「女性らしさ」を再定義する、OLAY(オレイ)の時代に合わせたブランディングとは?

コンテンツマーケティング
「女性らしい」
よく使われるフレーズだが、実に抽象的である。女性らしい言葉遣い、女性らしい仕草、女性らしい服装。こう言われて、人々が頭の中で描くイメージは十人十色で、決して同じではない。
そして、こういったイメージは、その時代の特色や社会での女性の役割とともに、変化を遂げていることを忘れてはならない。社会に出る機会の少なかった時代の女性と現代の女性を比較すると、周りが抱くイメージが違うのはもちろんだが、女性自身が持つ「女性らしさ」のイメージや「こうありたい」という願いも違うのは当然。
今日は、「女性らしさ」を作り上げるのに欠かせない存在である化粧品業界から、60年以上にわたり成功を収めてきたOLAY(オレイ)に焦点を当ててみたい。
「妻のために作ったクリーム」が、なぜ世界中の女性に愛され続けているのか。その秘密は、時代に合わせて柔軟に変化するブランディングにあるのだ。
OLAYは1人の女性への愛から始まった
世界中にファンをもつOLAYだが、実は最初に作られた製品は、設立者のグラハム・ワルフ氏が愛する妻のために特別に開発したクリームである。
戦後の1950年代、市場で売られていたクリームはワックスのように伸びの悪い厚塗りしかできないもので、その油っぽさは「フェミニン」という言葉とは程遠いものだった。
妻を満足させてハッピーにするために必要なのは保湿機能ではなく、彼女が自分を美しい・フェミニンだと感じることができる製品だと感じたグラハムは、スムーズに伸びるだけでなく、香りが良くて女性らしいピンクのクリームを開発したのである。
大切な人のために、ニーズに合った製品を作りたい。それによって幸せになってほしい。
これこそが、全ての企業が忘れてはならない初心であり、ブランドとして成功するために忘れてはならない精神ではないだろうか。
時代とともに舵の方向修正を忘れずに
1970年代までのOLAYは、自社商品を世間一般が考える「女性らしさ」に近づける商品としてプロモートしていた。この時代の女性はどちらかというと受け身で、自分のための美しさよりも、他人に「美しい」と思ってもらえることに価値を置いていた。
しかし1980年代になり、ナチュラル・ビューティーに関する関心が高まってきたことで、OLAYはこれからの化粧品の方向性に変化が起こることを察知。「化粧をしないナチュラルな状態でも美しい=自分の素肌に自信がある」ことを念頭に、アンチ・エイジング用商品の開発やマーケティングに力を注ぐようになった。
「“女性らしい”には、外側の美しさだけでなく、内側からあふれだす自信が生み出す美しさも含まれる」「いくつになっても美しくありたい」
そういった現在の女性のニーズに合わせて、ブランドという船の舵をとりながら、目的地に無事たどり着けるように方向修正を行う。
それがきちんとできれば、「目的地に向かっているつもりが、気が付いたら反対の果てに向かっていた……」という取り返しのつかない失敗を防げるのである。
ブランド名の変更をポジティブにつなげる
Olayが設立当時の「Oil of OLAY」というブランド名から、ブランドの象徴であった「Oil of」を取り去ったのは2000年のこと。これからの時代の女性が求める化粧品に、油っぽい重たげなイメージは似合わないとの判断からである。
すでに世界的に認知度の高かったブランド名を、新しいイメージでのブランディングの一貫として変更する勇気。簡単であるように思えるが、なかなか思い切って実行できないのが実情だろう。
では、なぜOLAYはこの変更に踏み切ったのか。その自信はどこから来たのだろうか……。OLAYのオフィシャルサイトに記載されているフレーズがその根底にあるものを語ってくれる。
「OLAYは、世界で最も有名なブランドの1つとして成長を遂げました。しかし、様々な変化と革新を遂げてきた今も、設立者グラハム・ワルフが持っていた哲学は不変です。“女性を美しく見せ、自分自身を美しいと感じさせる”、これが成功のためのフォーミュラなのです。」
ブランドとしての根底がしっかりしているからこそ沸いてくる自信。そして、現代の女性が「美しい」と感じるものが変化したという時代の流れをキャッチする鋭い感覚と、ニーズに合わせて進化することを拒まない柔軟さ。
この3つが潔いマーケティングにつながるのだろう。
ブランドとしての最終目的に向かって
いかがだっただろう。たった1人の女性のために作られた製品が、世界中の女性に愛されるトップ・ブランドへと成長したのは、決して「運」ではなかったのがおわかりいただけただろうか。
企業として忘れてはならない、「顧客を幸せにできる製品」を生み出すことの重要さ。そして、ブランディングを行ううえで忘れてはならない、「ブランドとは時代とともに成長するべき」という柔軟性。
この2つを組み合わせた、絶妙な公式を見つけることができたからである。
ブランドとしてのプライドや譲れないものがあるのは当然だ。しかし、それに囚われすぎたために最終目的地を見失ってしまったら元も子もない。そのことを忘れないでほしい。
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