“協創”がキーワード!企業とお客さんの信頼関係を作るコンテンツマーケティングのコツ!

コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングを成功させるには、ブログやソーシャルメディアを使って付加価値の高いコンテンツをどうやって継続的に提供していけるかが鍵となる。しかし、付加価値の高いコンテンツを毎回提供していくのは、企業側にとっても負担になりやすく、ましてや結果が出るまで続けるのは容易なことではない。
しかしながら、もし自分たちのお客さんが熱心なファンとして企業のコンテンツ作りに参加してくれたとしたらどうだろうか? コンテンツを作りそれを発表するためのプラットフォームを企業側が用意してあげることで、ファンが自発的にコンテンツを制作して拡散してくれるのだ。例えは悪いが、お客さんが企業のビジョンや哲学に“感染”して、それを媒介して次々に“伝染”させてくれるのである。 今回は、ある一つのコンセプトを企業と消費者が共有することで、インタラクティブかつ良好な関係が両者の間に生まれ、そのコンセプトを中心に両者がコンテンツを“協創”することで大成功に至った自動車メーカーのマツダのコンテンツマーケティング成功例をご紹介したい。
“走る喜び”を共有するコミュニティ作り
マツダはいわずと知れた世界的な自動車メーカーだ。日本はもとより、ドイツやイギリスなどのヨーロッパ諸国、オーストラリアでも高い人気を誇っている。同社のブランド哲学は、自動車開発からマーケティング戦略に至るまで全てが“Zoom-Zoom”というコンセプトによって統一されている。”Zoom-Zoom”とは、日本語で車が走る様子を表す「ブーブー」に対応する英語の幼児言葉であり、同社が提供する走る喜びを端的かつ直観的に表す言葉なのだ。そして同社はこの”Zoom-Zoom”が、Stylish(カッコいい)、Insightful(創意にあふれる)、Spirited(はつらつとしたエネルギー)の3つの要素から成り立つと定義した。 そこでこの3つの要素を体現したWebサイトを作り、自動車に乗って“走る喜び”をユーザーと共有出来るコンテンツ作りを目指したのである。
Webサイト上にコミュニティページを設置
同社はユーザーとの間の交流を促進するため、同社の公式ホームページ上にコミュニティページを設置したのである。コミュニティページでは同社が起用したマツダ車の魅力を発信する広告塔(通称アンバサダー)のプロフィール、レビューコーナー、専門家に質問!コーナーなど様々なコンテンツが用意されている。
・“Zoom-Zoom”の感動を大人になっても忘れない様々な分野の著名人がアンバサダーとして登場し、“走る喜び”を共有するコミュニティの中で中心的な役割を担っている。
同社のホームページにはアンバサダーのプロフィールが掲載されている。
・「専門家に聞け!」のコーナーでは、同社の歴史やエンジン、車の性能といったユーザーから寄せられた幅広いテーマの質問に同社の専門家が丁寧に回答している。このように企業の中の人が積極的に一般の消費者と接点を持つことで、同社に親近感を覚えてもらうことに一役買っているのである。
・レビューページでは、外部の自動車レビューサイトに掲載されている一般ユーザーによって書かれた同社の自動車のレビュー記事を閲覧することが出来る。インテリアデザインや性能、乗り心地といった項目ごとに詳細なレビューが書かれており、同社の自動車の購入を検討する際の参考にすることが出来る。
・クラブページでは同社自動車の愛好家たちが結成するオーナーズクラブのページが多数掲載されており、彼らの活動内容やイベント開催の予定について知ることができる。
・メディアギャラリーでは同社のテレビコマーシャルやユーザーが制作した動画が多数アップされており、躍動感のある動画を見て実際に“Zoom-Zoom”の疾走感を味わうことが出来る。
同社のホームページにはウェブマガジンも掲載されている。
・同社のWebサイトは、スマホなどのモバイル機器での閲覧にいち早く対応し、スマホ版のWebサイトでは、モバイルユーザーにとって関心の高い機能だけを抽出した簡潔で優れたユーザーエクスペリエンスを提供している。
ソーシャルメディアの徹底的な活用
同社はコンテンツマーケティングにおけるソーシャルメディアの重要性を早くから十分に意識してきた。その証拠に同社は、フェイスブック、ツイッターやユーチューブ、フリッカーといった多様なソーシャルメディアのチャネルを持ち活発に情報発信をしている。
・同社のウェブページ上には、同社のツイッターアカウントのタイムラインが直接表示されており、ホームページを訪れた人は同社とユーザーの双方向のやりとりをリアルタイムで見ることが出来る。
同社のツイッターページ。タイムライン上でユーザーと活発にやりとりしている。
・同社のフェイスブックページでは実に58000人を上回る人が“イイね!”ボタンを押しており、新車発表会の様子や同社が開催したイベントの様子が多数掲載されており、非常に多くの人がその投稿をシェアしたりコメントを残したりしている。
・同社のフリッカーページ上では、ユーザーが様々なシーンで撮影した同社の自動車の写真が掲載されている。また、ここで掲載された画像を同社は積極的に自社の公式ホームページにも使用しており、自分の撮影した写真を公式ページで使ってほしいユーザーが積極的に投稿して活況を呈している。
同社の公式フリッカーページにはユーザーが撮影したたくさんの写真が掲載されている。
企業がユーザーとコンテンツを「協創」するという挑戦
従来、企業のマーケティング担当者は情報発信の主導権を消費者に渡すことを恐れてきた。企業が発信したい情報がミスリードされて誤ったイメージが社会に発信されかねないからだ。そういったリスクを覚悟の上で同社は一般の消費者との間の垣根を取り払う努力を重ねてきた。
・同社のウェブページ上に設置されているツイッターのタイムラインでは、常にお客さんとのやりとりが表示されており、同社のホームページに訪れた人はいつでもそれを閲覧できる。 ・レビューページに掲載されている同社製の車の写真をクリックすると、外部のレビューサイトにリンクされ、そこでその車についてユーザーが書いたレビューを閲覧できる。
・クラブページでは、同社とは直接関係のないユーザーの私的ページへのリンクが掲載されていて、愛好会の活動について知ることが出来る。
このように、ツイッターやレビュー上で同社の信用を損ねるような情報が書き込まれ、同社の利益を著しく損なう可能性があるにも関わらず、”Zoom-Zoom”という一つの哲学によって結ばれたコミュニティを信じることで、あえてユーザーにも発言の余地を与え対等な関係を築こうとしたのである。こういった努力によりますます企業と消費者の交流が活性化し、様々なコンテンツが生まれて結果的に企業のブランド価値を高めることとなったのである。
“協創”によりコンテンツが無限に生まれる
・同社のコンテンツマーケティング戦略でとても斬新だったのは、同社が自社のウェブページをプラットフォーム化してしまったことだ。つまり、従来の大企業のホームページのように企業の情報をパンフレットのように一方的に流すのではなく、ソーシャルメディアなどを駆使して双方向性を持たせることで、そこを中心にユーザーたちの様々なコミュニティが自発的に出来上がったのである。
・同社と消費者が“Zoom-Zoom”という一つの統一されたコンセプトでつながることで、その体験を共有したいユーザーたちがコンテンツを制作しそれがまた企業のウェブページを通して発信されるという正のスパイラルが構築された。こうすることで、同社のウェブページやソーシャルメディア上のコンテンツが自己増殖的に増えていき、そして“Zoom-Zoom”を体験したユーザーが今度は別のお客さんへその体験を伝えることで、マツダの哲学がバイラルに拡散していくことになったのだ。
こうして企業と消費者の間に健全で長期的な信頼関係が構築された結果、ついにマツダはオーストラリア市場において2011年3月期の決算で過去10年の内最高の販売台数とシェアを獲得したのである。
このケースで学べること
いかがだっただろうか? 企業と消費者の間に長期的な信頼関係を築くことの重要性が分かって頂けたのではないだろうか? 企業と消費者の関係も恋愛と同じで一朝一夕にはいかないのである。ゆっくりと時間をかけてお互いの信頼関係を醸成していかなければならない。そのかわり一度信頼関係が築かれればあとはお客さんが自然に企業のビジョンや哲学を伝える伝道師になってくれるのである。決してすぐに結果を出そうとして焦ってはならない。思う存分あなたのストーリーやビジョンをお客さんに伝えていこう。必ずやあなたの話に耳を傾け応援し続けてくれる心強いファンが見つかるはずだ。
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