社会貢献活動でブランディング!コーズ・リレーテッド・マーケティングの可能性とは?

コンテンツマーケティング

多くの企業が頭を悩ませるブランディングを、意外な方法で行う企業が近年増えてきた。

「コーズ・リレーテッド・マーケティング(Cause-related marketing: CRM)」、社会貢献とマーケティングを結びつけた手法であり、マーケティングの新しいカタチだ。

コーズ・リレーテッド・マーケティングとはどういうものか、その効果はどのくらいあるのか、そしてそれは、Web上でも可能なのか? 以下で詳しく見ていこう。

Question「まずは頭の体操をどうぞ」

突然だが、ここでクイズにチャレンジしていただきたい。

テーマは、「社会貢献活動と企業ブランディング」について。問題は全部で3問。では、どうぞ。

Q1. コーズ・リレーテッド・マーケティングを世界で初めて行った企業のキャンペーンは、次のうちどれ?

1. 「キャメルのためなら1マイルでも歩く」キャンペーン(キャメル)
2. 「水と生きる」キャンペーン(サントリー)
3. 「自由の女神復元」キャンペーン(アメリカン・エキスプレス)

Q2. 品質と価格が同じ場合、社会貢献活動を行っている企業のブランドを選択する消費者の割合はどのくらいだろうか?

1. 約15%
2. 約25%
3. 約35%

Q3. 自然由来成分のシャンプー&リンスを製造販売するメーカーが、自社のブランディングのために行う活動として最適なのは、次のうちどれだろうか?

1. ケミカル系シャンプー&リンスとの比較広告
2. 有名女優を使ったプロモーション活動
3. 環境保護活動

Thinking Time「答えを考えている間にこちらの写真をご覧ください」

Shokubutsu HANA(植物物語)

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「CLEAN RIVER SOON(まもなくきれいな川になります)」というメッセージの看板が、川に浮かんでいる。

これは、フィリピンの首都マニラの映像だ。マニラを流れるバシッグ川は、「二度と清流に戻らない」といわれるほど、汚染のひどい川だ。この川の浄化を目的に、Shokubutsu HANAという企業が汚染水の浄化に有効な植物、Vetiver(ベチバー)で「フローティング・ビルボード」を作り、川に浮かべたのである。

ちなみに、ベチバーは有害物質に対して強い耐性を持ち、人体に有毒な物質を吸収して汚染濃度を減らすことが確かめられている。

Answer「では、答え合わせの時間です!」

ライオンの「植物物語」ブランドを扱うフィリピンの企業、Shokubutsu HANAは自社のブランディングを高めるため、コーズ・リレーテッド・マーケティングを行うことにした。

扱うブランドである「植物物語」は、自然成分由来の原料を成分にした、シャンプー、リンス、石鹸、化粧品である。そのような自社商品のイメージを高めるため、環境問題への熱心な取り組みのアピールとして、マニラの汚染された川の浄化に取り組むことに決めたのである。

同時に、自分たちの活動を多くの人に知ってもらうために、水質浄化の働きをするベチバーを使った看板を作り、それを川に浮かべることにした。フローティング・ビルボードの誕生だ。

環境問題への取り組みと、認知度の向上。Shokubutsu HANAが行ったこの活動こそが、コーズ・リレーテッド・マーケティングなのである。コーズ・リレーテッド・マーケティングは、社会貢献とマーケティングを結びつけることで、企業のブランディングを成功させる手法である。

この手法をはじめて使ったのが、1983年にアメリカン・エキスプレス社が行った「自由の女神修復」キャンペーンである。

アメリカン・エキスプレス社は、「会員がカードを1回使用するごとに、アメックスは1セントを自由の女神修復のために寄付する」と大々的に告知し、無事に自由の女神像は修復されたのであった。このキャンペーン期間中に、新たに会員数が45%増加し、カードの使用料は28%増えたのである。

「自由の女神修復」キャンペーンが成功したのは、消費者の多くが、「社会貢献活動を行う企業」に対してシンパシーを抱くことに要因がある。

2004年、「NTTレゾナント株式会社 ポータル事業本部 リサーチグループ」と「株式会社三菱総合研究所 E-リサーチ事業推進室」が共同で行った調査がある。

「企業の社会貢献活動に対する一般生活者の視点」というテーマで行ったこの調査から、面白い結果が出ている。箇条書きにしてみよう。

・「企業の社会貢献活動」を評価している人は87.0%
・評価しない人の理由の1位は、「活動の内容が見えないから」43.2%
・「社会に貢献するための内容であれば告知すべき」と思う人は51.7%
・品質と価格が同じ場合、社会貢献活動を行っている企業のブランドを選択する消費者の割合は35.2%
・社会貢献度の高い企業のブランドを人に薦めたことがある人は12.9%

この結果をアメリカン・エキスプレス社のキャンペーンに重ねると、会員数とカード使用料の増加がよく理解できるだろう。

消費者の多くは、社会貢献活動に積極的な企業にシンパシーを感じ、社会貢献活動を後押しするために、その企業の応援(消費活動)をするのである。消費活動を通して、消費者自らが「社会貢献活動に参加」する気持ちを抱くのだ。

この心理をよく表しているのが、「社会貢献度の高い企業のブランドを人に薦める」人が、12.9%もいるという事実である。コーズ・リレーテッド・マーケティングが、企業ブランドの構築に、極めて有効な理由がここからも見えてくる。

さてさて、長らくお待たせしました。答え合わせです。

3問とも答えは……「3番」!

えっ、もうわかった? それは失礼。

Webで行えるコーズ・リレーテッド・マーケティング活動

Web上でも、コーズ・リレーテッド・マーケティングが行えることをご存知だろうか?

実は、10年以上前から取り組んでいるサイトがある。

「クリックで救える命がある」

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ここでは、常にさまざまな活動のスポンサー企業を募集していて、企業はスポンサーになると、自社サイトにクリック募金のためのページを開設できる。ユーザーは、活動に共感したら、「dff.jp」のページからスポンサー企業に飛び、支援したプロジェクトをクリックするのである。そのクリック数に合わせた金額を、該当団体に企業が募金するというシステムだ。

ユーザーは、「dff.jp」のページから企業サイトに飛び、具体的な取り組みや企業情報を確認できる。企業は活動のスポンサーになることで、多くのインターネットユーザーからの認知度が得られる。そして、募金した証拠をサイトに定期的に掲載することで、ユーザーからの信頼を得ることになる。

これは、ネットを介して行うコーズ・リレーテッド・マーケティングそのものである。

コーズ・リレーテッド・マーケティングを行うには豊富な資金力が必要だが、「dff.jp」では大企業ばかりでなく、資金力のない中小企業でもスポンサーになることが可能で、多くの企業がこれまでに参加してきた。このサイトを通じて企業が寄付した金額は、3億円を超えているという。

ブランディングと社会貢献活動。一見すると異なる性質のものを重ね合わせると、社会、消費者、企業の3者が共に“win-win”の関係になる活動になるのだ。これからのブランディングを考える上で、大きな示唆を与えているように思える。

「企業の利益とは、社会の公器たる企業がその役割を果たしていくための条件であり、利益そのものが目的ではない」(ピーター・ドラッカー)

参考元:
Beauty Brand’s Floating Billboard Cleans a Polluted River
THE BILLBOARD THAT CAN CLEAN A POLLUTED RIVER
What is cause-related marketing?
Cause Marketing Can be Powerful Tool
企業の社会貢献活動に対する一般生活者の視点
クリックで救える命がある

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