Content Marketing Award 2013 ソーシャルメディア・マーケティング分野の受賞作を紹介

コンテンツマーケティング
コンテンツ・マーケティングは10年ほど前にアメリカで生まれ、日本においても近年、その重要性が段々と認識されるようになってきた概念だ。
THE CONTENT MARKETINGも、様々な切り口から日々コンテンツ・マーケティングの最前線をご紹介しようと試みている。
さて今回は、コンテンツ・マーケティングの本場アメリカで行われている、その年の優れたコンテンツ・マーケティング事例に賞を与える“Content Marketing Award 2013”の受賞結果の一部をご紹介したい。
コンテンツ・マーケティングの頂点を決める“Content Marketing Award”とは?
このアワードは2010年に創設され、今年で4回目の開催となっている。
主催しているのは米アリゾナ州・フェニックスに拠点を置く“Content Marketing Institute”(以下、CMI)という企業だ。ご存知の方も多いかもしれないが、CMIはコンテンツ・マーケティングの生みの親と言われている。
つまり、“Content Marketing Award”とはコンテンツ・マーケティングの生みの親であるCMIが、企業向けにコンテンツ制作を行うクリエイターの優れた作品を讃える、年に一度の機会なのだ。
なお、コンテンツ・マーケティングに用いることのできるあらゆるメディアを網羅したカテゴリー、更にその下に多数の部門が細分化され、デジタル・紙媒体問わずに創設されている。
今回は、その中でもソーシャルメディア・カテゴリーにある、5つの主要ソーシャルメディア(Facebook, Google+, Pinterest, Twitter, YouTube)を有効活用した事例を表彰する部門の受賞作を紹介することとしたい。
Facebook部門・Twitter部門受賞:WGN America Superfan Social Campaign
FacebookとTwitterという、日本でも最上位の人気を誇る2大ソーシャルメディアにおける最も優れたコンテンツ・マーケティング事例を表彰する部門では、米・シカゴのケーブル・衛星テレビ局WGN Americaが行った” WGN America Superfan Social Campaign”というキャンペーンがダブル受賞という結果となった。
このキャンペーンは、若者の視聴者層を獲得するというWGN Americaの目的を、ネット上のコミュニティを生成することで達成しようと試みたものだ。”How I Met Your Mother”という同局の人気ドラマシリーズを題材に、キャンペーン名の通り”Superfan”を生み出すためのイベントや企画がいくつか行われた。
その上で、Twitterのアカウントは番組放映中に熱心なファンとリアルタイムにやりとりを行う公式アカウントとして運営され、Facebookページは様々な企画やドラマの内容の情報を集約するハブとして運営された。
Google+・Pinterest部門:Veterans United Network
Google+と近年アメリカでの伸びが著しいPinterestの部門では、アメリカ合衆国退役軍人省の認可を受ける退役軍人向けの住宅ローン会社、Veterans United Home Loansによる広告キャンペーン”Veterans United Network”がこちらもダブル受賞という結果となった。
この”Veterans United Network”は、退役軍人やその家族を主要ターゲットとして、彼らにとって有用な情報を届ける複数のソーシャルメディアコンテンツの集合体だ。
Google+とPinterestそれぞれのVeterans United Home Loansのページでは、日々退役軍人の家族が直面するさまざまな問題に関するアドバイスやアンケートが更新されている他、一方で、ちょっとした生活の知恵も配信されるなど、硬軟織り交ぜた投稿が特徴的だ。
次の画像からお分かり頂けるように、住宅ローンから名言まで、多岐に及ぶテーマのコンテンツが掲載されている。
出典:Veterans United Home Loans・Pinterest
YouTube部門:CyberpioneerTV
動画広告の活用が可能なYouTube部門では、シンガポール共和国国防省の映像部門であるDefence Information Television (DiTV)が制作しているYouTubeアカウントcyberpioneerTVが受賞した。
このレーベルでは、シンガポール軍の兵役生活の様子や軍の保有する兵器、兵士の実力などを紹介するミニビデオシリーズを定期的にアップロードしている。
なかでも、一番人気のコンテンツである”Every Singaporean Son”というシリーズは、基礎演習に臨む15名の新兵たちの姿を追ったドキュメントとなっている。
18話あるこのシリーズの第1話は30万回近い再生回数を記録している人気コンテンツだが、官製のメディアによる広報戦略とはいえ、侮れない力を持ったコンテンツとなっている。
各話1本5分ほどの長さだが、音楽やナレーションを多用した軽妙な編集で楽しく観ることができる。
そして、何よりこのキャンペーンの成功の秘訣は、コンテンツのターゲットとなりうる人々(=国民、もしくは兵役を控える若者とその家族)がきわめて知りたいという欲求を持っているであろう対象(=兵役生活の様子など)を取り上げてコンテンツをつくったことと言えるのではないだろうか。
まとめ
いずれも大きな反響を呼んだコンテンツマーケティング事例である訳だが、その成功要因とは何なのだろうか?
それは、以前紹介させて頂いた“Delightion(歓喜)”という要素が関わっているのではないかと思う。
アメリカではすでにコンテンツマーケティングが主流化し、顧客に有益なコンテンツを提供する施策はもはや当たり前のものとなっている。
しかし、"求めている情報を提供する"という知的欲求を満たす次元だけでは、すでに差別化を図りにくくなっているのではないだろうか?
今日紹介した受賞作はいずれも、ユーザーの求めている情報を"有機的なコミュニケーション"を通じて、あるいは"情緒的な映像作品"を通じて、提供している。知的好奇心という次元を超え、コンテンツを通じて情緒的な体験まで設計することが、優れたコンテンツマーケティングを生み出す鍵なのではないだろうか?
日本ではまだこ次元に入るまで時間が掛かるかもしれないが、一歩先のコンテンツマーケティングを実践してみたい方は、ぜひ今回の受賞作をベンチマークしてみて頂きたい。
参考元:
・Big Brands Take Top Honors at 2013 Content Marketing Awards
・Content Marketing Award
Photo:Some rights reserved by Solomon Kibriye, flickr
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