「起業は目的ではなく手段である」 スタートアップを志すエンジニアへの手紙

経営・ビジネスハック

Twitterの初期メンバーとして活躍し、自身も豊富な起業経験を持つAlex Payne氏が、スタートアップを志すエンジニアに向けたブログをポストした。

近年、日本でも脚光を浴びつつあるスタートアップ業界の深い闇をえぐり出した内容で、米国では大きな反響を呼んでいる。

日本でもスタートアップ業界に身を置いている人ならば、頷きざるを得ない内容になっているではないかと思う。

今回は、本人から特別に翻訳許可を頂いたのでご紹介したいと思う。

起業は目的ではなく手段である

最近、起業家志望の若者をインタビューする機会があった。

私が、「君は4年後にどうなっていたいんだい?」と尋ねると、
彼は何の迷いもなく、「会社を経営していたいです!」と答えた。

続けて理由を尋ねてみた。
すると、「理由も何も、ともかく僕は“起業”がしたいんです!」と熱っぽく返してくれた。

しかし、その燃えたぎる情熱にも関わらず、将来の会社の事業内容については何も語ってくれなかった。おそらく、具体的なことはまだ一切考えていないのだろう。

こういう若者に対して、私はひと言述べさせてもらいたい。

「起業は目的ではなく手段である。」と。

近年、起業家が褒め称えられ、社会的な地位を築き始めた事につれて、無目的に「起業」を志す若者が増えてきたような印象を受ける。

はたして、その選択は正しいことだろうか?

あなたに成し遂げたい夢や目標があるとする。発展途上国の国民の生活レベルを上げたい、雇用問題を解決したい、そんな尊ぶべき夢を抱いている人もいることだろう。しかし、何も起業だけが、それを達成するための手段ではないだろう。

非営利組織で働くこと、政治の世界に飛び込むこと、はたまたリソースの多い大企業で働くこと、それらの方がベストな選択肢であるという可能性も大いにあるのではないか?

スタートアップ業界が脚光を浴びるにつれて、「起業=クール」というイメージが形成されてきたように思う。

ただ、あなたが大志を抱いているのならば、そんな上っ面のイメージに踊らされて手段を間違えるべきではない。

起業に成功すれば、鼻高々にクールな自分に酔い痴れることができるかもしれない。
しかし、あなたが望んでいたのはそんなことだったのだろうか?

スタートアップに入る前に、もう1度以下のことを真剣に考えてみて欲しい。

・あなたの成し遂げたい夢は何か?
・それを達成するためのベストな手段は本当に起業なのか?

「カッコいいから」という理由だけで、スタートアップを志すのはあまりに蒙昧である。

あなたにはプライベートを捨てる勇気があるか?

もう1つ、スタートアップを志す前に考えて欲しいことがある。
「あなたはプライベートを守りきる、または捨てる覚悟があるのか?」ということだ。

ご存じの通り、スタートアップ業界は基本的にどこも激務である。疲労で倒れるまで夜通しプログラミングをしたり、1週間家に帰らずに資金調達のために連日ピッチをしたりするような日々もざらにある。

いつか見返りが訪れることを願い、プライベートの時間を犠牲にして、心身が擦り切れるまで働きまくるのだ。

私は、スタートアップに身を置いたばかりに、プライベートの生活を破綻させてしまった友人を何人も見てきた。激務のあまり体を壊す人、長年連れ添ったパートナーと離婚する人。
そして、最悪の場合は、自ら命を絶つ嵌めになった人もいる。

ソーシャルメディアや世界的なカンファレンスでスポットライトを浴びている起業家たちがいるが、莫大な財産、社会的な名声を獲得する過程で、様々な犠牲を払ってきた人も少なくない。

彼らは華やかなスタートアップコミュニティーの輪の真ん中で、耐え難い孤独を抱えながら生きているのかもしれない。近年のスタートアップ業界の光にはこうした暗い影もあるのだ。

仕事それ自体は、新しいコミュニティーや友人をつくる機会を与えてくれる。そして、仕事環境が過酷であればあるほど、チームの連帯感は増し、そこでの友情も堅固なものとなるというのも事実だろう。

私自身、スタートアップで働く中で多くの素晴らしい友人を得ることができた。しかし、スタートアップ業界を抜けた後の方が、友人関係を維持するのが楽であるのは間違いない。そして、今の方が、彼らと一緒にいて楽しいのだ。

今はお互い心に余裕があるし、当時のように極度のストレスを抱えていないからだろう。

スタートアップ業界で、プライベートを充実させるのは至難の業なのである。

スタートアップ業界は腐敗している

私は、実に人生の半分もの時間を「スタートアップ」という環境に身を置いてきた。その意味では、今のスタートアップに対する印象や文化を創り上げた人々の内の1人なのかもしれない

しかし、この際だから正直に言おう。私は、今のスタートアップ業界は不健全である、と思っている。もはや、腐敗しているといってもよいだろう。

ここでは当然の如く、自分のプライベートの時間を犠牲にすることが要求され、激務で疲れ果てた自分を慰めるためか、過度に自分を褒め称えるような風潮がある。

ソーシャル上で、自分の実績を何の臆面もなく誇示する起業家を、あなたも見たことがあるのではないだろうか?

ここでは、プライベートと仕事の両立、などと云うものは一切尊重されていない。仕事、そして組織の成長に全てを捧げることが普通とされているのだ。

はたして、このような環境が「健全」と言えるだろうか?

スタートアップを志すエンジニアに伝えたい。
スタートアップを志すならば、正の側面ではなく、その負の側面も十分考慮した上で、意思決定をするべきだ。

何もスタートアップに固執することはない。あなたには他の選択肢だってあるのだから。

イノーバCEO宗像からのメッセージ(Shameless Self-Promotion)

どう思っただろうか、なかなかここまで赤裸々に実情を書いたブログ記事は読んだ事が無い。

ベンチャーは、限られた時間の間で上場、バイアウトを目指す厳しい戦いだ。アレックスの言う通り、誰もが目指すべきキャリアではない。起業が流行っているから、安易にベンチャーのキャリアを選ぶのは、僕も危険だと思う。

一方、このブログを読む上で理解すべきは、日本とアメリカでのエンジニアの気質の違いだ。

日本のエンジニアは技術志向で、ビジネスマインドが少ないのに対し、アメリカのエンジニアは、ビジネスマインドがすごくてベンチャーで一発当ててやろうという山っ気がすごい。

シリコンバレーでは優秀な学生は、ベンチャーに行くのは当たり前ともなっている。彼らは、創業間もない会社に入り、上場、もしくは、バイアウトというゴールを目指して、ひた走るのだ。

僕は、日本のエンジニアには、もう少しアメリカのエンジニアを見習って、ベンチャーに興味を持ってもらいたいと思う。

日本には、実は、相当な数のエンジニアが存在する。そのほとんどはSIerと呼ばれるシステム開発会社とか、その下請け、孫請けの会社で働いている。

彼らは、受託ビジネスという呪縛の中で、長時間労働を余儀なくされ、やりがいを感じる事が少ない。顧客からのコストダウン要求とクレームにうんざりしながら働いている。

今、エンジニアにとって最大のチャンスが現れている。それは、世の中が次々にIT化されて、新しいビジネスが次々と生まれてきているからだ。Eコマース、ソーシャルメディア、スマートフォン、タブレット、スマートデバイス、メイカース。etc 。生活の隅々にコンピューターが入り込み、人々の暮らしを変えていっている。

弊社、イノーバでは、マーケティングをIT化するという目的で、コンテンツマーケティングの新しいビジネスを立ちあげようとしている。

個人的に、マーケティングは、IT化の遅れた最後のフロンティアだと思っている。Googleも、Oracleも、Salesforceも、マーケティング分野の買収を加速させ、この市場を一気に取りに行こうとしている。

イノーバは、外資が日本に攻めてくるまえに、マーケティングのIT化を進め、中国・東南アジアへ進出していこうという壮大なビジョンを持っている。我々と一緒にマーケティングのIT化を進めてくれる優秀なエンジニアを探している。

元TwitterエンジニアのAlexが言う通り、僕らの挑戦は、辛く険しい道になると思う。だけど、その難しいチャレンジにあえて興味を持つ物好きなエンジニアの人を是非募集したい。我々のベンチャーは、まだ資金調達前なのでお金はそんなに無いけれど、優秀なチームと大きなビジネスのビジョンを掲げている。

さあ、眠れるエンジニアよ。僕らと一緒に勝負しようではないか?

参考元: Letter To A Young Programmer Considering A Startup
Photo: Some rights reserved by Andrew Mager, flickr