起業家が学ぶべき「死の谷」理論とは?

経営・ビジネスハック

米国の起業家であり、ベンチャー企業へのアドバイスをしているジョン・ワリロー氏のブログから面白い記事をご紹介しよう。

彼は、「売却するための起業」(日本語訳未発売、原題 “Built to Sell: Creating a Business That Can Thrive Without You” )を出版し、大ヒットになった著者である。

イノーバ・ブログでも、何度か彼の事をご紹介したので、覚えている方もいるかもしれない。関連の過去記事はこちら。
売上をアップさせたい起業家や経営者への3つのアドバイス
社長が居ないと回らない会社はダメ会社
あなたの育児経験が起業に役立つ5つの理由

起業家が学ぶべき「死の谷」理論とは?

私が今まで見た中で最高のスピーチは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエンディコットハウスの外の芝生で見たものだ。その日私は、Inc. Magazine社、Entrepreneurs’ Organization(かつてのYEO)、そして講演者その人の共同による特別プログラムの1年目に参加していた60名の起業家のうちの1人としてその場に参加していた。

およそ5フィート7インチ(約170cmほど)、少年のような笑顔にくしゃくしゃのブロンド髪というその講演者は、およそ偉大な演説家らしい風貌からはかけ離れていた。トニー・ロビンスやスティーブ・バルマーのような、人々の注目を集めるリーダーの一流の存在感というよりは、むしろ読書好きの高校生のようといったほうが当てはまるようだった。

しかし、この印象は彼がひとたび口を開いた瞬間に変貌した。

芝生に置いたイーゼルに彼が講演内容を走り書きしはじめたその瞬間から、私たちは完全に魅了されていた。なぜ我々の会社がここまで成功をおさめているのか、そしてある時点でやり方を変えなければ失速してしまうだろうと彼が語ったそこからの50分間、我々は完全にその場から動けなくなってしまっていた。

死の谷とは?

その日の講演者は、バーン・ハーニッシュ(Verne Harnish)氏。彼が語ったトピックは多くの成長期にある企業が次のステップに向かうために通らなければならない“死の谷”についてであった。

彼の説を言い換えると、会社というものには停滞期があり、経営者はその段階で悪くない生活を手に入れるが、彼もしくは彼女自身が次のレベルに飛躍出来なければ事業の成長はそこで頭打ちとなる、ということだ。

最初の停滞期は2,3人の従業員を抱えた頃にやってくる。経営者はこの段階で自身にとって“稼ぎのいい仕事”を求めるか、それとも会社を大きくしていくかの決断を求められるという。
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二度目の停滞期は10名~12名ほどの従業員を抱えた頃にやってくる。経営者は儲けを生み出すためのチームを確立し、生活レベルも向上している。だが、きちんとした組織マネジメントチームを作らずになんとかやっていけるのはここまでだ。これ以上の従業員を抱え、数百万ドル規模の利益を上げようと思ったらこのやり方では通用しない。

実際、次のレベル(従業員50名前後の段階)へと挑戦する前に多くの企業が何度か試行錯誤を繰り返し10~12名の状態とを行ったり来たりする。そして“死の谷”のそれぞれの停滞期の間、多くの成長企業は安全性を求めるがゆえにそこから抜け出せなくなってしまう。

Verne氏の研究は成長期の企業が抱える問題点と、なぜ“死の谷”は存在しそれを乗り越えるのが困難なのかを明らかにしている。

問題の原因は“複雑さ”だ

経営者が全てを把握出来る3名規模からスタートした事業は、従業員が12名程度になったところでやがて他人に頼らなければならなくなる。そしてそれを超える頃には事業自体がさらに複雑になるが、従業員全員と顔を合わせて仕事を出来ているこの時期は、まだ比較的マネジメント可能な状態といえる。

50人規模への困難な挑戦

しかし、50名規模の事業規模への挑戦は、現場の従業員をマネージャーを介してマネジメントしなければならないことを意味する。成長企業がよくつまずくのがこの段階だ。

経営者の指示が組織内を伝わる途中で誤解されたり、忘れられたり、時にはマネージャーの好みによって無視されたりする。人選を間違えたり、経営者のビジョンを正しく従業員に伝えられなかったりといったことで、その事業は“死の谷”への引きずり込まれてしまう。

今日に至るまで、Verne氏の従業員数と“死の谷”の研究は私が見てきた成長企業の陥る問題の考察としてもっとも価値のあるものといえる。

まとめ

どうだろう?なかなか興味深い分析ではないだろうか?
通常、ベンチャー企業から大企業になるのは難しいという事は判っていても、具体的に何人の規模で頭打ちになるのか、というのを実証的に研究したデータは、あまり無かったのではないだろうか?

ベンチャー企業の経営者にぜひ意見を聞いてみたい所だ。

今回の記事で紹介されているバーン・ハーニッシュは、新著の中でこの”死の谷”の研究を詳細に論じている。英語版が明日発売予定だ。私は、Kindleバージョンを購入し、感想をブログで報告したいと思うので、楽しみに待っていて欲しい。
The Greatest Business Decisions of All Time
しかし、米国でビジネス書が発売されると同時に手に入るとは、便利な時代になったものです。

[補足] 2012/10/02 2:42
MessageLeafに読者の方から参考になるコメントを頂いたのでご紹介しよう。コメントを寄せてくれたのは、起業家の向井永浩さんだ。

向井さん「いつも興味深く読んでいます。以前のMBA的な視点と起業家的な視点が違うということを書いていらしたのを見たのですが、この死の谷の話もシード段階運営方法ととある程度大きくなってからの運営方法はやはり変えたほうがよいということなのでしょうね。あとなぜ50と言う数字がボーダーラインなのかが率直に疑問に思いました。米国と日本では組織体質も違うのでもしかしたらこの壁が違うのかなと言うことも勝手に考えていました。」

宗像「向井さん、メッセージありがとうございます。そうですねー。たしかに、日本の方が自発的で、かつ、マルチファンクションな人が多いです。アメリカは、より専門家しており、組織的にマネージする事が多いですね。ただ、個人的には、スタートアップは専門家集団であるべきだと思っており、ゼネラリストが何名もいる組織よりは、スペシャリストが役割分担する組織がいいのではないかと思っています。50という数字に関しては、本を読んで調べてみようと思います。」

どうだろう?皆さんは、日米の組織体質の違いについてはどう思うだろう?組織が成長する上での死の谷についてもっと知りたいと思うだろうか?もし、コメントがあれば、MessageLeafなどでどしどしどうぞ。

記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://innova-jp.com/library/