地方創生とコンテンツマーケティング。都会のマーケターが田舎町でネットを語った日。

コンテンツマーケティング
こんにちは。
イノーバマーケティング部の亀山です。
先日、ご縁あって兵庫県多可町というところで商工会会員に方々にコンテンツマーケティング講座を行わせていただきました。
地元で代々つづく企業の代表をつとめる方、いわゆるIターンによって都会を離れ、地方を盛り立てようとがんばっている方。そんながんばっている企業や個人を応援しようと尽力している商工会や役場の方々。
企業のマーケティング担当者やWeb担当者を対象に行っている普段のセミナーとはひと味違ったセミナーとなりました。
兵庫県多可町ー2040年までに若年女性が58.9%減少する町
兵庫県の東播磨地域の内陸部に位置する多可町は、平成17年に旧中町、旧加美町、旧八千代町の3町が合併して誕生した、人口2万2千人あまりの小さな町です。大阪から約2時間、中山間地域であるため総面積の8割が山林で、隣町から車で訪れた際には、ダム湖を越えると唐突に家々が視界に現れたような印象を覚えました。
主な産業は播州織と呼ばれる織物、自慢の特産品は日本一の酒米「山田錦」と百日地鶏とのことですが、正直僕は今回はじめて知りました。
昨年「消滅可能性自治体」という言葉が世間に衝撃を与えたことを覚えていますでしょうか?
日本創成会議・人口減少問題検討分科会が、2010年から2040年までの30年間における20〜39歳の女性人口の予想減少率を推計したものです。少子化や人口移動に歯止めがかからず「将来的に消滅の可能性がある」とされた自治体は全国で896自治体。多可町は減少率58.9%と予想された「消滅可能性自治体」の一つです。多可町八千代区では、生徒不足で今年3つの小学校を1つに統合せざるを得ないそうです。
参考:日本創生会議
都市圏でスキルとビジネス経験を積んだ地元出身の若者がIターンして街おこし
多くの地方と同様に少子化と人口流出、それに伴う耕作放棄地や空き家の増加といった問題を抱える多可町ですが、決して悲観的なばかりではありません。近年、東京や大阪といった都市圏で経験とスキルを身につけた地元出身の若者による地方活性のための活動が動き出しているのです。
「多可町をモデルケースとした地方活性ビジネスプランニング」イベント
“田舎でもできること”ではなく“田舎でしかできないこと”を発信する
今回私たちイノーバと多可町のご縁を繋いで下さったのも、東京でECビジネスのノウハウを学んだのち独立起業し、地元の活性化を志して活動を開始した20代の方。同プロジェクトには他にも、経済産業省を退職しベンチャーや地域活性支援を行っている方やフリーランスのWebエンジニア、海外で経験を積んだ後、地元の役場に入庁した若者などがそれぞれのスキルとネットワークを活かして「地方創生」という途方もないゴールを目指しています。
そんな中、地域の活性化や移住促進に取り組む方々が共通して強調する、地方が抱える課題の一つが「情報発信」です。
人もお金もかけられない中、Webサイトだけはかろうじて持っているものの更新できない、誰に何を発信したらいいかわからない、そもそも誰が見てるんだ?情報発信なんかしたって商売につながるのか?何から手をつければいいんだ……?
技術革新スピードの特に早いITとマーケティングの領域において、このように「このままじゃいけないのはわかっているけれど、どうしたらいいかわからない」状態に陥っている地方自治体や事業者は多いと言います。
今回ご相談いただいた多可町商工会会員企業の方々への「コンテンツマーケティング講座」も、そんな地元企業の方々がその魅力を全国に、世界に届けるために“ITを活用しよう”という一連の取り組みの一つでした。
地方在住の親世代に「コンテンツマーケティング」を伝えよ
最初に今回のご相談をいただいた時、ちょっと途方に暮れたことを覚えています。
コンテンツマーケティングの盛り上がりとともに、昨年からイベントやセミナーなど様々な場所でお話をさせていただく機会が増えましたが、事前に必ず考えるのが「オーディエンスは誰なのか」と「何を知りたくて、どんな内容を期待して参加してくださるのか」の二つです。
普段のセミナーであれば、イベントのテーマや過去の経験から上記二つをある程度想定することが出来ます。それに基づいて、オーディエンスの立場になって使う言葉(業界用語など)を選び、事例を選び、講演内容を固めていきます。
しかし今回は、この二つが二つとも自身の経験知の「想定外」でした。
2時間という限られた時間の中で、自分の親世代の地元経営者の方々に「コンテンツマーケティング」を伝える。
事前の申込者アンケートや主催者からのヒアリングを重ね、まずは“ネットでモノを売り買いする(Eコマース)”ことや“インターネット”自体に対しての印象や距離感から探ることで参加者の方々との“共通言語”を考えていきました。
自社の顧客と向き合い、自分のこだわりと強みを再確認する
参加者の中には自社のWebサイトをまだ持っていない方も想定されたことから、今回の講座のテーマとゴールはそれぞれ以下のように設定しました。
【テーマ】
ネットを使って広く新規顧客を獲得する。商圏を拡大する。
【ゴール】
「顧客と向き合い、自社の強みを明文化すること(USPの作成)」と「それをコンテンツとしてWebで発信することを体験すること」
SEOの話や、細かいキーワードの話などは抜き。ソーシャルメディアでの拡散戦略やKPI設計の話などもなし。
自分のビジネスにお客様がついている理由、喜んでくれる理由、当たり前すぎて気付いていなかったような自社の強みや独自性、曲げたくないこだわり…ワークショップを通して多用した今回の講座で明らかにしたかったのは、そのようなことです。
【講座内容】
<第1部:講義>
- イントロダクション
- マーケティングとはなにか
- ネットでモノは売れるのか?ECの国内市場規模
- Webサイトでの情報発信
- 「見つけてもらう」ためのコンテンツマーケティングとは
- 事例紹介(Oh My Glasses / 東海バネ工業 / 土屋鞄製造所 / 前田建設工業)
- 成功事例の共通点は?
<第2部:ワークショップ>
- 準備運動
- 顧客を知る。ペルソナの作成
- 自社の強みを知る。USP(ユニークセリングプロポジション)作成のための魅力発掘インタビュー
- 一貫したメッセージを発信する。ブログ記事テーマの作成
コンテンツマーケティングに真剣に取り組むことは、経営そのもの
各回約30名、昼の部と夜の部の二度開催した講座では、約3割ほどいた“Webサイトを持っていない”という方々も含め非常に意欲的に取り組んでいただくことが出来ました。ペルソナの設計といった慣れない作業にはじめは戸惑う参加者の方も見受けられましたが、グループのメンバー同士コミュニケーションを取りながらワークを進めてくださっていたのがとても印象的でした。
後日、今回の主催者である多可町商工会の本庄尚哉さんからとても嬉しいご報告をいただきました。
講座参加者の方の中で、
- ペルソナを設定し新たな事業計画立案に動き出している方
- Webサイトの立ち上げに着手された方
- Webサイトリニューアル検討中に講座に参加され、情報発信の大切さを痛感したという方
などがおられ、商工会としても専門家派遣などの形で継続的な支援に繋がっているとのことです。
本庄さん執筆のブログ「「商工会職員お仕事日報」
”コンテンツマーケティングって実はITの世界だけのものではないのだということがわかった日”
どこの誰の、どんな課題を、どうやって解決したいのか。
それを考え抜くことで顧客像を描き、自社の強みを明らかにし、その価値や魅力を発信する。
コンテンツマーケティングへの取り組みの本質は、なんら目新しいこともない、経営そのものとも言えます。
今回の講座が多可町の事業者の方々のビジネス拡大、ひいては地域活性へのきっかけの一つとなれば望外の喜びです。
イノーバでは今後も「マーケティングで人々を幸せにする」ことを目標に活動を続けていきたいと思います。
主催の多可町商工会のみなさまと。
イノーバ今後のイベント・セミナー予定
2/23(月)「コンテンツマーケティング成功者 Night 〜LIG さん、どうやってブルーオーシャンを作ったの?〜」(主催:株式会社ネットスケット)
2/24(火)【無料セミナー】「顧客ロイヤリティを向上せよ!」コンテンツ×ソーシャルで“選ばれ続ける”ECサイトを作る方法(主催:アライドアーキテクツ株式会社/株式会社イノーバ)
2/25(水)MarkeZine Academy講座「明日からできる!潜在客に『気付き』を与えるコンテンツマーケティング入門」(主催:翔泳社)
3/12(木)【無料セミナー】「徹底理解!コンテンツマーケティング入門セミナー」
人気記事
関連記事