Facebook10億ユーザー達成の秘密とは?

コンテンツマーケティング

Facebookのユーザー数が8月頃には10億人を突破すると見られている。これは、国の人口に例えるならば、中国の13億人、インドの12億人についで大きい数字という事になる。この驚異的なユーザー数を達成するのに貢献しているのが、Facebook社内でユーザー数の増加を専門に担当する、「ユーザーグロースチーム(User Growth Team )」である。彼らがFacebook内でどのような役割を担っているのか、とても気になる所だが、Q&AサイトのQuoraに参考になる投稿があったので紹介したい。

Facebookユーザーグロースチームの役割は何か?彼らはどのような成果を挙げているのか?

Quoraに投稿された上記質問に対して、2010年7月までFacebookユーザーグロースチームに携わたアンディ・ジョーンズ氏が答えている。 以下、Quoraより引用

ユーザーグロースチームの仕事は、毎月のアクティブユーザーを10億人以上まで増やす方法を探し出すことでした。これだけがチームの唯一の目標だったわけではありませんが、長年にわたっての最も大きな目標はこれでした。

もちろん、Facebookのアクティブユーザーが現在毎月9億人以上にのぼるのは、グロースチーム単独の成果というわけではありません。社員全員が何らかの形でユーザーグロースに貢献していますが、しかしユーザーグロースチームは特に、Facebookが更なる成長を遂げるために全社的に何をして行くべきか、そのマイルストーンを作り上げる役割を負っていました。

ユーザーグロースチームの決定はFacebook社が提供する全てのサービスに反映され、その影響力は絶大です。以下、彼らが担っていた専門的な役割の概要について説明します。

 

• 分析/データサイエンス

ユーザーグロースチームの仕事を一言で説明すれば、膨大な量のデータと向き合い、テストと微調整、そして解析を繰り返すこと、と言えるでしょう。ユーザーグロースチームは常にデータサイエンスチームと共同で作業します。目的は、どの要素がユーザー数を増やすドライバーとなるのかを探り当てることで、そのためにグロースチームとデータサイエンスチームが協力して、仮説を作り、アクセスログを検証し、データを解析し、指標を改善するためのテストを行い、テストの結果を測定して、という一連のプロセスを繰り返します。

• ダイレクト・アクイジション・マーケティング

ユーザーグロースチーム内に、SEOやリスティング広告、Eメールマーケティング等、インターネット・マーケティングを専門に扱うチームがあります。彼らは、ユーザーと広告主の確保、そして一度確保したユーザー及び広告主をリピートさせ定着させるという仕事をしています。

• プロダクトデベロップメント

ユーザーグロースチームは、Facebook上の各サービスの中で、ユーザー数を増やすためにキーとなりそうな部分に常に介入して行きます。例を挙げれば、ユーザーがログアウトした状態で表示するページ(通称ログアウトページ、新規ユーザーの獲得チャネルとして重要」、新規ユーザーへの画面フロー、新規会員登録のフロー、ログインのフロー、A/Bテストを活用したサイト上のコンテンツの最適化を行います。、ユーザーグロースチームはFacebook上の全てのサービス(モバイルサイト、モバイルアプリ、プラットフォーム、クレジットを含む)に関わり、全てのサービスに彼らの意見が何らかの形で反映されていると考えて良いと思います。新サービスのパイロット版を開発することもあれば、他のチームが開発したサービスの改良に関わることもあります。

• Faceboookカルチャーを作る

Facebookで働く全社員が、常に「成長を目指す」という意識を持っています。そのための風土作りもユーザーグロースチームの大切な役割でした。社内には、定量的な目標を持つチームと、定性的な目標を持つチームが存在していました。もしも課題解決や製品開発について、全社的な考え方の枠組みが作られていなければ、「データ重視なのか、思想重視なのか」という宗教戦争が勃発してしまうでしょう。このような時にグロースチームが果たす役割は、まず、公平な視点でデータを分析し、関係者に開示すること。そして、より大きな成長に向かうために、リスクに積極的に取り組む意志統一を産み出すこと。また、データを駆使しながら、現時点で社の成長が順調か、或いは停滞しているのか、それぞれの原因は何なのかを説明をすること…等が挙げられます。

• 人材獲得

間接的に、ではありますが、ユーザーグロースチームは人事戦略にも大きな影響を与えていました。自社のプロダクトが売れ行き好調だと示せれば、他社から優れた人材を得ることは非常に容易です。多くの人は、5000万人以上のユーザーを持つウェブサービスに加わるためなら、転職したいと考える優秀な人材は大勢います。

• マネタイズとモバイル対応

ユーザーグロースチームは、広告主の獲得・維持とモバイルの強化にも大きく関わっていました。と言うのも、ユーザーグロースとマネタイゼーションには多くの共通点があるからです。ユーザーグロースとは思考法と方法論の問題であり、関連した他の課題に適用できるのです。

ユーザーグロースチームの仕事を投資に例えてみると

今日まで、ユーザーグロースチームはFacebook、モバイルウェブ、モバイルアプリの、個々の機能に対して、何千ものテストを行ってきました。彼らが全社に及ぼした影響を本当に理解するためには、投資の例で考えると良くわかるでしょう。

そもそも成長とは、何らかの価値ある製品を作り出し、それを使って複利的な利益成長を生み出すことにあります。

投資で考えると、単利(元本にだけ利子がつく)の場合は、以下のような図になります。

article131_2.png

例えば、もしも新しいログアウトページをデザインしたことでこれまでよりも5%多く新規ユーザーを獲得出来たとすれば、元本に複利の利益が追加されることになります。利益は指数的な、右肩上がりのカーブになります。

article131_3.png

成長の多くは、このように複利で利益をもたらす要素(レバー)を地道に探し当てる作業です。成長とは施策の積み重ねであり、どれか単独の施策が大当たりする訳でなありません。とても、地道は小さな最適化を行っていくのです。5%のユーザー増をもたらす施策を10個積み重ねると、3年後には複利で大きなインパクトを与えるのです。

銘記しておかなければいけないのは、5ドルから100万ドルまで増やすのは非常に大変なので、そもそもの元本も大事だということです。(この場合は製品を元本にたとえている)そもそもプロダクトの価値が小さいのであれば、その価値を改善することに焦点を当てる必要があります。例えばMyspaceのようなひどいプロダクトを成長させるのは、非常に難しいということです。

アクティブユーザーが5億人を超えた2010年7月以降、私はユーザーグロースチームから離れました。今日この時、Facebookに登録している何人のアクティブユーザーが我々のチームの戦略によって獲得されのかと考えれば、そう、それは数億人、ということになるでしょうか。

まとめ

どうだろうか?参考になっただろうか?本文中に書いてあるとおり、Facebookの成功は、地道な改善の積み重ねであり、決して、魔法のような仕掛け(マジック・フォーミュラ)によるものではない事が理解できるだろう。ただし、Facebookのようにバイラルループ(注)を利用して成長する場合には、わずかな改善が複利効果を持ち成長を加速させるので、地道な努力がより重要になるという事だ。

そして、このような地道な努力を可能にするのは、強力な組織のカルチャー、人材なのである。この点は、まさにトヨタ生産方式が「人を育てる」事を大事にしているのに通じるものがあると思う。

注:バイラルループとは、口コミがユーザー獲得につながるメカニズムの事。詳しく知りたい人は、以下のブログがおすすめ。 What’s your viral loop? Understanding the engine of adoption 日本語の書籍としては、「バイラルループ」がおすすめである。

出典:What is Facebook's User Growth team responsible for and what have they launched?

人気記事


 

 

 関連記事