存機能をなくすことでCTAを高め、認知度を高める効果を生み出すことに成功しました。

また、動画コンテンツは各ソーシャルメディアの機能に取り入れられ、その重要性がますます高まりをみせています。Snapchatの10秒スナップにもあるように、ユーザーはよりコンパクトで明確なメッセージ性を求めているのです。

エフェメラル・マーケティングは、ミレニアル世代をターゲットとした企業キャンペーンへの活用に、米国でいま最も多くの期待が寄せられています。

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