演劇にもコンテンツマーケティング!低コストでお客さんを呼び込む4つの方法

コンテンツマーケティング
観客動員数を増やすことは、世界の演劇界や、舞台芸術一般に共通する課題だ。
これは小さな劇団にとって、かなりハードルの高いことであり、劇団がひしめき合う東京では、さらにハードルが上がる。演劇界は、もっと「演劇」そのものの認知度を上げ、今まで以上に、一般のお客さんを呼び込む努力も必要だ。
その課題解決の秘策となるのが、コンテンツマーケティングである。本記事では、ユニークなコンテンツをオンラインで提供することに成功した、海外カンパニーの事例を4つご紹介したい。
目次
事例その1:City Theatreの場合
City Theatreは、アメリカのピッツバーグ市にあるシアターカンパニー。新作を生み出すことに焦点を絞っていて、「今まで見たこともない作品を知ってもらう」のが、最大の課題である。
そこで、City Theatreがつくったのが、映画の予告のような動画だ。例として、こちらの「The Monster In The Hall」という作品の予告動画をご覧いただきたい。
City Theatreによる「The Monster In The Hall」の予告動画
Duckという十代の少女と、ちょっと変わった父親Dukeの1日を描いたお芝居らしい。しかし、この動画は、「芝居っぽい」イメージとは結びつかないのではないだろうか? それでいて、とても印象に残るスタイルになっている。
さらに動画の最後で、公演日程とチケット予約のための電話番号、サイトのURLが紹介されている。チケットの割引情報や、売り込みといったものは一切ない。
その理由は、宣伝のためのコンテンツではないからだ。City Theatreの目的は、「この芝居、面白そうだよ」と言って、ソーシャルメディアでシェアしてもらうことにあるのだ。
事例その2:National Theatreの場合
出典:National Theatreの「Discover More」ページ
イギリスのロンドンにある国立劇場、National Theatreは、公式サイトの「Discover More」で、豊富なコンテンツを提供している。特に圧巻なのが、非常に充実した動画ライブラリーだ。
動画は、全てカテゴリ分けされており、「演技」「演出」「照明」といったものから、「シェイクスピア」「ブレヒト」まで幅が広い。なかには、「小道具のつくり方」「かつらの保存方法」など、ユニークなものも。演劇を学びたい人はもちろん、そうでない人にとっても楽しめるコンテンツが揃っている。
また、演劇の先生や生徒が無料で利用できる、演劇教育のためのリソースを提供しているのも興味深い。作品別の資料パッケージ・アーティストたちへのインタビューを収録したポッドキャスト・デザイナーのスケッチなど、さまざまな資料が用意されている。
これらは全て、訪問者にとって役に立つ、価値の高いコンテンツだ。同時に、National Theatreが、「歴史あるカンパニー」であるというイメージを与えることにも貢献している。
事例その3:Courtyardの場合
次にご紹介するのは、イギリスのヘレフォードにあるCourtyardがプロデュースした、「アルゴ探検隊の大冒険」の事例だ。ギリシア神話のイアソンが率いるアルゴ船探検隊を描いた冒険もので、60年代に製作された映画の舞台版である。
この作品のプロモーションのためにつくられたコンテンツは、子ども向けのオンラインゲーム。矢印キーとスペースバーを使って、ガイコツの敵を矢で射っていくだけの、とてもシンプルなものだ。
このコンテンツの素晴らしいところは、まだ公演を観に行くかわからない人や、公演に興味を持っていない人でも惹きつけられること。公演情報は、プレーヤーの目に留まる部分に記されているので、ゲームを気に入った人が、SNSなどでシェアすれば、公演情報も自動的に広まるというわけだ。
ゲーム制作はそれなりに時間を要するため、この手法は、完全な新作の場合は難しいかもしれないが、広く知られた作品や、それをベースにしたものであれば応用できるだろう。例えば、シェイクスピアのような古典作品やアンデルセンの童話、「源氏物語」「西遊記」といった作品を原案としたものなどであればゲームをつくることができるだろう。
「ゲームをつくる技術も、プログラマーを雇うお金もない!」という劇団であれば、原作となっている作品に関するクイズを、コンテンツにしてみてはいかがだろうか? まとめて出題するのもいいし、1問ずつ、FacebookやTwitterに投稿するという手もあるだろう。
事例その4:Royal Courtの場合(予算のない劇団にもおすすめ!)
最後は、ロンドンのRoyal Courtによる「Routes」という、お芝居のプロモーションに使われたコンテンツ例をご紹介する。
「Routes」は、イギリスを舞台にした移民のお話。Royal Courtは、Twitterを使って公演やチケット情報だけでなく、「移民」に関係のある情報を配信していったのだ。ニュースや画像が見られるページを紹介するうちに、Royal Courtは、「移民」関連の情報源となっていく。
これは、とても賢いやり方である。演劇やRoyal Courtのファンだけでなく、「移民」という、題材に興味を持っている人たちの目にも留まるからである。もともとその題材に関心があるのだから、公演にも興味を持ってもらえる可能性は高い。
このようなコンテンツは、特に予算のない劇団におすすめしたい。お金がかからないし、必要なものは、SNSのアカウントと、リサーチをする少しの時間だけだ。稽古場で使う参考資料を、そのままSNSでも紹介するという手もあるだろう。
最後に
演劇にも、コンテンツマーケティングを取り入れられることがイメージできたのではないだろうか?
演劇に限らず、音楽やダンスなどの舞台芸術や、さまざまなイベントにおいても参考にできる部分はあるだろう。
既存のファンだけでなく、新しいお客さんに興味を持ってもらうためにもぜひ、コンテンツマーケティングを活用していただきたい。そして、クリエイティブなコンテンツを提供することで、どんどんファンを増やしていっていただければと思う。
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