ユーザーエクスペリエンスのいま、むかし

コンテンツマーケティング
ユーザーエクスペリエンスという言葉が登場して久しいが、デジタル時代におけるコンテンツとエクスペリエンス(体験)はどう進化しているのか。デジタルとリアルの体験を上手くつないでいるマーケティング事例などを交えながら、いま、コンテンツに求められるエクスペリエンスを探る。
目次
ユーザーエクスペリエンス(UX)という概念
3、40年ほど前のテクノロジーを思い出してみよう。(読者の中には生まれていなかった方もいるかもしれないが)テレビ、洗濯機、冷蔵庫なんでもいい。当時はまだ、ユーティリティ(実用性)追求の時代ではなかっただろうか。その後、開発側ではユーザビリティ(使いやすさ)、プロフィタビリティ(採算性)が追求され、近年は ストラテジー(技術活用戦略)が追求される時代にまで進化している。
使い手側からすれば、新しい技術に触れることで得る新たなエクスペリエンス(体験)というのは昔から常にあるのだが、「ユーザーエクスペリエンス」とか「UX」という包括的な言葉で、「顧客経験価値の向上」という概念が売り手側や技術者、デザイナーの間に定着しはじめたのは、おそらく2000年前後からであろう。
ユーザーエクスペリエンスとは、ユーザビリティが備わっていることを前提に、その(ユーザビリティの)先、あるいは上にあるものであると言えよう。使いやすさの上に、ユーザーがやりたいこと、あるいはユーザーの想像を超えるような新たな体験を「楽しく」「刺激的に」または「心地よく」、あるいは「有意義に」「有益に」できることがユーザーエクスペリエンスである。
ユーザーエクスペリエンスのいま、むかし
先にも述べたように、ユーザーエクスペリエンスの概念が定着しはじめた2000年前後は、デジタル環境の変革期でもあった。特に、2001年に米国に登場したアップルストアが、ユーザーエクスペリエンスに徹底的にこだわったことは記憶に新しい。
つまり十数年前、ひとむかし前の話だが、2000年前後と言えば、初心者でもホームページを作って情報発信できるようになった時代だ。2001年に登場したiPodのメモリはたしか64MBだったし、デジタルカメラは300万画素で現在のスマートフォンの倍近い価格だったと記憶する。
ちなみに、今のスマートフォンのカメラは800~1200万画素が主流である。モバイルデバイスも進化し、様々なアプリケーションを持ち運べるようになった。動画も簡単に撮影して共有できる。私たちのエクスペリエンスも、世の中にあふれるコンテンツも変化して当然である。
今も昔も変わらない2つの要素
ちなみに、筆者がユーザーエクスペリエンスというキーワードから真っ先に思いつくのはディズニーランドでの体験である。アップルストアもディズニーランドもそうなのだが、そこには「設計されたコンテンツ」(あるいはアトラクションや商品)があり、ユーザーに刺激を与えてくれるとともに「サービス=もてなし」がされている。
この「設計されたコンテンツ」と「サービス=もてなし」は、商品かコンテンツかなどに限らず、ユーザーエクスペリエンスを語る上で非常に大切な要素であると考えている。
デジタルコンテンツとリアルのエクスペリエンス
例えば、初めて行ったレストランでFoursquareを使ってチェックインすると、次回に使えるクーポンがもらえるとか、Twitterから決められたハッシュタグを使ってツイートしたら商品が割引になるといった、特にスマートフォンやタブレットの普及により実現したキャンペーンは、今や至る所で展開されている。
これらの仕組みの活用は、デジタル上の「設計されたコンテンツ」とリアルでの「サービス=もてなし」をうまく繋いでいるユーザーエクスペリエンスのひとつである。
また、ユーザーにリアルで刺激的な体験をさせて、それをソーシャルで広げてもらうという手法も数多く実施されている。
例えば、少し前の話だが、ドイツのアウトドアブランド EVOC が実施したリアルとFacebookページを連動させたキャンペーンは大きな反響を呼んでいたので紹介しておこう。
http://www.youtube.com/watch?v=mShuK_YnYUI#t=78
衝撃を吸収する特殊な素材で作られたバックパックのプロモーションに、商品を街頭に設置し通行人に殴らせたのである。
その衝撃がどのくらいだったかを計測し、リアルタイムでFacebookページに「殴った人」と「(設定上)殴られている人」の顔写真付きで投稿。参加者にはその記録をシェアするように促した。
これは、リアルの世界とソーシャルメディア上での「設計されたコンテンツ」とユーザーの話題づくりに寄与する部分での「サービス=もてなし」をうまく組み合わせたユーザーエクスペリエンスの事例で、低い予算で体験重視のコンテンツづくりをした好事例である。
「設計されたコンテンツ」+「もてなし」のコンテンツづくりへ
上記の事例からも、デジタルコンテンツだけが顧客をつかむためのコンテンツであるとは限らないし、コンテンツマーケティングはユーザーエクスペリエンスやテクノロジー、他の広告活動および商品とうまく結合することで効果を発揮するということがわかる。
コンテンツを通じてユーザーエクスペリエンスを提供しようというのであれば、単にWebサイトやソーシャルメディアを活用して新しい情報を提供するという時代は終わりつつある。
コンテンツも立体(あるいはチャネル横断)的にデザイン・設計され、何かのサービス=もてなしを付けて提供されるようなアプローチを考える時代に来ているのではないだろうか。
参考元: ・Customers remember experiences, not content ・Seniors as Web Users ・10 Jobs That Didn’t Exist 10 Years Ago Photo: Some righs reserved by °Florian, flickr
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