想像力を刺激するコピーライティングが価値を生み出した。「デビアス」から学ぶマーケティング戦略

コンテンツマーケティング

「ダイヤモンドは永遠の輝き」
「婚約指輪は給料3カ月分です」
「スウィート・テン・ダイヤモンド」

これらのコピーを、誰もが目や耳にしたことがあるだろう。ここで話題にしたいのは、おそらく世界一成功したであろうマーケティングについてだ。

冒頭のコピーはすべて、ダイヤモンドやジュエリーを手掛ける企業、デビアスが仕掛けたマーケティングから生まれたコピーである。

コピーを読むとわかるとおり、デビアスは「ダイヤモンドのある物語(ストーリー)」を作っている。このストーリーによって、人々は「ダイヤモンドは価値のあるもの」というイメージを抱き、実際に高価な宝石となっていった。

「えっ? ダイヤモンドはもともと高価で価値の高いものだったんじゃないの?」

ひょっとしたらあなたは、こういう疑問を持ったかもしれない。

そうではない。20世紀初頭までは、ダイヤモンドは市場価値が低く、人々からの人気もない宝石だったのだ。

まさか!ダイヤモンドには価値がなかった!?

18世紀半ば、南アフリカで大規模なダイヤモンド鉱脈が発見された。莫大な埋蔵量により、ダイヤモンドの生産量は急激に伸びた。世界中にダイヤモンドが流通したのである。

しかし、それにともない、ダイヤモンドの希少性は薄れ、他の宝石に比べて価値が落ちてしまった。以来20世紀初頭に至るまで、今では信じられないことだが、ダイヤモンドは価値が薄いということで人気のない宝石だったのである。

ここで、登場するのがデビアスだ。デビアスは、ダイヤモンドの価値を高めるため、2つの方法を採った。

「1つ目は、流通量を統制してだぶついたダイヤモンドを管理すること」

「2つ目は、徹底的なマーケティングで市場における価値を高めること」

実をいうと、1つ目の「流通量の統制」を巡る物語がとても面白くて、まるで“国際謀略小説”を読んでいるようなワクワク感があるのだが、残念ながらここでは紹介するスペースがない。

今回は我慢していただき(いつかこの物語を書いてみたい!)、2つ目の「マーケティング戦略」について紹介する。

価値のないものに価値を与えるマーケティング戦略

「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)」というキャッチコピーは、市場価値の低かったダイヤモンドに付加価値をつけるためのスローガンだ。デビアスは、ダイヤモンドそのものではなく、ダイヤモンドのあるストーリーを作り、人々をそのストーリーへと誘導したのである。

さらに、「ダイヤモンドは永遠の愛の象徴」というプロモーションを展開する。ダイヤモンドこそ、婚約指輪、結婚指輪にふさわしいと、次々と以下のキャンペーンを打って出た。

  • ハリウッド映画の中で結婚祝いのシーンを作り、ダイヤモンドを頻繁に登場させる。
  • 有名人のダイヤモンドにまつわるロマンチックなストーリーを作り、雑誌や新聞に掲載する。
  • ファッションデザイナーなどを起用し、ラジオやテレビでダイヤモンドについて語らせる。
  • 英国王室に、ダイヤモンドのプレゼントを贈る。

このようなキャンペーン活動により、ダイヤモンドの価値は、急激に上昇していくことになった。

ここで大事なことは、デビアスはそのすべてのキャンペーンの間、「デビアス社」という会社の価値を高めるプロモーションは、1つも行っていないところにある。あらゆるプロモーション活動は、ただ「ダイヤモンドに価値をつける」ためだけにあったのだ。

この徹底したマーケティングが、現在のダイヤモンドの価値を生み出した。

価値を作りたければストーリーを作れ!

価値のなかったダイヤモンドに価値をつけるために、デビアスはストーリーを作った。その象徴が、「ダイヤモンドは永遠の輝き」を始めとするコピーだ。

「デビアスのダイヤモンドに価値をつけるマーケティングは、世界で一番成功したマーケティング」と言われる所以(ゆえん)が、そのコピーにある。短いコピーながら、鮮やかにダイヤモンドのある情景が描かれるストーリーになっている。

昔からマーケティングの世界では、「モノを売るな。シチュエーション(ストーリー)を売れ」と言われているが、デビアスはまさにそれを世界的規模で行い、成功した。

同じように、ストーリーを作って価値を生み出した例がある。

1974年、アメリカの経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の依頼で、Martin Conroy(マーティン・コンロイ)というコピーライターは、「定期購読を促す」一通のセールスレターを書いた。このレターは、広告業界でコピーライティングの仕事に携わる人間なら、おそらく誰でも知っている有名なセールスレターだ。

まずは、そのセールスレターの原文をご覧いただきたい。

参考元:The Wall Street Journal “two young men” letter(Ryan McGrath “Gary Halbert’s Favorite Ads”)
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前半部分を意訳すると、こうなる。

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読者の皆様

今から25年前。春の終わりのある美しい午後、2人の若者が同じ大学を卒業しました。彼らはとてもよく似た2人でした。どちらも平均的な成績で、どちらも気持ちのいい性格の若者でした。さらに2人とも、未来への野心的な夢で胸をふくらませていました。

そんな2人が、最近「卒業25周年記念式典」に出席するために大学に戻ってきました。
相変わらず彼らは、昔と同じようにとてもよく似た生活を送っていました。
どちらも幸せな結婚をし、どちらも3人の子どもがいます。さらにどちらも、卒業後同じ中西部のメーカーに勤め、現在もそこにいるのです。

しかし、違いもありました。1人は会社の小さな部署のマネージャーで、もう1人は、その会社の社長だったのです。

何が2人を分けたのか?

「人の人生を分けるものはなんだろう」と、あなたは思ったことはありませんか? 
それは、生まれつきの知能や才能、あるいは熱意に原因はありません。1人が成功を望み、もう1人が望まなかったからでもありません。

2人の違いは、それぞれの知識の種類と、その知識の使い方にあったのです。

そしてここに、私があなたと同じような方々に、「ウォール・ストリート・ジャーナル」を薦める理由があるのです。というのも、「The Journal」の目的は、「ビジネスに活かす知識の提供」にあるからです。
(後略)
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このセールスレターは、1974年から18年間使われ、総額10億ドル以上の利益を上げた。これが、伝説のコピーだ。
 
ここで紹介した前半部分は、ウォール・ストリート・ジャーナルの購読者である、すべてのビジネスマンに当てはまるストーリーになっていることにお気付きだろうか? 

セールスレターを読んだ人間は、自分に置き換えてストーリーを読む。このセールスレターは、消費者にストーリーを提供している。つまり、消費者にとって、これまで興味のなかった新聞(=価値のないもの)が、このレターを読むことで、価値のあるものに変わってしまうのである。

デビアスのダイヤモンドとはやり方が違うが、どちらも「価値のないもの」を、消費者一人ひとりに置き換えられるストーリーを作ることで、「価値のあるもの」に変えてしまう、という手法を使っていることに共通点がある。

想像力を刺激するコンテンツで、価値を生み出そう

デビアスのダイヤモンドと、ウォール・ストリート・ジャーナルのセールスレター。ターゲットとする消費者が、自分のことに置き換えられるストーリーを作ることで価値を生み出し、大きな成功を収めた実例だ。

一見すると無価値に見えるものでも、消費者がそれを使うことで価値が出るように想像させること。人間の想像力を刺激するストーリーを作り出すプロモーションは、どんな業種や業態の企業でも可能だろう。

あなたの会社で、「売りたいけどどうやって売ればいいのか」悩んでいるものがあるのなら、その商品に価値を生み出すストーリーを作ってみるのはどうだろう? 

幸い、現代はインターネットで世界中とつながっている。デビアスやウォール・ストリート・ジャーナル規模のプロモーションをしなくても、同じ効果はウェブ上で生み出せる。

価値を生み出すストーリーを、コンテンツとして展開してみるのも面白いかもしれない。