「クチコミ時代」のブランドマネジメント

デジタルマーケティング

<p>先日ネット上で「1杯800円の水」がちょっとした話題となった。</p>
<p>メディアにも度々登場する、有名シェフが経営する高級レストランに来店した客が、クチコミサイトへの投稿で「勝手に水を入れられ800円取られた」と批判したことに対して、同シェフが反論。その反論内容が一部消費者の反感を買い、物議を醸したのだ。</p>
<p></p>
<p>「安いけど料理の提供が遅い」、「店員の態度が悪い」、「機能優先なら買い得」。。。</p>
<p>レストランならば「食べログ」、旅行情報なら「TripAdvisor」、家電なら「価格.com」。いま、これらクチコミサイトやソーシャルメディア上は上のような投稿で溢れかえっている。</p>
<p>広告により「ブランドイメージ」を容易に構築できた時代から、クチコミにより「イメージ」というベールをはがされ、あらゆる批評が瞬く間に拡がってしまう時代へ。</p>
<p>企業や商品・サービスのブランディングに関わる人々や経営者はこの「クチコミ時代」においてどうブランドマネジメントを行っていけばいいのだろうか?</p>
<h2>急激に増すクチコミサイトの存在感</h2>
<p>前出の米国Econsultancy社の調査によれば、</p>
<p>・84%の消費者が、ネットでの事前のリサーチやクチコミサイトでの情報を買い物の判断材料にする。 ・クチコミを読んだ消費者は、そうでない消費者に比べその商品を購入する割合が105%も多い。 ・商品購入前にクチコミサイトでの価格比較をスマートフォンから行う消費者は、直前の1年間に19%から43%に急増した。</p>
<p>という。</p>
<p>いまや、店頭に並ぶ商品を前にして、全世界の販売店を対象にした価格比較を行うことが消費者の常識になりつつある。</p>
<p>また、クチコミサイトは消費者にとってはあらゆる商品やサービスを購入前に疑似体験できる格好の場であり、企業にとっては自社商品・サービスに対するフィードバックを集める絶好の場だ。</p>
<p>従来はアンケートや購入者を集めてのインタビューなどでしか集める事のできなかったユーザーの生の声が、勝手に蓄積されていく。文字通り「宝の山」である。</p>
<p>その影響力は大きく、企業にとってはブランディングの大きな武器にもなりうる。クチコミサイトは消費者と企業を繋ぐコミュニケーションプラットフォームになりつつあるのだ。</p>
<p>しかし、企業にとっての「宝の山」も、時にはブランドイメージを著しく損なう危険性をはらんでいる—いわゆる「炎上」だ。</p>
<h2>コミュニケーション軽視がまねく「炎上」</h2>
<p>冒頭の「水800円騒動」だが、経緯を簡単にご紹介したい。</p>
<p>1.レストランで価格の説明をされずに注がれた水1杯に800円も取られた、と客がクチコミサイトに批判を投稿 2.同サイト上でユーザー同士の論争が起こる 3.著名人である同店シェフがその騒動に言及し「くだらない」「年収300万円、400万円の人が高級店に行って批判を書き込むこともあると思う」と発言 4.年収についての言及に「差別的だ」との批判が殺到</p>
<p>高級レストランがあえてメニューに金額を記載しなかったり、雰囲気を重視し、いちいち金額を確認せずにサービスを提供するということは、ままあることだ。同シェフも「高級店の暗黙のルール」といった表現をしている。</p>
<p>この問題の本質は「水が1杯800円」であることでも「提供時に800円という金額を説明しなかったこと」でもなく、<span class=”bold-text”>クチコミサイトというお店と顧客のコミュニケーションの場を軽視し、そこでの対応を誤った点</span>にある。</p>
<h2>「どう見せるか」ではなく「消費者にどう語ってもらえるか」</h2>
<p>ソーシャルメディアやクチコミサイト以前のブランドマネジメントとは、ブランディング戦略に則ったプロモーションキャンペーンやテレビCMなどを通して対象の「イメージ」を作り上げていくプロセスであった。</p>
<p>発信側が完全にコントロールすることができる広告をその主な手段として、「どう見られるかをマネジメントする」のがブランドマネジメントであった。</p>
<p>しかし、個人の発信力が拡大した結果、企業と消費者、もしくは消費者同士によるクチコミをはじめとしたコミュニケーションによって、ブランドの評価が下される時代へとシフトしてしまった。</p>
<p>当然ながら、クチコミはコントロールできない。この新しい時代のブランドマネジメントのカギは、<span class=”bold-text”>「どう見せるか」ではなく「消費者にどう語ってもらえるか」</span>ではないだろうか。</p>
<p>いかなる商品・サービスであっても、世の中の全ての人に好かれ、受け入れられることはあり得ない。商品・サービスにはその価値を伝えるべき「ターゲット」がいるからだ。</p>
<p>前述の高級レストランにとって、「1杯800円の水」を批判する顧客は「ターゲット」ではないのだろう。</p>
<p>しかし、その「ターゲット外」の顧客とのコミュニケーションをおろそかにし「どう語ってもらえるか」を軽視した結果が、瞬く間にクチコミとなって広がり、<span class=”bold-text”>本来のターゲットにまで波及してしまう</span>のが「新しいクチコミ時代」なのだ。</p>
<h2>「広告的発想」から、「PR的発想」へ</h2>
<p>では、消費者に好意的なクチコミを拡げてもらうにはどうしたらいいのだろうか?</p>
<p>そのヒントは、<span class=”bold-text”>広告的発想からPR(パブリック・リレーション)的発想</span>への転換にある。</p>
<p>広告という一方通行の手段に乗せて「見せたい姿」を発信していた従来のブランドマネジメントのアプローチから、よりコミュニケーションに重きを置くアプローチへ。</p>
<p>「誰のために、どんな価値と世界観を提供するのか」というブレないブランドの軸を、ソーシャルメディアを含めたより柔軟かつ積極的なコミュニケーションを通じて伝えていく。</p>
<p>商品・サービスに対する様々な意見や批判には、毅然とした態度と尊敬を持ってこれに対応する。そうやって重ねられるコミュニケーション1つ1つが、そのブランドを作っていくのだ。</p>
<p><span class=”bold-text”>「ブレない軸」を持ち、より積極的に消費者との好意的な関係性を作っていく。</span> これが、これからのブランドマネジメントの1つの形ではないだろうか。</p>
<p>参考元: ・<a href=”http://www.brandingstrategyinsider.com/2013/07/are-review-sites-the-new-brand-managers.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+BrandingStrategyInsider+%28Branding+Strategy+Insider%29#.Ug2RIpJ1uSr”>Are Review Sites The New Brand Managers?</a> ・<a href=”http://www.clearreturns.com/the-increasing-power-of-customer-reviews/”>THE INCREASING POWER OF CUSTOMER REVIEWS</a> Photo: Some rights reserved by <a href=”http://www.flickr.com/photos/ajc1/6735929719/sizes/m/in/photolist-bgepei-ehmRra-9PQhM2-c2WH2E-9kLEBb-9zMNnP-9aNLyT-8CRWDz-ehsA6U-bCuieN-bC2tkG-ehsA1d-bRN8QP-9bC9ja-9h4qjs-93HDTJ-9uUTQ3-aCkJ24-dC8vcX-9xYZkM-a2E7B8-aCiVcL-ckLyeh-dyZhYF-cowy5Y-buT7j3-9PosGH-9Posmg-9Pri3s-9PrhxQ-9PoqSg-bmyHwf-e6TaGB-dyKKqY-dyEgTV-dyKLUd-dyKCbC-dyKAPQ-9djCHD-cQZbq5-bchuov-9eD1qv-7XA9iX-8caf8k-8EqYsv-8Eu8zd-8EqYkH-9bX3qK-7DXBW7-9bG4EF-7zHnAD/”>AJC1, flickr</a></p>

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