ブランディングデザインがブランド構築に有用な理由

経営・ビジネスハック

ブランディングデザインとは、消費者やステークホルダーに対し、自社や製品・サービスのブランド・アイデンティティを認知してもらうために、情報を視覚化し発信するブランディング活動の1つです。

視覚情報で訴求するブランディングデザインは、多くの情報量を一度に、インパクトをもって発信することができ、かつ長く記憶に残すことができる特徴があります。自社のアイデンティティ、フィロソフィーやコンセプトをブランディングデザインに的確に落とし込めることができれば、最も効果的なブランドイメージの発信方法になり得ます。

ブランディングデザインの活動としては、特に米国企業が積極的な取り組みを実施しており、Facebook、Google、IBMといった大手IT企業がデザイン会社を買収したり、組織にCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)という役職を設置する企業も増えています。こういった動きからも、今後ますますブランディングデザインの重要性は高まっていくことが予測されます。

ここでは、ブランディングデザインの基本情報、ケース・スタディからその有用性を解説し、実務で使えるブランディングデザインの設計手順についてご紹介します。

 

 

ブランディングデザインの定義と目的

ブランディングデザインとは?

ブランディングデザインとは、企業自身や商品・サービスの、消費者やステークホルダーに認知して欲しいアイデンティティ、フィロソフィーやコンセプトを視覚的情報にして発信するブランディング活動です。

 

ブランディングデザインが視覚化されたものには下記のようなものが含まれます。

・ロゴ(シンボル、マーク)

・コーポレートカラー

・ウェブサイト

・動画、写真、インフォグラフィック

・パンフレット、ブローシャー、チラシ

・商品パッケージ

・会社案内、IRレポート、CSRレポート

・名刺、封筒

など

 

消費者やステークホルダーは、上記のような視覚情報を通して、企業や製品・サービスのアイデンティティを認知していきます。

 

ブランディングデザインの目的

ブランディング戦略における、ブランディングデザインの効果についてまず解説します。

 

実は、われわれ人間は、情報の87%を視覚から得ているという研究結果があります。かつ、視覚から得る情報は、人間の脳への伝達スピードが最も速く、強いインパクトを与え、記憶に長く残りやすいという特徴があります。

情報、商品、サービス、ビジネスが溢れる現代社会に身を置く消費者やステークホルダーにとって視覚的情報は、瞬時に情報の有用性が判断でき、情報収集ができるユーザビリティの高いコミュニケーションツールであること言えます。

また、視覚情報は、文章情報などと比較し、年齢や知識レベル、ネイティブ言語に囚われず情報を伝達することも可能です。 

視覚情報として発信されるブランドイメージは、消費者やステークホルダーの日々の生活の中で、ストレスなく自然と蓄積させていくことができ、これがブランド認知に繋がっていきます。消費者の購買や投資の動機となるブランド力を築き上げ、企業にポジティブな効果を生み出していくことがブランディングデザインの目的です。

 

 

ブランディングデザインの事例から学ぶブランド戦略

それでは、ブランディングデザインに力を入れてきた企業がどのような戦略や戦術を実施し、ブランディングに成功しているか、事例を基に解説します。

 

スターバックスのロゴ

スターバックスのロゴは、Siren(サイレン、もしくはセイレーン)という2つの尾を持つ人魚をモチーフにしています。Sirenは多くの漁師を魅了した人魚とされており、スターバックスの初代創業者は、美味しいコーヒーで多くの人を魅力したいという想いを込めてこのSirenを起用しました。第一号店であったシアトルは、港町で海との関係性が深いといったところもSirenがスターバックスの象徴としてロゴに採用された理由の1つです。

 

スターバックスは1971年の創業から4度のロゴ変更を実施しています。 

1971年 シアトル第一号店オープン コーヒー豆の販売を始める

1987年 手作りのエスプレッソを販売開始

1992年 上場

2011年 創立40週年。コーヒーショップ事業以外にも事業を拡張することを発表

 ブランディングデザイン_1.png 

出典:https://www.starbucks.com/preview

いずれも事業の変更や拡張となる経営戦略に大きな変更があったタイミングで実施されています。直近の2011年のロゴの変更では、スターバックスがコーヒー事業だけでなく、その他の事業にも幅広く展開していくためのブランディング戦略であることが公式にも発表されました。Sirenを取り囲む「Starbucks Coffee」のサークルを取り払ったことが、事業の拡張性を表現しています。

実際に、2011年以降は、コーヒーショップ事業だけでなく、日本では、一部の地域でアルコールを提供するNeighborhood and Coffee(ネイバーフッドアンドコーヒー)店舗を展開したり、2018年からStarbucksで使用しているマシーンや豆の貸出を行い、Starbucksの味を店外でも楽しめるサービスを開始、また、Starbucksショップの「第三の場所」以外のコミュニティ作りや社会貢献活動にも力を入れています。

 

スターバックスのロゴの変更は、消費者に大きなインパクトを与えたことを記憶しています。ブランドが認知されているブランドほど、ブランディングデザイン変更のインパクトは大きく、ネガティブな声も上がります。こういった反応から、ブランドを象徴するロゴは、消費者にブランドの「変化」に気づきを与える効果的なタッチポイントであることがわかります。スターバックスは、ブランディングデザインを通して、消費者やステークホルダーとの効果的なコミュニケーションに成功していると言えるでしょう。

 

 

SMX Search Marketing Expoのロゴ

SMX Search Marketing Expoとは、Third Door Mediaが運営するSEOやデジタルマーケティングの専門家による情報発信を目的とした、欧米を中心に定期開催されるカンファレンスです。CEOのダニー・サリバンは米国でのSEOエキスパートとして著名な人物で、SMXは認知度の高いカンファレンスとしてブランド化しています。

 

このロゴ変更を手がけたCOLUMN FIVEは、TOYOTA、Delloite、Nestle、SAPなどの多国籍企業をクライアントに持ち、各社のブランディングデザインを手がけています。

 

Search Marketing EXPOは、情報の流動性がもっとも高いと言えるデジタル業界を牽引するカンファレンスです。しかし、2007年に作られたSearch Marketing EXPOの旧ロゴは、イタリック(斜体)や使用している色彩パターンが、古めかしく時代を感じさせます。

ロゴ変更では、フォントと色彩パターン、ひと目で「SEO」を想起できるアイコンを追加するマイナーチェンジを行い、現代的なイメージに刷新しました。また、カンファレンスの開催場所によって、ロゴのカラーバリエーションを増やし、カンファレンス会場別のブランディングイメージを確立しています。

旧ロゴ

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新ロゴ (https://www.columnfivemedia.com/work-items/smx-search-marketing-expo-branding)

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米、サンノゼ

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米、ニューヨークシティ

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米、シアトル

 

具体的に明記はされていませんが、2016年から2017年の間でこのロゴ変更は実施されたようです。2017年には、創業者であるダニー・サリバンが退任し、相談役に就任するなど、経営戦略においてもターニングポイントとなった時期です。また、SEO業界を率いてきたダニー・サリバンというあまりにも強すぎるパーソナリティがもつブランドイメージからの脱却、飛躍といったメッセージにも受け取れます。

 

 

Googleのロゴ

Googleは、1998年創業から幾度かロゴ変更を実施してきています。直近では、2015年に実施され、ロゴ変更に込められたブランドデザイン戦略について、自社のサイト Google Design Blogでブランド戦略の詳細を公開しています。

https://design.google/library/evolving-google-identity/

 

2015年のロゴ変更には、「ウェアラブル、音声技術、スマートデバイスといった多様化する検索エンジンユーザーの環境の変化をとらえ、マルチディバイス、マルチスクリーンでアクセスしやすく、使い易い検索エンジンサービスとしてさらに成長していく」という意図が込められていると記載されています。

これまで、使用されていたセリフ体(明朝体のようなかしこまった書式)がサンセリフ体(ゴシック体のカジュアルな書式)に変更されました。これは、Googleがユーザーにとって身近で親しみのある存在であることを表現しています。また、スマートフォンのGoogle検索エンジンの画面は、更に見やすくシンプルな表示に変更されました。そして、今回はじめて「G」のみのロゴ(右)も発表されています。Googleを象徴する青、赤、緑、黄色が配色され、従来のイメージを踏襲し、かつ様々なディバイスに対応できるロゴです。まさにGoogleのミッションを落とし込んだブランディングデザインとなっています。

ブランディングデザイン_6.png

出典:https://design.google/library/evolving-google-identity/

真ん中はアクセス中や、補助的に使用するための動きのあるロゴ。

 

ブランディングデザインは、消費者を取り巻くあらゆる環境下で接点を持つことが可能です。Googleが実施したように、企業は、マルチディバイス、マルチスクリーンに対応したロゴやその他のブランディングデザインを検討していくことが必要です。

  

ブランディングデザインの制作の流れ

実際に、ブランディングデザインはどのようなプロセスを経て制作されているのでしょうか?ここでは、ブランディングデザインが完成するまでの大まかな流れをご紹介します。

 

1)    現在のブランドの立ち位置を確認する

企業ブランドや製品・サービスのブランドイメージがターゲットにどのように評価されているかを調査します。消費者を対象に行う消費者調査や、商品の市場規模や競合商品などを調査し、自社のポジショニングや市場の将来性を測定します。実際に、製品をテスト販売し、モニターからの反応を測定する実地調査などの方法もあります。

同時に、競合の市場における立ち位置も調査し、自社の立ち位置と比較することで、自社のブランド・アイデンティティの認識にも役立ちます。

 

2)    ブランド・アイデンティティを視覚化するキーワード探し

自社の企業理念や製品・サービスのコンセプトを視覚的なイメージに落とし込むために、「アイディエーション」などの手法を使ってキーワードを探していきます。

はじめに、企業理念やコンセプト、製品やサービスから発信したいアイデンティティに関連するキーワードをできる限り出し合います。これが、視覚的イメージを生みだすヒントになります。アイディエーションは、質より量を重視し、人の意見に否定をしないことがルールです。全てのアイディアをポストイットに書き出し、ホワイトボードに張り出して共有したり、ホワイトボードにランダムに書き出して行きます。この、「文字を視覚的」に捉えることが視覚情報に落とし込むための重要なプロセスになります。どういったキーワードがブランドイメージに近しいものかを、チームやチーム外の従業員、経営層を交えて議論し、3つから5つほど選定していきます。

 

3)デザインの制作

上記で選定された主要キーワードを基に、ロゴや色彩、フォントやイコノグラフィー、画像、サイトや紙媒体のレイアウトなどを決めていきます。キーワードのイメージにマッチする画像や素材を取り集め、ブランドデザインのヒントになる視覚情報を収集します。次に、収集した全ての視覚素材を、また視覚的に把握できるようにホワイトボードなどに張り出します。前行程で実施したキーワードと、視覚素材にずれがないかを確認しながらブランドデザインのイメージ化を進めていきます。

制作をプロのデザイナーやデザイン会社に外注する場合、ここまでのプロセスを共有し、イメージのすり合わせを綿密に実施していくことで、企業側が発信したいイメージとデザイナーの生みだすイメージの整合性が実現します。

 

4)ブランドのスタイルガイドを作成

確立されたブランドデザインを、一貫性を持って発信することがブランド戦略においては重要です。そのために必要な取扱説明書が、スタイルガイドです。これは社内のみならず社外、外注先にも共有するもので、ロゴの使用方法、色彩の色味の指定、フォントの種類の指定や、実際にサイト上で使用する場合の、サンプルページなどを交え、ブランディングデザインを正しく使用してもらうことを目的としています。

 

まとめ

ブランディングデザインは、消費者やステークホルダーにとって印象に残りやすく、ユーザビリティの高いコミュニケーションツールです。ブランドイメージをさまざまな視覚情報に落とし込み、発信することで、定期的なタッチポイントが実現し、ブランド認知を高めやすい手法の1つです。

自社のフィロソフィーや、製品やサービスのアイデンティティをデザインに的確に落とし込むことで、ブランド戦略を戦略的かつ効果的に実現することが可能です。

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