これLidlなの!?安売りスーパーのイメージを払拭した「The Little Market」キャンペーン

コンテンツマーケティング
悪い噂は、誰だってできることなら立てられたくはない。特に企業の場合、一度悪いイメージを持たれてしまうとそれを覆すのは簡単ではなく、致命傷となってしまう恐れもある。このことは、マーケティングに興味のある人なら、誰でも納得できるのではないだろうか。
しかし、なかには避けることの難しい悪評もあるだろう。例えば、価格で勝負しているディスカウントショップが、「安いけど、品質はあまり良くない」などと思われてしまう場合だ。もちろん、安くても質の良い商品を扱っている場合もあるだろう。しかし、それを消費者に理解してもらうのは簡単ではない。いくら説明しても、「でも、そうは言っても安さには理由があるんでしょ?」と勘ぐられてしまうのがオチだ。
ディスカウントショップにとってある意味では宿命とも言える「悪評」に、どう立ち向かっていけばいいのだろうか。この難しい問題を、スマートに解決している事例を見つけたのでご紹介したい。
安いから、質が悪い?
ドイツを中心にヨーロッパで店舗を展開するディスカウントスーパー「Lidl(リドル)」は、まさにこうした課題を抱える企業だ。肉や野菜といった生鮮食品や日用品を扱うだけでなく、店舗によっては店内でパンを焼くなど、スーパーとしての質は高い。おまけに、ほかのスーパーと比べて価格は1~2割ほど安いため、いつも人でにぎわっている。
しかし、なかには「安心・安全な食品を求めるなら、高くても普通のスーパーのほうがいい」と考えて敬遠する人もいる。さらに言うなら、そこで買い物をしている人まで「質のことはわからないけど、まあ安いから……」と考えているふしがある。
本当に質が悪い? じゃあ食べてみてよ!
こうした「悪評」を撤回するべく、同社が行ったキャンペーンが「The Little Market」だ。これは、新鮮な野菜やハム、チーズなどを売る小さな朝市を、ロンドンの郊外で行おうというもの。休日の思いがけないイベントに、朝早くからたくさんの人でにぎわった(その多くは、Lidlが開催していると知らない)。
市場では食品を買うだけでなく、試食も積極的に行われている。「はい、肉が焼き上がったよ! 食べてみて!」「パイナップルはどう?」などの声があちこちで聞かれ、活気にあふれている。買い物に来たお客も「美味しい!」「この味好き!」と、評判は上々だ。お客は並んでいるそれぞれの商品を自分の舌で味わい、気に入ったものを購入していく。
と、ここまではどこの市場でもよく見かける光景だ。しかし、お金を払う段階になって、買い物客は異変に気付きはじめる。あるカップルの反応は、以下のような感じだ。
「いくらだったの?」
「1ポンド67ペンス」
「え!? 安くない?」
「だよねえ……」
そう、どの商品も思っていた以上に安いのである。通常、ヨーロッパでは、こうした市場は新鮮で美味しいものが手に入るけれど、値段はスーパーなどに比べて少し割高というイメージがある。そのイメージに反して、どの商品も安いのだ。
それもそのはず、この市場に集められた商品は、どれもLidlで売っているもの。それを市場風に並べただけで、値段も店舗と同じままだ。普通の朝市だと思っていた人々がその安さに驚くのも無理はない。
「どうしてこんなに安いの?」と驚く買い物客に対して、ようやく店主はタネ明かしをする。「本日はLidlでのお買い上げ、ありがとうございました」。そう言って、ロゴが入った紙袋を差し出すのだ。
このようにされてしまうと、さっきまで「美味しい!」と連呼していた買い物客は、「安いけど、質がちょっと……」などとは言えないだろう。何しろ実際に試食をし、自分の舌で商品の質を確かめて買ったのだ。「えーっ! Lidlなの!? なんてこと!」と、これまでの自分の認識を改めるのだ。
この市場の様子は、以下の動画に収められている。ぜひご覧いただきたい。
The Little Market
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悪評はユーモアで覆そう!
一度広まってしまった「悪評」を覆すのは、簡単なことではない。しかし、それが事実でないのであれば、今回のようなユーモアあふれる方法で覆すことも可能なのではないだろうか。企業のイメージ戦略を立てるうえで、今回の事例が参考になれば幸いである。
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