Amazonが描くロジスティックスの究極形とは?「予測配送システム」の特許を読み解く

EC(Eコマース)

米Amazonが、画期的なシステムの特許を米国内で取得した。「予測的な配送システム」と呼ばれるその特許は、これからのIT業界、流通業界、そして消費者の立場においても、新しいトレンドとなっていくかもしれない。その理由と、Amazonの「予測的な配送システム」の原理について紹介していきたい。

「予期的な配送システム」の原理を特許申請書から見てみよう

2013年12月、Amazonはひとつの特許を米国内で取得した。この特許「予測的な配送システム」は、顧客が注文する前に、予測に基づいて品物を出荷し、注文を行った時点で、すでに最寄りの拠点まで商品を配送している、というシステムである。

特許申請書にはこう要約されている。

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“According to one embodiment, a method may include packaging one or more items as a package for eventual shipment to a delivery address, selecting a destination geographical area to which to ship the package, shipping the package to the destination geographical area without completely specifying the deliver address at time of shipment, and while the package is in transit, completely specifying the delivery address for the package,” (Method and system for anticipatory package shipping/patent/US 8615473 B2より引用)

現在のAmazonの配送システムと「予測的な配送システム」を比べてみると、この特許がいかに画期的なものかがわかるだろう。

・現状の配送システム

1. 顧客からの注文
2. 自社倉庫で品物に宛先のラベルを貼り付ける
3. 配送会社のトラックへ積み込む
4. 配送
5. 数日後に到着

・予測的な配送システム

1. 予測出荷
2. 顧客の宛先近くのハブに配送し待機
3. 顧客からの注文
4. 配送
5. 当日到着

この「予測的な配送システム」を実現することで、いつでも商品の当日出荷・当日到着が可能になるのだ。

国土の広大なアメリカの場合、現状の配送システムでは当日出荷・当日到着はほぼ不可能である。しかし、Amazonのデータ解析によると、注文してから商品到着の期間の長さと、キャンセル率の高さは比例しているそうだ。また、商品到着の期間が長いほど、ユーザーはネットショッピングからリアル店舗でのショッピングに移行する、という傾向も報告されているという。

つまり、Amazonにとって当日出荷・当日到着のシステムは、ネットユーザーの囲い込みに必要不可欠なシステムなのである。

顧客の注文を予測するための「6つの要素」

さて、「予測的な配送システム」を実現するために、Amazonはどのような手法を取ろうとしているのだろうか?

大きく分けて、次の6つの要素を、予測の根拠の基礎としている。

1. 顧客の注文実績
2. 商品検索、キーワード検索の実績
3. 希望リストの分析
4. ショッピングカートの内容物の履歴
5. キャンセル実績、返品実績
6. 特定の商品に顧客のマウスカーソルがとどまった時間

この中で特筆すべきは、6番目の「顧客のマウスカーソルがとどまった時間」をデータ化することである。

ある商品に、顧客のマウスカーソルが何秒とどまっているかを知ることは、確かに顧客の個人的な好みや興味のありようを推測するのに役に立つデータになるだろう。顧客の好みや興味がわかれば、次にどのような商品を注文するのかの予測が、高い精度で成り立つ。

「近未来のポータルサイト」を妄想してみる!?

Amazonの「予測的な配送システム」は、リスティング広告の「検索連動型広告」と、基本的には同じベクトルの考え方だろう。検索型連動広告が、ネットユーザーの検索ワードを拾って関連するキーワードを含む広告を表示するのに対し、Amazonは、顧客の検索ワードや特定の商品への興味をデータ化することで、次にいつ、どの商品を購入するのかを予測するわけである。

さてここで、妄想を働かせる。近未来のポータルサイトの妄想だ。

たとえば、次のようなWebサイトを想像してみる。それは、あらゆる情報を網羅したポータルサイトだ。ユーザー登録すると、無料のメールマガジンが自動配信されるシステムを備え、その内容とは、ユーザーが「たった今欲しい」と思っている情報である。つまり、「予測的なメルマガ配信システム」だ。

原理はこうだ。

ユーザーがそのポータルサイトで何かを検索した際、検索ワードを蓄積しデータベース化する。データ化する情報は、検索ワードだけではなく、どの時間帯にどのワードを多く検索したか、似たワードをどのくらいの間隔で検索したか、というパーソナル情報である。

データがある程度たまったら、ユーザーにメールマガジンを送信する。それは、同一内容の記事を一斉配信する現行システムとは異なり、ユーザーごとに配信時間や配信内容などが異なったものになる。

大きく違うのは、このシステムは個別のユーザーが「たった今欲しい情報」をリアルタイムで配信するということだ。

まるで、昔のSF映画(「トータル・リコール」の中で似たような未来が描かれていた気がする)のような現実が、Amazonの「予測的な配送システム」の原理を応用することによって実現しそうである。

今後のトレンドは顧客のニーズを予期すること

Amazonの、この新しい特許が意味するものは、現在のITや流通業界の中で、顧客のニーズを予期するトレンドが強まっているということではないだろうか?

ITで望まれる次のステップとは、現行システムを超えた「顧客の好みを予期するシステム」なのかもしれない。

 

記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://innova-jp.com/library/

参考元:
Why Amazon's Anticipatory Shipping Is Pure Genius
Method and system for anticipatory package shipping