夜中にお父さんと食べるシリアルの「朝食」!?~固定観念を打ち破るCheeriosの動画

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シリアルといえば、朝食の定番だ。多くのシリアルのCMでは、日差しが降り注ぐ爽やかな朝の風景に、母親と子どもが笑顔で食べる……そんなイメージがある。

しかし、今回取り上げたいのは、アメリカのシリアルブランド「Cheerios」のプロモーション動画だ。そのなかのひとつ「3rd Shift(夜勤)」の設定に意外性がある。

夜中にお父さんと食べるシリアルの「朝食」  

登場するのは、両親と息子マックスの3人家族。父親は夜勤の仕事が続いているようで、昼間に帰り、深夜に仕事場へ出かけて行くという、家族とすれ違いの毎日。

ある晩、父親の出勤に合わせて、片手にCheeriosを持ち、冷蔵庫から牛乳を取り出すマックス。父親はそれを見て、「こんな遅くに何をやっているんだ」ととがめる。すると、マックスは父親に向かってこう言うのだ。

「お父さんと朝食を食べたいんだ」

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出典:Cheeriosのプロモーション動画「3rd Shift」より

その言葉を聞いて顔をほころばせる父親。ふたりは、真っ暗な部屋のなかで楽しそうな会話を交わし、Cheeriosを食べる。

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出典:Cheeriosのプロモーション動画「3rd Shift」より

アメリカのシリアルブランド「Cheerios」のプロモーション動画「3rd Shift」

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作り手から見た「3rd Shift」

グローバル・コミュニケーションズ社のソーシャルメディア・マネージャー、ケビン・ハント氏は、このプロモーション動画の舞台裏の密着取材を行った。

ハント氏は、2013年の秋にシカゴの撮影現場に向かい、コミュニティ・フィルム社のディレクター、マット・スマックラー氏や、サチ&サチ社のクリエイティブチームのメンバーに話を聞いたのだ。

このプロモーション動画を制作したシナリオライターは、両親が共働きだった自身の経験に基づいてストーリーを作り、家族で食べる「朝食」は、何時だっていいという思いを込めたそうだ。

マックスが、父親に対して「お父さんと朝食を食べたいんだ」というシーンは、特別な瞬間になった。Cheeriosのアソシエイト・マーケティング・ディレクター、ドーグ・マーティン氏はこのように語っている。「このプロモーション動画は、朝食は『食べる』以上の意味があることを教えてくれる。朝食は愛する人とつながっていると実感できる大切な時間なのだ」

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出典:マックス役の少年の演技は高く評価されている。

寝ている時間に働く父親を持つ少年の視点から、深夜勤務の大変さを表現している。非常にシンプルなプロモーション動画だが、多くのことを語っている。子役の少年の演技はどのシーンでも素晴らしく、感情を上手に表現している。

固定概念を打ち破り、意外性で勝負

朝食を家族みんなで食べ、子どもは学校へ。両親は会社へ行く。夜には家族全員が帰ってくる。

もちろん、このような家庭が一般的でマジョリティーかもしれない。しかし、夜の勤務、はたまた、徹夜で仕事をする父親や母親だっているのだ。シリアルといえば朝食のイメージがあるが、家族とのコミュニケーションの場としての「朝食」は朝だけに限らず、各家庭の事情次第で、時間は関係ない。

このプロモーション動画は、設定に意外性があり印象に残りやすい。また、似たような状況の家族にとっては、非常に心を打たれる作品になっている。

Cheeriosの他の動画でもメインは「父親」

日本でも「イクメン」という言葉が広まり、家事・育児に父親が参入するようになったものの、食品のコマーシャルでは「母親」が登場するものが多かった。しかし、Cheeriosでは今回の動画を含め、たびたび「父親」を登場させている。

Cheeriosの新商品「Peanuts Butter Cheerios」のプロモーション動画も、「父親」にスポットライトを当てている。たくさんの子どもたちが登場するなか、母親役の女性が登場するのはほんの一瞬で、父親役の男性がコーヒーを渡すときにだけ登場する。

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出典:「Peanuts Butter Cheerios」のプロモーション動画より

「父親でいることは最高だ。『Peanuts Butter Cheerios』が最高なのと同じようにね」と語り、商品を「パパのオフィシャル・シリアル」と呼んでいる。

新商品ピーナッツ・バター・チェリオスのプロモーション動画

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まとめ

ほとんどの企業の広告は、会社や製品のことを多く語ろうとする。しかし、見込み客は実際のところ、その企業の情報や製品よりもずっと、自分たちの生活のことを気にかけている。

今回取り上げたCheeriosのプロモーション動画「3rd shift」は製品や会社の情報をほとんど伝えていない。しかし、固定概念を打ち破り、心に響くエピソードを共有することで、プロモーション動画の閲覧者に「特別なつながり」を感じさせるのだ。Cheeriosのプロモーション動画はそのような体験を届けるために、できるだけシンプルに作り上げた。

会社や製品、サービスなどを盛り込む代わりに、自分たちの会社が、ターゲット層の生活にどんなメッセージを伝えたいのかということを突き詰めていけば、人々の記憶に鮮明に焼き付けられるプロモーションが実現できるだろう。

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