米国企業に学ぶソーシャルメディアでのキャンペーン設計の方法

コンテンツマーケティング

ソーシャルメディア時代には、これまでと違う広告キャンペーンの進め方が必要になる。Mashableにソーシャルメディアでのキャンペーン設計に関して、参考になる記事があったので、紹介したい。 このブログシリーズ「ビジネスリーダーのためのソーシャルメディア活用方法」は、米国の大手ソーシャルメディアマーケティングのソフトウェア会社The Awareness Social Marketing Hub.から提供されている。

毎年スーパーボウルに出稿する大手ブランドをクライアントとしている広告代理店の経営者と話したのだが、通常、その年の優勝チームが決まった直後には、翌年のスーバーボウルでの広告キャンペーンを計画し始めると言う。

しかしフィアット社は、スーパーボウル広告用のソーシャルメディアキャンペーンを取りまとめるのにわずか5、6週間しか掛からなかった。コカ·コーラ社のコークゼロ用キャンペーン“MAKE IT POSSIBLE”の製作は約6ヶ月かかった。一方、フォード社のパペット人形スポークスマン "Doug” キャンペーンは開始から苦境に立つまで1年ほどだった。

企画・進行はどのようなものだったのだろう?フィアット社は、ソーシャル·メディア代理店Igniteに依頼し、アイデアを提案するよう求め、一番良いものを選んだ。同じくフォード社は代理店のTeam Detroitに発案を依頼した。しかしコークゼロキャンペーンは、グローバルコンテンツ担当副社長であるJonathan Mildenhal氏が、去年ラスベガスで開催されたコンシューマー·エレクトロニクス·ショーで振付師Jon Chu氏との偶然の出会いがあった時にひらめいたものである。

上記3つの逸話が示すように、ソーシャルメディアキャンペーンには一般的な進め方はない。 「本当に様々ですよ」 とフォレスターリサーチ・副社長兼主席アナリストであるNate Elliot氏は言っている。 また「数分でTwitterのアカウントを取得することができますが、ファンのためのソーシャルコミュニティを立ち上げることは数年かかるでしょう」とも述べている。

キャンペーンを計画

どのような場合にせよ、キャンペーンは常に戦略を理解することから始まる。コカコーラ社の場合、戦略は単純に実験することだった。 「このプロジェクトは、あえていえば、ソーシャルメディアを使った実証実験だと、我々は考えています。我々が頂いていた仮説、すなわち「ユーザーの人気を集めるコンテンツは、消費者との会話により発生するもの」という仮説をテストし、正しいことを証明するために行った実験なのです。

中小のブランドは、ソーシャルメディアの戦略からアウトソーシングするが、大手のブランドは、通常自社で戦略を策定し、代理店からアイデアを募ることが多い。Elliot氏は、ソーシャルメディアキャンペーンの立案に関して、クライアントの争奪戦が発生しているという。 「すべての代理店がここを狙っています」と彼は言う。 「それぞれの代理店は、自分達こそがソーシャルメディアの立案・運用にふさわしいと考えています。実際、そうであることも多いですが」

フィアット社の場合、Igniteから多くのアイデアを募集し、 "Score a Scorpion”の概念が気に入ったので2、3日以内に決定した。

さぁ、実行だ!

アイデアを決定したら、ソーシャルメディアキャンペーンの次の段階は実行である。前述のように、とてもシンプルなキャンペーンは迅速に開始される - あなたは数分でTwitterのアカウント又はFacebook上のブランドページを立ち上げることができる。 しかし、成功するために捧げられる野心的な努力を数週間又は数か月掛ける必要がある。フィアット社の場合、ハードだったのは、法務部門と連携して、ソーシャルメディア上での懸賞企画で必要となる「規約」をまとめることだった。実際にFacebook上でキャンペーンを立ち上げるのに約4週間掛かったとIgnite社・社長JimTobin氏は言う。 また「それは厳しいスケジュールでした」 「しかし、スーパーボウルの日時は決まっています。非常に明確な納期です」とも言っている。

昔ならキャンペーンを妥協的なものにし、結果として緩慢としたものになっただろう。しかし、2010年のオールドスパイス社キャンペーン“The Man Your Man Could Smell like”はファンの質問やコメントに応えるビデオをより要求水準の高いものに仕上げた。 フォード社のソーシャルメディア担当アナリストのBrian McClary氏は、数週間に渡り、 "Doug"のキャンペーン用のコンテンツを撮影し続けていたと話してくれた。「我々はTwitterやFacebook上で人々が話している内容をモニタリングしながら、撮影を続けていました」

さらに、ソーシャルメディアキャンペーンを複雑にしているのは、リアルタイムでKPIを測定しないといけないことだ。特に、facebookはインサイトと呼ばれる測定ツールを提供しており、ROIを重視しながら、キャンペーンをリアルタイムで修正していくことを可能にしている。例えば、プロモーションの反応が好調だった時に、即座に予算を倍増させることができる。

しかしMcClary氏は、キャンペーンの進行に関しては、主に週次レポートと月次レポートを通じてデータを集めたと言っている。Elliot氏はこれがおそらく正しいアプローチだろうと言っている。 「マーケッターの多くは結果を測定することはひどく苦手である」とElliot氏は述べている。 McClary氏のようなマーケッターは週次・月次のデータを見る一方で、コミュニティーマネージャーは、データを分刻みで見ている。一方、キャンペーンの多くはブランド価値を向上させるためのものであるので、本当に重要な結果が出るには最低数ヶ月は掛かる。「問題は、ソーシャルメディアでは、測定指標が多すぎてデータの量に圧倒されるという事なのです。木を見て森を見ず、というような状態になるのです」

要約すると、ソーシャルメディアキャンペーンの実行方法について一般的な方法はないことは明らかだ。加えて、ソーシャルメディアのにわか「専門家」が急増したことで、プロセスが難しくなっている。しかし色々苦労はあるものの、従来のテレビに費やされている広告予算に比べると、ソーシャルメディアは足元にも及ばない。例えばGMのFacebookマーケティング用予算は現在3000万ドル(24億円)であり、GM社全体の広告予算43億ドル(3.4兆円)の約7%のみである。

以上のように、ソーシャルメディアキャンペーンの実行は、本当に大変なのだが、それでも、マーケターは、ソーシャルメディアの魅力にあらがうことは難しい。2012年は、ソーシャルメディアに本格的に取り組まざるを得ない。コカコーラ社の担当者は 「ソーシャル メディアキャンペーンは、常に消費者と対話をし続けるという事なのです」「我々は、今日までの実績を残して来ましたし、今後も続けて行く予定です」と述べている。

出典:Mashable How Big Brands Create Social Media Campaigns

ブランドがソーシャルメディアに移行できない3つの理由

前回、アドテックに関するレポートを寄稿してくれた友人に、今回の記事の感想を求めた所、以下のようなコメントを寄せてくれた。ブランド側の意見が出ていてとても面白い。

実際にキャンペーンを企画するブランドの観点からコメントしよう。そう、この記事にも書いてあるとおり、Social Mediaの魅力にはあらがえない。と同時に、Social Media Marketingの企画において、今何がハードルになっているのか。今までTV中心のマーケティングをやってきたブランドが従来の方法を変えていくにあたり、なかなか発想の転換のできない理由がいくつかある。この記事にはそこまで書かれてないが、それを考えるきっかけになると思う。

思い切ったSocial Media Marketingへの発想転換を踏みとどまらせる背景は、大きく3つある。1) アイディアの勝ちパターン、2) 予算、3) 企画実行に要するリードタイム、だろう。

1)     アイディアの出所に関しては、この記事にも書かれているとおり、決まった方法がない、つまりは代理店側もまだ慣れてないということだろう。TVと違ってまだまだ新領域のSocial Media。成功例や経験からくるノウハウがまだ蓄積されきっていないから、“常にはずれないアイディアの出し方”がまだできていないのだと思う。その心もとなさが、思い切ったSocial Mediaに頼ったキャンペーン展開を躊躇させ、ある程度ROIの保証されているTVに固執させているのは事実だ。

2)     “Social Mediaにどれだけ予算をさくか”というのは、つまり“どこまでSocial Mediaに運命を託すか”ということ。結局予算の8-9割がTVのようなTraditional Mediaにあてられていると全ての企画ははTV中心で進むことになるしかし、Barberryなどは60%もの予算をデジタル割いており、そこにCommitしている。それは全ての企画ががSocial Mediaを中心に動くということで、つまりは、キャンペーン途中での柔軟性など、Social Mediaの良さを最大限に活かせることに繋がる。

3)     Social Mediaの最大の特徴であるプランニングのリードタイムが短いという点をどううまく活用できるか。TVや雑誌などのTraditional Mediaはいずれにしても制作に時間がかかる。ブランド側としては、露出する媒体全てで共通するメッセージとExecutionを届けようとするとどうしてもより時間のかかるTraditional Mediaに全てをあわせざるを得ない。だから結局、迅速さがなくなりSocial Mediaの良さを活かしきれない。

 

Social Mediaを使ったマーケティングに関わっている皆さんは、多かれ少なかれ、同じようなジレンマを抱えているのではないだろうか?今後、Social Mediaをうまく活用していくために、変えていくべきこととは何なのか。皆さんは今回の記事を読んでどう思われましたか?

 

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中谷和世 Kazuyo Nakatani

消費財外資メーカー勤務、ブランドマネジャー