売上をアップさせたい起業家や経営者への3つのアドバイス

EC(Eコマース)
“Built to Sell: Creating a Business That Can Thrive Without You”という本をご存じだろうか?この本は、私が独立する際に読んでとても参考になった本である。これまでベンチャーを4社を起業し、売却した経験を持つ起業家が書いた本で、海外でとても良く売れている本である。
この本は、残念ながらまだ日本語訳が出ていないのだが、起業や独立をしたい人、会社経営に関わっている人には是非お勧めしたい本だ。
彼の本がユニークなのは、「自分の会社を売る事を前提に経営すべきだ」という主張である。誰しも自分が立ち上げた会社には思い入れがあり、できれば自分が死ぬ時まで大きくしていきたいと思うものである。しかし、その思い入れの強さが会社の成長を妨げてしまうこともある。
会社を他人に売却する事を考えて経営する事で、実はビジネスを成長できるようになるという指摘が興味深い。今回は、米国のビジネス雑誌 Incに掲載された記事を元に、彼の考え方を紹介しよう。
売却できるビジネスを作るための3つポイント
その1:大口顧客に依存しない
大口の顧客に売上を依存している会社は珍しくない。特に、中小企業は1?2社の得意先に依存している事が多いだろう。
そもそもなぜ大口顧客に依存してしまうのだろうか?その仕組みはこうだ。
あなたがビジネスを行っていて、ある顧客にとても良いサービスを提供し、満足してもらったとする。すると、その顧客は次回もまた発注してくれる。これは良い事だ。そして、更に繰り返し良いサービスを提供し続けていると、その顧客は、他の会社に発注するのを止めて、もっと多くの仕事を回してくれるようになる。
こうして、あなたにとって、この顧客は最重要顧客となる。当然他の社員に任せる訳にはいかないので、社長のあなたが自らこの顧客を担当する事になる。
社長が、自分で顧客を担当するという事は、営業やサービス要員を雇わなくてよいという意味でもある。追加の人件費がかからないのは素晴らしい。この顧客は多くの売上をもたらすだけでなく、コストが低く収益性が高いという事にもなる。こうなると、この顧客は金のなる木(キャッシュカウ)になり、仕事を断ることが極めて難しくなる。
このようにして、大手顧客との間で相互依存の関係が出来上がるのだ。
これは、一見良い状況のように思えるが、実はとても危険な関係だ。あなたの企業価値を下げる事になるし、自分の会社を他人に売却するのは、不可能となる。
わたしの知人の話しを紹介しよう。彼の会社は、アメリカ最大のホームセンターLowe’sに商品を販売しており、売上の多くをLowe’sへの販売に依存していた。Lowe’sへの販売が多い月には、売上の半分以上がLowe’sで占められる事があった。
しかし、米国の住宅市場が不調となった瞬間にすべてがおかしくなった。Lowe’sは、自分達のビジネスを守るために、彼の会社への発注を減らし、彼の会社への支払の繰り延べを行った。その結果、彼のビジネスはあわや倒産という状況に陥ってしまった。
彼は、なんとしても現金を調達したかったので、自分の会社を売却する事にした。そして、事業会社や投資ファンドなどと交渉したのだが、投資家が出してきた買収価格はとても低い金額であった。彼の会社がLowe’sに依存していたからだ。通常、特定の取引先に売上を依存している会社は、投資家から見て、とてもリスクが高いビジネスだと評価されるのである。
このように、売却できるような会社を築くためには、特定の顧客に頼りすぎてはならない。具体的には、売上の15%以上を占める顧客をつくらないようにするべきだ。
その2:商品を絞りこむ
会社の立ち上げ当初は、顧客の声に耳を傾け、その要望に応えようとする。しかし、全ての顧客の要望に応えようとする結果、あなたはあまりにも多くの商品を提供する事になる。顧客は、自社にあわせて商品をカスタマイズする事を求めるので、微妙に内容の違う商品が無数に存在する事になる。
もしあなたが、商品の種類を増やしつづけたら、従業員に商品の提供を任せたり、営業を任せたりするのが難しくなる。商品の種類が増えれば増えるほど、あなたのビジネスはあなたに依存する。従業員の中で、商品全部について知っているのがあなたしかいないからだ。ビジネスがあなたに依存しすぎると、会社を売却する事は困難になる。
この窮地から抜け出すには、より少ない種類の商品やサービスをより多くの人に販売しなくてはならない。直観に反したアドバイスに見えるかもしれないが、急成長している会社が実践していることだ。
Appleを例とってみよう。Appleは、同じユーザーインターフェィスを持つ少数の製品(iMac、Macbook、iPhone、iPod、iPad)を販売する事に注力し、成功している会社だ。扱っている製品が少ないために、Apple Storeの従業員のトレーニングも簡単になる。少数の製品とひとつのOS(オペレーティングシステム)に関して、従業員のトレーニングを行えば良いのである。
これとは対照的なのは、家電量販店だろう。家電量販店に行くと、異なるOSで動く製品が無数に売られている。販売員は無数の商品を販売しなくてはならないので、販売員を教育する事は簡単ではない。大抵の場合、カタログに書いてある事を読み上げてくれるのがせいぜいで、実際にサポートできる販売員は少ないだろう。
少数の商品やサービスを販売することにフォーカスするべきだ。少数の商品を販売する事に注力する事で、あなたは従業員をトレーニングして商品を効果的に販売する事可能になる。そして、自分の会社を売却できるようになる。
その3:コモディティ化の罠を脱出する
あなたは誰かに自分のビジネスを説明する時に、どのように説明しているだろうか?
もし、印刷会社を経営していますなどと説明しているとしたら、それは、自分の会社を、業界や業種で説明している事になる。
別の説明の仕方がある。なぜ、あなたのビジネスがユニークなのかを説明するやり方だ。例えば、「私の会社は、アニュアルレポートをたった3日で印刷する技術を開発した会社です」などという説明だ。
自分の会社を業界や業種で説明する事はすぐに止めた方がいい。なぜならば、ほとんどの産業がコモディティ化して(競合他社と商品の違いがなく、価格のみで勝負している状態になって)いるからだ。あなたは、生涯、仕事の奴隷となり、低収入に甘んじる事になるだろう。結局の所、あなたのビジネスに特徴がなければ、結局は安売り勝負になってしまうのだ。
それから、自社の宣伝文句に「優れた顧客サービスを提供します」と書いている人は気をつけた方がいい。人々は、実質の見えない売り文句には反応しない。顧客サービスが本当に優れているかどうかは、商品を買ってみないと分からない。そして、買ってみないと分からないサービスに、顧客はお金を払わない。
あなたのビジネスを、業界や業種で説明するのを止めよう。そして、サービス内容を抽象的な言葉で説明するのを止め、あなたのビジネスが他と違う理由をできるだけ具体的に説明しよう。
例えば、靴のEコマースで有名となった米国のZappos(ザッポス)社は、返品時の送料を無料にした事で成功したのである。送料無料は多くのネットショップが行うようになっているが、Zapposは、靴を送料無料で配送した上に、気に入らなければ、返品時の送料も無料で引き取るのだ。
「弊社は優れた顧客サービスを提供します」というのは、具体性に欠け、説得力が無い。Zapposが差別化できたのは、無料返品サービスを提供したからだ。一般的に、靴の小売はコモディティ化されており、低収入なビジネスの典型だ。買収される見込みはほとんどない。
しかし、自宅に居ながらにして、好きな靴が選べて、しかも無料で自由に返品できるというビジネス手法は極めてユニークである。Zapposが成長しAmazonに売却できたのは、この返品無料モデルのおかげである。
自分の会社を、業界や業種で説明するのはすぐやめ止めよう。顧客が魅力を感じ思わず欲しくなるような具体的なポイントを説明しよう。
顧客をワクワクさせる会社説明を心がけるのだ。
まとめ
どうだろうか?参考になっただろうか?
個人的に、特に参考になったのは、1番目の大口顧客に依存しないという点だ。特に、会社を作った直後は、売上を上げる事が第一目標になるため、どうしても、特定の顧客に時間を使ってしまいがちになる。しかし、大勢の顧客を惹きつけ、多数の顧客から売上を上げる事ができないと、結局は、下請けの立場から脱却出来なくなってしまう。
特定の顧客に依存してしまっている人は、今回の記事を参考に、自社の経営を見直してみて欲しい。
記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://innova-jp.com/library/
Photo Credit:Azlie Ari Allias
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