はじめに
baser cmsは、日本で開発されたオープンソースのコンテンツマネジメントシステム(CMS)です。シンプルで直感的な操作性と、コーポレートサイトに特化した機能を持つことが特徴です。
本記事では、baser cmsの特徴や機能を詳しく解説するとともに、WordPress、HubSpotなど他のCMSとの比較も行います。baser cmsの魅力と将来性について、多角的に分析してみましょう。
baser cmsとは?
baser cmsは、PHPのフレームワーク「CakePHP」をベースに開発された、国産のオープンソースCMSです。無料で利用でき、Webサイトの構造をツリー形式で直感的に管理できます。メールフォームやブログ機能など、Webサイトに必要な基本機能が最初から備わっているため、導入後すぐにサイト制作を始められるのも大きな特徴です。
CMS名 | 知名度 | 使いやすさ | 汎用性 | 専門性 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|---|
baserCMS | ★★ | ★★★ | ★★★ | 一般 | - |
WordPress | ★★★ | ★★ | ★★★ | 一般 | 万能タイプ |
Joomla! | ★★ | ★★ | ★★★ | 専門 | 規模の大きい組織向け |
Drupal | ★★ | ★★ | ★★★ | 専門 | 規模の大きい組織向け |
concrete5 | ★★ | ★★★ | ★★ | 一般 | デザインが定評 |
MODX | ★ | ★★ | ★★★ | 一般 | デザインが定評 |
Movable Type | ★★★ | ★★★ | ★★★ | 一般 | 個人無償ライセンスあり |
EC-CUBE | ★★★ | ★★★ | ★ | 一般 | ECに特化、日本製 |
OpenPNE | ★ | ★★★ | ★ | 一般 | SNSに特化、日本製 |
Moodle | ★ | ★★ | ★ | やや専門 | eラーニングに特化 |
凡例:
知名度・使いやすさ・汎用性: ★が多いほど高評価
専門性: 一般向けかある分野に特化しているか
初心者にも扱いやすく、大規模サイトにも対応できる柔軟性の高さが、baser cmsの魅力と言えるでしょう。
baser cmsの主要機能
baser cmsには、Webサイトの制作・運営に必要な機能が豊富に用意されています。主要な機能は以下の通りです。
- ツリー構造でのサイト管理
- ドラッグ&ドロップでの直感的な操作
- ブログ、メールフォーム、フィード読み込みなどの標準機能
- エイリアス機能による複数URLでのコンテンツ公開
- リンク機能による柔軟な内部リンク構造の構築
- プラグインによる機能拡張
特に、エイリアス機能とリンク機能の充実度は高く評価されています。これらの機能により、複雑な構造のサイトも柔軟に構築できます。
baser cmsのメリット
シンプルで直感的な操作性
baser cmsの最大の魅力は、シンプルで使いやすいユーザーインターフェースです。ドラッグ&ドロップ操作を始めとした直感的な操作性により、CMSの専門知識がない方でも容易に扱うことができます。
例えば、コンテンツのツリー構造をマウス操作で自在に変更できたり、テンプレートの編集画面で直接HTMLを書き換えられたりと、視覚的でわかりやすい操作が可能です。この使いやすさが、baser cmsが特にWeb制作の初心者に支持される理由の一つとなっています。
高いカスタマイズ性とメンテナンス性
baser cmsは、オープンソースのPHPフレームワーク「CakePHP」をベースに開発されています。その恩恵として、エンジニアにとっての高いカスタマイズ性を誇ります。
実際、baser cmsでは、デザインテーマの作成やAPIとの連携など、様々なカスタマイズが可能です。例えば、あるユーザーは、baser cmsとGoogle MapのAPIを連携させ、店舗検索機能を持ったWebサイトを構築したそうです。このように、baser cmsは開発者の創意工夫の自由度が高いCMSだと言えるでしょう。
また、モジュール構造による部品の入れ替えのしやすさも、baser cmsの大きな特長です。機能追加や改修の際に、システム全体に影響を及ぼすことなく部分的な変更で済むため、メンテナンス性に優れているのです。
充実の日本語サポート
日本製ツールならではの手厚いサポートも、baser cmsの魅力の一つです。公式サイトの充実した日本語ドキュメントに加え、ユーザーコミュニティ「baserCMSサポーターズ」での活発な情報共有が行われています。
海外製のCMSでは、日本語情報が限られていたり、日本の法制度に即さない部分があったりと、サポート面で不安を感じることがあります。しかし、baser cmsなら、そうした心配は無用です。
加えて、baser cmsの開発チームは、ユーザーの声を積極的に取り入れる姿勢を持っています。baserCMSサポーターズには開発者も参加しており、ユーザーと直接対話をしながらニーズの把握と改善に努めています。この開発姿勢もまた、baser cmsの大きな強みと言えるでしょう。
セキュリティ面の安心感
オープンソースのCMSは、ソースコードが公開されているが故に、脆弱性を狙った攻撃のターゲットになりやすいと言われています。しかし、baser cmsは、この点についても十分な対策を講じています。
先述の通り、baser cmsではクラウド型脆弱性検査ツール「VAddy」を活用しています。定期的な脆弱性チェックにより、潜在的なリスクの早期発見と対処が可能になっています。
さらに、脆弱性が発見された際の対応の速さも、baser cmsの安心感を支えています。日本国内の開発チームとコミュニティによる迅速なパッチの提供と、ユーザーへの告知が、被害を最小限に食い止める効果的な防波堤となっているのです。
豊富な導入実績
baser cmsは、すでに多くの企業に導入されており、豊富な実績を持っています。
例えば、飲食チェーン店のメニューサイト、学習塾の講座案内サイト、社会保険労務士事務所のコーポレートサイトなど、多種多様な業種・業態でbaser cmsが活用されています。
導入企業からは、「デザインの更新が簡単にできるようになった」「ページ増設の際も、スムーズに対応できた」など、運用面でのメリットを評価する声が多く聞かれます。
中でも、中小企業においてbaser cmsが支持されているのが特徴的です。初期費用を抑えつつ、自社でサイトを運営できる点が、中小企業のニーズにマッチしているのでしょう。
こうした導入実績の蓄積は、baser cmsの信頼性の裏付けとなっています。多くの企業に選ばれ続けているという事実が、baser cmsの実践的な使いやすさを物語っていると言えます。
baser cmsのデメリット
他CMSに比べた普及率の低さ
baser cmsのデメリットとして、他のCMSに比べた場合の普及率の低さが挙げられます。
例えば、世界的に見ると、WordPressのシェアがダントツに高く、Drupalも一定の地位を確立しています。一方、baser cmsのシェアは、グローバル市場ではまだマイナーな部類に入ります。
普及率の低さは、プラグインや情報量の少なさにもつながります。baser cms向けのプラグインの数は、WordPressなどと比べるとまだ限定的です。また、Web上で見つかるbaser cmsに関する情報も、他のメジャーCMSほど多くはありません。
ただ、ここで留意したいのは、baser cmsが「日本市場に特化したCMS」であるという点です。グローバルでの知名度はさておき、日本国内では着実にユーザーを増やしています。
日本語情報の豊富さでは、baser cmsは他の追随を許しません。言語の壁を気にせず、自分たちに最適化されたCMSを使いたいという日本企業のニーズを、的確に捉えているのです。
機能面での制約
また、baser cmsは、標準機能がシンプルな分、機能面での制約があるとも言えます。
例えば、WordPressには、ユーザー権限の細かな設定や、投稿記事へのアクセス制御など、よりきめ細やかな管理機能が備わっています。EC機能など、baser cmsに標準で搭載されていない機能もあります。
この点については、baser cmsの「シンプルさ」という設計思想に起因するところが大きいでしょう。あくまで、基本的なWebサイト構築に必要十分な機能を持ったCMSであることに徹しているのです。
より高度な機能を求めるユーザーにとっては、物足りなさを感じる部分があるかもしれません。ただ、それはbaser cmsの欠点というよりは、ツールの選択における適性の問題と捉えるべきでしょう。
必要な機能をあらかじめ見定めた上で、自社に最適なCMSを選ぶことが肝要だと言えます。
他CMSとの比較
ここで、baser cmsと他のCMSとの比較を見てみましょう。比較対象は、WordPress、HubSpot、Drupalの3つです。
baser cms | WordPress | HubSpot | Drupal | |
---|---|---|---|---|
オープンソース | ◯ | ◯ | × | ◯ |
無料プラン | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
国産 | ◯ | × | × | × |
得意分野 | コーポレートサイト | ブログ・メディア | マーケティング | 大規模サイト |
使いやすさ | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
カスタマイズ性 | ◎ | ◯ | △ | ◎ |
プラグイン数 | △ | ◎ | ◯ | ◯ |
導入実績 | ○ | ◎ | ○ | ○ |
この比較表から分かるのは、baser cmsがコーポレートサイト特化型のCMSとして、独自の強みを持っているということです。
特に注目したいのが、baser cmsとWordPressの違いです。WordPressが幅広い用途で使われているのに対し、baser cmsはコーポレートサイトに照準を絞っています。そのため、コーポレートサイトに必要な基本機能が最初から揃っており、シンプルな操作で運用できるのです。
また、カスタマイズ性の高さも、baser cmsの大きな強みだと言えます。CakePHPベースのシステム構造により、エンジニアにとって扱いやすく、様々な改変が可能になっています。
一方、HubSpotはマーケティング特化型のCMSであり、baser cmsとは棲み分けができていると言えるでしょう。
ヘッドレス対応
baser cmsの新しいバージョン5では、ヘッドレス対応が行われました。これにより、従来のWebサイト構築だけでなく、データAPIプラットフォームとしても利用できるようになっています。
ヘッドレス化の仕組みとして、外部のアプリケーションよりアクセス可能なREST APIが備わりました。認証にはセキュアなJWTを採用し、安全な通信が実現できます。REST APIを利用することで、マルチデバイスへの対応も可能となっています。
さらに、カスタムコンテンツ機能の追加により、ノーコードでオリジナルコンテンツのフィールドを定義し、管理機能とフロントエンドに表示するための仕組みが提供されるようになりました。
こうしたヘッドレス化への対応により、baser cmsの適用範囲が大きく広がったと言えるでしょう。従来のCMSの枠を超え、より柔軟なデジタルエクスペリエンスの構築が可能になっています。
baser cmsの利用シーン
baser cmsは、幅広い利用シーンで活躍するCMSです。特に以下のようなWebサイトの構築に適しています。
- 中小企業のコーポレートサイト
- 店舗や施設の紹介サイト
- 学校やNPOの情報発信サイト
- 個人事業主のポートフォリオサイト
これらのサイトに共通するのは、情報発信とブランディングを主目的としている点です。華美な機能は必要なく、シンプルで分かりやすいサイト構成が求められます。
そうしたニーズに、baser cmsのシンプルで直感的な操作性がマッチするのです。Web制作の専門知識がない方でも、見栄えの良いサイトを構築できるでしょう。
また、カスタマイズ性の高さを活かせば、業種特有の機能を付加することも可能です。社内の情報システム部門と連携しながら、自社に最適化したサイトを作り上げていくこともできるでしょう。
さらに、ヘッドレス対応により、Webサイトだけでなく、スマートフォンアプリやIoTデバイスとの連携も視野に入ってきます。baser cmsをデータの中心に据えることで、様々なチャネルでのシームレスな顧客体験の提供が可能になるのです。
baserCMSサポーターズの強み
先述の通り、baser cmsには公式のユーザーコミュニティ「baserCMSサポーターズ」があります。このコミュニティの存在は、baser cmsを選ぶ大きな理由の一つと言えるでしょう。
baserCMSサポーターズでは、日本語での活発なコミュニケーションが行われています。海外製のCMSでは、言語の壁が問題になることがありますが、baser cmsなら、そうした心配はありません。
また、baserCMSサポーターズでは、開発チームと直接コミュニケーションを取ることもできます。ユーザーの声が直接開発に反映されるため、より使いやすいCMSへと成長していきます。
こうしたコミュニティの存在は、オープンソースソフトウェアならではの強みと言えます。ユーザーとの距離が近いからこそ、ニーズに即した改善が可能になるのです。
baser cmsの事例紹介
baser cmsは、様々な業種・業態のWebサイトで活用されています。ここでは、具体的な導入事例をいくつか紹介しましょう。
事例1:福岡工業大学様
「本気のキミを応援する。」福岡工業大学のオフィシャルサイト。大学ならではの複雑な動的ナビゲーションをbaserCMSのコンテンツ管理機能を利用して実現されています。
事例2:グッディ商品検索様
北部九州を中心に成長を続けるホームセンターグッディの商品検索機能。数十万点の商品を日本語検索に対応するため、Amazon CloudSearch と連携されています。
事例3:吉野家公式通販ショップ様
吉野家店舗でおなじみの牛丼から、通販ショップでしか購入できない商品まで多数取り揃えている吉野家の通販サイト。baserCMSをアンダス社提供のECカート「スマイルツールズ」とAPI連携されています。
事例4:infoQ様
スキマ時間に答えたアンケートで、社会が変わるサイト!?infoQとは、GMOリサーチが運営する会員数70万人のアンケートサイトです。基盤システムにbaserCMSを利用し、アジア圏の各国に横展開できるよう、APIを整備されています。
以上、baser cmsの導入事例を見てきました。大学の公式サイトからECサイト、大規模なアンケートサイトまで、様々なシーンでbaser cmsが活用されていることがわかります。
以上、baser cmsの導入事例を見てきました。シンプルなコーポレートサイトから、会員管理機能を備えた大規模サイトまで、様々なニーズに応えられるのがbaser cmsの強みだと言えるでしょう。
まとめ
本記事では、国産CMS「baser cms」の特徴と魅力について詳しく解説してきました。
使いやすさとカスタマイズ性の高さ、充実した日本語サポート、セキュアな運用環境など、baser cmsにはコーポレートサイト構築に適した多くの強みがあります。
加えて、活発なユーザーコミュニティの存在も、baser cmsの大きな魅力の一つです。ユーザー同士の助け合いにより、CMSの活用の幅が大きく広がっていきます。
導入事例を見ても、様々な業種・業態のWebサイトでbaser cmsが活躍していることがわかります。シンプルなコーポレートサイトから、高度な機能を備えた大規模サイトまで、幅広いニーズに応えられるのがbaser cmsの強みだと言えるでしょう。
今後は、ヘッドレス化への対応により、baser cmsの適用範囲がさらに広がっていくことが期待されます。Webサイトの枠を超え、多様なチャネルでのデジタル体験の提供が可能になるでしょう。
こうした先進的な取り組みを進めつつ、「シンプルで使いやすいCMS」という本質的な価値を磨き続けることが、baser cmsの将来の発展のカギを握っていると言えます。
Webサイトの構築を検討されている方は、ぜひbaser cmsの導入を検討してみてはいかがでしょうか。使いやすく、柔軟性の高いこのCMSが、あなたのWebサイト運営をパワフルにサポートしてくれるはずです。
参考情報
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