顧客の「期待」をコンバージョンにつなげるには?Appleに学ぶ心理学

デジタルマーケティング
マーケティングと心理学。大学で学ぶ専攻分野としては全く違うものだけど、ビジネスの世界では切っても切れない仲だ。
なかでも、「期待(anticipation)」(予期などとも訳される)は、非常に興味深い領域である。この心理をしっかり把握して、顧客の期待をうまくコントロールできれば、商品購入や会員登録など、企業に有利なコンバージョンへとつなげていけるのだから。
そこで今回は、心理学から学ぶ「期待」の特徴とともに、これを見事にコンバージョンにつなげることに成功しているApple社の実例を紹介する。そこから、成功の秘訣を考えてみよう。
人は「期待」することをやめられない
人間の脳は、さまざまなことに対して、自動的に「期待」をする仕組みになっている。そして、この期待こそが、人々に「CTAボタンをクリックしてみたい」「この商品を買いたい」「このサービスに登録してみたい」と判断させる原動力になるのだ。
マーケターとして、「期待」の構造に関してまず知っておきたいのは、「人々が期待をするときは、良い結果を想像する」「人々の期待とは、その人の過去の経験に基づいて形成される」という2つの点である。
つまり、期待をコンバージョンにつなげるために必要なコンテンツは、「人々が期待する良い結果を想像させるポジティブな内容」「人々が過去に見た・経験したことのあるデザインや内容」の2つを押さえていなければならないということなのだ。
以下で、それぞれについて簡単に解説してみよう。
人々が期待する良い結果を想像させるポジティブな内容
良い結果を期待している人に、思わず「うんうん」と首を縦に振らせてしまうコンテンツ。それは間違いなく、ポジティブな内容のものである。
「なかなか売り上げが上がらない…… 私たちに任せておけば大丈夫!」 「毎日の晩ご飯の支度…… 30分でできたら良いと思いませんか?」
このように、顧客が「こうしたい」「こうありたい」と期待していることに対して、「そうか!」「ぜひ!」と思わせること。これこそがコンバージョンにつなげるためのポジティブな煽(あお)りである。
人々が過去に見た・経験したことのあるデザインや内容
マーケターとしては、他には類を見ない、斬新なアイデアやコンテンツをつくってみたいものである。しかし、多くの人は、期待と違った目新しいものに戸惑いを感じてしまうのが現実。
自分ではユニークに作成したつもりのCTAボタンも、顧客から見たらあまりにも今までのものと違いすぎて、クリックするという行動にすら行き着かないこともあり得るのだ。また、人は見慣れないものを見ると混乱してしまうもの。そうなると、期待よりも諦めが大きくなってしまう。
せっかくたどり着いたコンテンツも、開拓するのが面倒になって投げ出されてしまっては、元も子もないではないか。コンバージョンにつなげたいならば、要所に使うデザインや内容は、誰が見てもわかりやすい、過去の経験を生かしやすいものにするよう心がけよう。
期待の持たせかたも超一流:Appleの実例
コンピューターやスマートフォン・タブレットと、さまざまな商品で、世界中のファンをその魅力の虜(とりこ)にしているApple社。
ここまでロイヤリティの高いファンを増やし続けてきたのには、製品の質の高さはもちろんだが、顧客の「期待」を操る術(すべ)をマスターした、マーケティング力の高さが大きく影響している。
例えば、同社が毎年行う、新製品発表のプレスリリースを見てみよう。下の写真は2014年のプレスリリースへの招待状。
多くの人々が、「喉から手が出るほど欲しい」と期待を高めているイベントへの招待状なのだが、至ってシンプル。「Wish we could say more(もっと教えてあげられたらいいんだけど……)」という絶妙なキャッチフレーズが印象的だ。
見せたいんだけど、見せられない。人々の期待をくすぐる手法として昔から使われているものだが、常に人々の期待に応えてきたという過去の経験があるからこそ、その効果が最大限に引き出されてくるのではないだろうか。
顧客の期待を途切れさせない努力も、Appleでは怠らない。「次の商品はいつ出るのか」「どんな製品が出るのか」と顧客に期待を持たせる。
そして、それを将来のコンバージョンにつなげるために、顧客のロイヤリティを失わせないための努力を惜しまない。質の高いカスタマーサービスの提供はもちろん、スタッフのトレーニングや製品のサポートの向上に努め、常に期待させ、決して期待を裏切らない。
熱烈なファンが多いと言われるAppleのそんな姿勢は、どんな企業も見習うべきものではないだろうか。
ワクワク・ドキドキを届けよう
期待をコンバージョンにつなげることは、みんなが思っているよりもずっとシンプルで簡単。
誰もが自然に持つ「期待」という心理をうまく利用することができれば、顧客から求められる存在になることができるのだ。どんな方法でもよい。大切なのは、顧客にワクワク・ドキドキの気持ちを届けること。
「もっと知りたい」「もっと欲しい」。そう思ってもらえるブランドとして輝けるよう、ぜひ、心理学の視点からもマーケティングを研ぎ澄ましていってもらいたい。
参考元: Apple – Masters of Anticipation Marketing The Psychology of Anticipation and What it Means for Your Conversion Rates 15 Psychological Triggers to Convert Leads into Customers Sales techniques and negotiations APPLE IPHONE6 ANNOUNCEMENT
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