社長が居ないと回らない会社はダメ会社

経営・ビジネスハック

私が、起業する際に読んで、とても参考になった本がある。

タイトルは “Built to Sell: Creating a Business That Can Thrive Without You” 日本語に訳すと、「買収される会社を作る?社長が居なくなっても成長できるビジネスの育て方」である。

翻訳が出ていないのでとても残念なのだけれど、起業や独立開業を考える上で、とても役立つアイディアがぎっしりつまった名著で、アメリカで大変に売れた本だ。

今回は、この本を題材にして、買収される会社を育て方をご紹介したい。

コンサルティング会社を起業し売却

著者であるジョン・ウォリロー氏は、これまで4つの会社を立ち上げた起業家だ。彼が、最後に立ち上げたのはコンサルティング会社だが、こちらも見事に売却する事に成功している。

実は、これは驚くべき事だ。なぜなら、通常コンサルティング会社は、個人に依存して経営されるいわば人的依存型の経営であるケースが多い。しかも、今回のように創業者が会社を作ったケースはなおさらだ。このような会社は、他社が買収して、創業者がいなくなると、とたんにダメになってしまう。

そのような会社には、買い手が付かないのが普通である。

では、彼はどのようにして、コンサルティング会社の売却に成功したのだろうか?

サービス型ビジネスとプロダクト型ビジネス

ポイントとなる考え方は、「サービス型ビジネス」と「プロダクト型ビジネス」というコンセプトである。

「サービス型ビジネス」

お客さんの希望に顧客に応じて、仕事内容をカスタマイズ。値段は都度見積。

「プロダクト型ビジネス」

全てのお客さんに対して、同じ仕事内容を提供する。値段も同じ価格が適用される。

ウォリロー氏が立ち上げた、コンサルティングというビジネスは、典型的に「サービス型」のビジネスだ。個々の顧客の希望を聞き、その顧客の課題にあわせてソリューションを提供するからだ。しかし、サービス型のビジネスは、人に依存するビジネスモデルであり、他社に売却する事は出来ない。

そこで、ウォリロー氏はコンサルティングの内容をテンプレート化し、全ての顧客にほぼ同じ仕事内容を提供するようにやり方を変えた。すなわち、ビジネスを「プロダクト型」化したのだ。

ウォリロー氏が参考にした事例:ロゴワークス

ウォリロー氏は、自社のコンサルティングビジネスを標準化するにあたって、ロゴワークス社の事例を参考にした。ロゴワークス社は、モーガン・リンチとジョーイ・デンプスターにより2001年に立ち上げられた企業ロゴを得意とするデザイン会社である。このようなデザイン会社は、仕事が属人的で、売却出来ない典型的な「サービス型のビジネス」である。

売却不能な会社の特徴とは?

デザイン会社のような、売却が難しい事業には、以下のような特徴がある。

  • オーナーへの依存度が高い(ワンマン経営)
  • クライアントとの対面での打ち合わせが不可欠
  • 標準化された制作プロセスやシステムが存在しない
  • 一件一件特注のため、仕事が増えてもコストが下がっていかない。

このような会社は、創業者が事業継続の意思を失った時点でビジネスそのものも途絶えてしまう。

作業内容を標準化すればコストが下がる

デザイン会社は、通常、腕利きのデザイナーによって運営されている。ビジネス系の人間は居ない事が多い。彼らは、自らの制作物に対してこだわりがあるから、全ての案件を丁寧に丁寧に仕上げていく。まるで、一点ものの美術作品を仕上げるかのように。

ところが、ロゴワークス社は、一般の常識に反して、ロゴ制作に「規模の理論」を持ち込んだ。「規模の理論」とは、作業内容を標準化すると、同じ作業を繰り返すので、仕事が増えれば増える程、仕事に習熟しコストが下がるという理論だ。

ロゴワークスが取った非常識な経営手法とは?

では、ロゴワークスはどのような仕事の仕方をしたのだろうか?

  • 対面の打ち合わせを一切行わず、代わりにネットと電話を駆使。
  • アーティストを雇わず、新卒の若手デザイナーを採用。チーム制でロゴデザインに取り組んだ。
  • ロゴデザインの制作プロセスを標準化し、全ての顧客に同じ制作プロセスを適用した。

彼らは、ロゴデザインに特化し、制作プロセスを標準化することで、質とスピードを上げた。この結果として競合他社よりも、価格を下げることに成功したのだ。ネットと電話を活用することで、繁忙期にはフリーのデザイナーに外注することも可能になった。ニューヨークやサンフランシスコに家賃の高いオフィスを構える代わりに、ユタ州アメリカンフォークに店舗を構えた。

まとめると、ロゴワークス社は、ロゴデザインの仕事から、アート的な要素を取り除いた。そして、商品サービスの標準化を行うことで規模の理論を持ち込み、競合よりも競争力のあるビジネスを構築したのだ。

彼らは、2005年にベンチャーキャピタルであるベンチマーク・キャピタルから930万ドル(当時のレートで約10億円)を調達、2007年には、ヒューレット・パッカードに会社を売却した。デザイン会社としては、例のない大成功である。

ロゴワークスから学ぶべきポイント

1. サービス型のビジネスもプロダクト型にする事が可能(発想の転換)

2. 仕事内容を標準化し、チームで仕事するのがポイント(脱個人依存)

3. 規模の経済を働かせコストが下げる。他社との価格競争に負けない。

まとめ

どうだろう?あなたのビジネスは、自分が気がつかないうちに、1件1件が特注のビジネスになっていないだろうか?デザイン会社でさえ、サービスの標準化を行い、会社を売却することが出来たのだから、あなたの事業も、売却可能な事業に変身させることが出来るのではないだろうか?


Photo Credit:NID Chick