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イノーバマーケティングチーム2024/02/05 10:35:112 min read

入力フォームを最適化するEFOがマーケティングに効く理由

EFOという言葉を聞いたことがあるでしょうか? Webサイトにおける入力フォームの最適化をすることを指します。一見、ユーザが多少便利になるだけの地味な施策のようにも見えますが、実際にはマーケティングの観点から重要な意味を持っています。今回は、このEFOの定義や具体的な手法について解説します。

EFOとは

EFOとは「Entry Form Optimization」の略で、サイト上の問い合わせや会員登録などに使われる入力フォームの最適化を意味します。インターネット上で何らかの申し込みをする際に、「入力フォームが煩雑で面倒になった」という体験を持っている方もいるのではないでしょうか。

例えば、入力項目が多すぎたり、あるいは微妙な書き方の違いでエラーが返ってきたりすると、ユーザは入力をあきらめて離脱してしまいます。これは、マーケティングの観点で言えば「CV(コンバージョン)の獲得に失敗」しているということです。

コンテンツを充実させて顧客のアクションを喚起できているのに、入力フォームで離脱されてしまうのは非常にもったいないことだと言えるでしょう。EFOは、こうした取りこぼしを防いでCVR(コンバージョン率)を上げるための施策です。

なぜEFOが重要なのか?

どのようなユーザを対象にしているかを考えることで、EFOの重要性がわかります。そもそも、入力フォームがあるページを訪れているユーザは、すでに他のページで情報を収集し自社や商品に興味を持ってくれている顧客です。この見込み客を問い合わせや会員登録といったアクションを通じて商品購入の次の段階にスムーズに移行させることは、マーケティング施策における主要なポイントの1つです。

ただし、提供されている商品にある程度、興味を持っている顧客であっても、個人情報を入力することには心理的なハードルがあります。このため、入力が面倒に感じるような長すぎるフォームの場合、簡単に離脱してしまうのです。

こうした事情があるにもかかわらず、使い勝手の悪い入力フォームが、いまだに多くみられます。デンマークを拠点とする調査機関であるBaymard Instituteが行った調査によれば、ECにおけるショッピングカートから購入フォーム入力までの段階で、見込み客の約7割が「購入を放棄」してしまっています。この理由として、「購入までのプロセスが長く複雑」であることが3番目に挙げられています(ちなみにトップは送料や手数料などの追加料金が高すぎること)。

ここからも、入力フォームは顧客の利便性を損ね、機会損失につながっていることがわかりますが、逆にいえば入力フォームを改善することによって離脱率の低下やCVR向上につなげられるということでもあります。次章で詳しく見ていくように、具体的には入力項目を減らすことや入力方法をより平易なものにすることが考えられますが、使い勝手の良いフォームはユーザの心象を良くすることにも寄与するでしょう。

ユーザがフォームを離脱してしまう要因とは

ユーザが入力中のフォームを離脱してしまう原因には以下のものが考えられます。

入力項目が多い

入力が面倒な項目が多い(住所、メールアドレス、電話番号、勤め先の社員数や売上高等)。
FAX番号、生年月日等のプライバシー情報の入力が必須になっている。

エラー表示が出るが間違えた箇所がわかりにくい

入力項目に不備がある場合に表示されるエラーがどこの項目に対して表示されているのかがわかりにくい。

別のサイトへ飛んでしまい戻れなくなる

入力中に他のサイトへのリンクをクリックしてしまい、フォームに戻れなくなったり、戻れたとしても、入力内容が消去されてしまい、最初から入力しなければならなくなったりする。

入力の進捗状況がわかりにくい

全体の中での進捗がわからないため、どこまで入力を続ければ完了するのかわからない。

具体的なEFOの手法

具体的なEFOの手法としては、以下のようなものがあります。

入力項目を減らす

入力を求めている項目は、企業として入手したい顧客情報なので、減らすといってもなかなか難しいかもしれません。しかし、入力項目数の削減はユーザの利便性の向上に直結するもっとも基本的な対策の一つです。
もし、BtoBサイトの登録で入力が10項目以上あれば、入力項目数の見直しをすべきです。ユーザの視点に立ってみれば、気軽に資料ダウンロードやメルマガ登録をしようとして10個も入力を求められたら身構えてしまう気持ちがわかります。

項目数はどのようなCVを得ようとしているかによっても変わってきますが、興味が初期段階のメルマガ登録のようなケースではシンプルにメールアドレスのみにとどめるのがベターです。あるいは、資料請求といった興味が高いユーザであっても氏名や会社名、電話・メールアドレスなどの5項目程度に収めておきたいところです。

必須項目と任意項目の差を明確にする

ユーザでもいろいろなタイプの方がいらっしゃいます。すべての項目にきちんと答えて下さる方もいれ、できるだけ最小限の記述でフォームへの入力を済ませたい方もいます。例えば、必須項目に「*」アスタリスクをつけることでも任意項目との区別が簡単にできます。さらに必須項目に赤いボタン、任意項目に青いボタンをつける等のデザイン面の配慮でユーザがこれらを直感的に区別できれば、さらに快適感が増します。

ただし色覚異常の方もいらっしゃる可能性がありますので、色覚のみに頼らない方法(アスタリスクによる区別もその一つです。)と併用するとよいでしょう。

また、入力のために時間をかけて調べる必要のある項目や、勤め先や生年月日等プライバシーに関わり心理的なプレッシャーがかかる項目は、割愛したり、任意項目としたりするような配慮も大切かもしれません。

それでもマーケティング上、属性情報が必要な場合があったり、成約直前では信用情報としてプライバシーに関わる情報が必要な場合もあったりしますので、ファネルの段階によって、取り扱う商品やサービスの性格も考慮しつつ、個人情報等の扱いを明示しながら、必須項目を増やしていく方策も考えられます。

エラー表示をリアルタイムで指摘する

入力をすべて完了した後にところどころで発生した入力ミスを修正させるフォームもありがちですが、これではユーザがうんざりしてしまい離脱の原因になります。正しい記入例を明示しながら、入力ミスがあった場合は、リアルタイムで当該フィールドの色を変えたり、赤い文字等を使って誤りを指摘(警告)したりして、どう対処すればよいかも含めて親切にフィードバックすることが望ましいです。

入力中の項目を目立たせる

入力の途中で、現在、どの項目を入力しているかわからなると、入力中のユーザがイライラして離脱してしまうことがあります。例えば、入力中の文字を大きくしたり、色を変えたりすることにより、入力中の情報を目立たせることも重要かもしれません。また、入力フィールドに着目して、半透明色や網掛け(色覚異常の方も想定)等を活用して中に表示された文字の見やすさを確保しながら、フィールド自体の背景色を変えたりして、入力中の項目とそれ以外の項目との区別を鮮明にするような配慮も考えられます。

わかりやすい入力例の提示

必要事項を入力して内容を送信したら、エラーとなって再入力を求められるようなフォームもありがちかもしれません。

何をどのような形式で入力すべきなのか、入力フォームに明確な例示を加えると、ユーザの利便性が向上します。たとえば、電話番号のハイフン表示(例:090-XXXX-XXXX)、姓と名の間のスペース(例:山田 花子)などです。

フォーム自体のデザイン

また、当然のことですがフォーム自体のデザインが見づらいものになっていないかも確認しておきたい項目です。欄が狭すぎたり字が見えにくかったりすると、フォームへの入力を途端に手間に感じてしまうものです。また、ボタンの文言は、大きくタッチフレンドリーにすると同時に、シンプルにわかりやすくするなど表現にも注意しましょう。

フォームの位置はスクロールの前に

フォームだけではなく、入力フォームが設置されているページのデザインも重要です。というのも、フォームやCTAといったユーザにアクションを促す要素は、ページの上部に表示されるものの方がユーザに影響を及ぼしやすいためです。このため、入力フォームは全体がスクロールしない位置に設置しましょう。フォームをスクロールしなくても見える位置に設置したところ、スクロール後の位置に比べてCVRが2倍以上になったという例もあります。

フォーム以外の要素を少なくする

フォームの位置だけではなく、そもそもペーデザインはシンプルなものにしておきましょう。

フォームのあるページに他のバナーやリンクが多いと、ユーザはそちらに気を取られてしまいます。ここからリンク先に飛ばれてCVが獲得できないという事態も発生するため、CV獲得のページでは目的以外の要素をできるだけ排除することが大切です。

コンバージョンボタン(登録完了ボタン)は目立つようにする

コンバージョンボタンは、フォームの入力完了後の最後のデータ送信ボタンのように、顧客のステータスを潜在顧客から見込み顧客へと引き上げる重要な役割を果たします。

このボタンを大きくすることはもちろんのこと、暗い色から明るい色に変えるだけで、CVRを大幅に引き上げた事例もあります。もし、このボタンが目立たないようでしたら、ここでユーザが吸い込まれるようにボタンを押してしまうようなデザイン上の工夫を施すこともやってみる価値はあります。もちろん大きな文字で「送信」のような動作の観点から、わかりやすくすることも効果的ですが、ユーザが得られる価値を踏まえて、「〜を手に入れる」等のキャッチコピーで気持ちにアピールするアプローチも考えられます。

モバイルフレンドリーにする

インターネットでのモバイルのユーザ数は、すでにパソコンのユーザ数を超えています。そのため、特にBtoCのような一般消費者向けの商品やサービスの提供では、スマホ等のモバイル端末に適したユーザインタフェースを用意する方がよいかもしれません。シンプルな画面設計による見やすさの確保、スクロール等のわずらわしい操作の最少化、それから前述の最後のデータ送信のようなコンバージョンにつながるボタンを大きく目立つように表示したデザインにする等モバイルフレンドリーなインタフェースを心掛けましょう。

さらに親指でも押しやすいタッチフレンドリーなボタンを含めて、デザイン、レスポンス、操作性等をUI設計の段階から配慮していく方が望ましいかもしれません。

離脱はポップアップで引き止める

前述のバナーやリンク、それからbackボタンもそうですが、これらをクリックしてしまうと別のページに飛んでしまい、最悪の場合は、気づかないうちに既に入力した情報を消去してしまう場合もあります。これを防ぐために、他のページへの移動する操作を実行した際に、本当にこのフォーム入力のページから離れてもかまわないか、さらには、入力が失われしまう可能性がある旨の表示をポップアップ画面で表示することが有効です。
(なお、このタイミングでデータを保存して、戻ってきた際に、続行できるように設計することも可能ですが、必要性や実効性については、十分、検討すべきでしょう。)

EFOツールの活用

EFOのためのツールを利用し、フォーム機能の一部を自動化することも考えられます。非常に多機能なツールも提供されていますが、以下が代表的な機能です。

    • エラーをリアルタイムで教えてくれる
      入力内容を送信したらエラーで再入力、というケースを先にも紹介しました。たとえば、不正なドメインのメールアドレスの入力のようなエラーを、送信後ではなくその場でユーザに知らせる機能です。

    • 住所やフリガナの自動入力
      郵便番号から住所が検索できる機能は、ユーザとして使ったことがある方も多いのではないでしょうか。この他にも名前の入力に応じてフリガナの予測を出すという機能もあります。

    • メアドサジェスト機能
      メールアドレスは、もっとも重要な入力項目の一つですが、長い上に入力でモードの変更も必要なため、わずらわしく感じておられるユーザの方もいらっしゃるのではないでしょうか?多くのユーザに使われている@以降の入力を選択画面で選べるメアドサジェスト機能もユーザの快適なフォーム入力を手助けします。

    • チャットボットとの連携機能
      最近のツールには、チャットボットを活用して、質問にこたえながら入力が進められるようにして、ユーザの負担を軽減できるよう配慮したが提供されており、成功事例としてもPRされています。

    • 他のアカウントとの連携機能
      GoogleやFacebookのアカウントと連携することで、会員登録やログインをより少ない手間で可能にする機能です。

    • A/Bテスト
      入力フォームに関して複数の改善案を評価するための手法ですが、次項で詳述します。

A/BテストによるEFO施策の実効性の検証

上記のようなフォームのデザインや機能上の改善を施した場合でも、どのような要素が実際に有効なのかがはっきりしない場合が多いのではないでしょうか?

そこで、このような混沌とした状況を打破するための手段として、おすすめしたい手法がA/Bテストです。

A/Bテストは、入力フォームのデザインや項目の並び方、表現、機能等に関して現状を含めた複数の改善案を用意し、効果を評価していく手法です。どの部分に問題があるかの把握や、どのような工夫が奏功したか、さらには、最終的にどちらのフォームを選択するのがよいかを判断するのに有効な手段といえるかもしれません。

このようなアプローチを取り入れてゆくことも試す価値があるかと思います。

上記の改善施策全体にいえることですが、時間的に余裕があれば、いくつかの候補を用意し、A/Bテストによってよりコンバージョン率が高まるような検討してみることもおすすめします。

フォーム入力プロセス全体の中での進捗状況を明示する

現在、フォーム作成全体の中でどこまで済んでいるかがわかるようになっていれば、時間に制約がある場合でも、安心して入力を進めることができるでしょう。もちろん自前で設計してもよいですが、ツールでこのような機能があれば、活用を検討してみましょう。

EFO施策の成功事例

EFO施策の成功事例には以下のようなものがあります。これらにはEFOツールを活用したものもありますので、自社に適したツールがあれば検討してみる価値はあるかもしれません。

A/Bテストの活用による改善

株式会社ハウツー(結婚式の準備のために情報サイト)は、A/Bテストを活用して、フォームを改善し、最終確定画面まで導く施策により、コンバージョンを1.3%、平均的な離脱時間を約500秒も改善(滞在時間を160秒台から、670秒近くまで延長)し、確定率をおよそ6%から8%まで約2%向上させることに成功しています。

A/Bテストは、前述のようにフォームの表現、デザイン、機能等に関して現状や複数の改善案を用意し、効果を評価していく手法です。

フォームの改善によるおコンバージョン率向上のEFO成功事例は散見されますが、どの部分の改善が奏功したのかどうかについて、特定することは難しいと考えられます。

A/Bテストは、このような不可解な因果関係を明確に把握するために有効といえるかもしれません。

再訪問時にデータの再入力を不要にすることでCVR向上

山陰合同銀行はランディングページにローンの申込みを支援するためのシミュレーション機能を設置しています。ユーザはこのページを離脱後に再訪問した際にフォームを再入力する必要なくシミュレーション結果を再表示できるようにしてユーザの利便性を図ることにより、同銀行は、ローン申し込み完了率を114%向上させることができました。

ステップ型への移行と全体の進捗率の表示

株式会社スタッフサービスでは、従来、画面をスクロールさせて表示していたのをスクロールからステップ型への移行とともに、全体の進捗率の表示することにより、フォームの入力完了率を155%向上させた事例があります。

チャットボットの活用による改善事例

質問に答える形で入力できることが、ユーザの入力の負担を軽減するようです。

建築業界で人材派遣サービスも提供している株式会社夢真では、応募フォームの入力項目が多すぎたため離脱も多かったことを改善するために対話型式のチャットボットを導入することにより前年比で131%のCVRを達成したとのことです。

また、オンライン英会話サービスの株式会社ビズメイツでは、チャットボットの活用により、CVRを前月比で117%、特にスマホでは133%改善できたとのことです。これはBOTCHANというツールを使用しての成功事例です。

EFOのポイントと効果測定の仕方

ここまでで具体的な方法について見てきましたが、EFOを実施すべきかどうか判断するポイントはあるのでしょうか。

1つの判断基準となるのが離脱率です。Googleアナリティクスでサイト状況をチェックすることで可視化できます。その上で、フォームが設置されたページへのアクセスはあるものの離脱率が高い場合には改善が必要と判断できるでしょう。

先にも触れたように、フォームへの入力は心理的な抵抗もあり、ある程度の離脱は避けられませんが、著しく高い場合には注意が必要です。あるいは、そもそもCVRが低い場合にも入力フォームの改善を検討してみる価値があります。

効果測定の仕方

EFOを実施した際の効果測定にもGoogleアナリティクスが使えます。基本的にはEFO実施の判断とポイントは同じで、施策を実施する前後の離脱率の変化を測定します。さらに本格的に取り組む場合には、分析機能がついたEFOツールの導入もひとつの手となるでしょう。前述のようにユーザの利便性に貢献するさまざまな自動化を利用することができます。

また、A/Bテストは、試行錯誤で離脱率の低減、すなわちCVRの改善を進めるために有効な手段ともいえるかもしれません。EFOツールにも、この機能が取り入れられているものもありますので、活用されることをおすすめします。

EFOはCVR向上につながるコスパの良い施策

本記事ではEFOツールも紹介しましたが、Googleアナリティクスで現状を可視化し、ポイントをつかんで改善することができれば専用のツールなしでも実施可能です。このため、EFOは費用対効果が高く、すぐに取り組める施策と言えるでしょう。

また、いくつかの改善案が考えられる場合、A/Bテストにより、きめ細かな検証を加えながらフォームを改善していくこともおすすめします。

CVRが伸び悩んでいる際には、ユーザをどのようにCV獲得のページまで遷移させるかを考えがちですが、実際にはページを訪問したユーザですら入力フォームの使い勝手によって離脱している可能性があります。入力フォームがユーザビリティに直結していることは専門知識がなくとも直感的に理解できる施策でもあるので、ぜひ一度見直してみるとよいかもしれません。

参考:

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イノーバマーケティングチーム

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