ウェブ解析のプロ・小川卓さんに学ぶ、コンテンツマーケティングにおけるデータ解析「5つのコツ」

デジタルマーケティング

今回は、2016年9月8日に株式会社イノーバで行われた社内セミナー「コンテンツマーケティングにおけるデータの取り扱いと分析について」の様子をレポートします。多数のウェブ解析に関する書籍の著者・小川卓氏が語る、コンテンツ解析のコツとは?

■講師プロフィール

小川卓(おがわ・たく)氏

ウェブアナリストとして、マイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、Amazon Japanなどに勤務。 2015 年3月からフリーで活動を開始。現在は 3社の役員を務めながら、規模に関係なくさまざまなウェブサイトの分析&改善提案をおこなっている。個人ブログ「Real Analytics」を 2008 年より運営。全国各地で、毎年60回以上の講演活動を実施。
公式ホームページ http://www.takuogawa.com/

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コンテンツを評価・解析するためのコツとは?

効果的なコンテンツマーケティングをおこなうために欠かせないのが「ウェブ解析」。コンテンツ(記事)をやみくもに作り、アップし続けるだけでは意味がありません。自分たちが世の中に送り出したコンテンツが、どのような成果につながっているか。それをきちんと評価し、PDCAを回して長期的な視点をもって改善を繰り返す必要があります。

しかし何をもってコンテンツを評価し、何を基準にして改善すればいいのでしょうか? 

今回はウェブコンテンツの評価・解析について、小川さんに5つのコツを教えていただきました。

解析のコツ1:コンテンツは「4つの力」で評価する

小川さんいわく、大量のコンテンツをより正確に評価する切り口は4つあるそうです。それは「集客力」、「閲覧力」、「誘導力」、「成果力」の「4つの力」。将来の顧客となりうる潜在ユーザーに対して力を発揮する「集客力」は訪問者数や流入数によって、また「閲覧力」はページの滞在時間や読了率によって測ることができます。「誘導力」を示すのは直帰率や離脱率。「成果力」を表すのは、いうまでもなくコンバージョン率(中間コンバージョン含む)です。

この4つの力を指標として、コンテンツごとの「偏差値」を相対的に評価していきます。

おがわさんスライド.png

例えば「集客力」と「誘導力」の2つを軸にしてコンテンツの偏差値を出してみると、上記のようなマトリクスができあがります。するとそれぞれの象限ごとに、コンテンツの評価がわかりやすく可視化されます。

このような分類をおこなうと、各象限のコンテンツを並べて比較することが可能になります。つまり「集客力も誘導力もある」記事と「誘導力は低いが集客力は高い」記事は一体どこがどう違うのか……その違いを分析できるというワケです。

解析のコツ2:コンテンツの善し悪しは数値で比較する

また分類した記事の「改善ポイント」を発見するため、小川さんは徹底的に数値を比較しているのだそう。

「(コンテンツを評価する)数値の良い・悪いには、必ず理由があります。数値をもとに記事をよく比較し、そこから得られた気づきをまた記事に反映していくことが、成果の改善につながります」(小川さん)

例えば「閲覧力」を改善したい場合。閲覧力が高い記事と低い記事をピックアップし、それぞれの共通項を見ていきます。

<例)閲覧力が高い記事の共通項>

・記事のトップに画像が入っている

・記事の中に、繰り返し画像や表が挿入されている

・記事の最初と最後に関連リンクが貼られている

こうして発見した共通項を、今度は閲覧力の低い記事にも反映させていくのだそうです。

数字を比較する際に重要なのは、「前提」をもっておくこと。前提なしに数値を比べても、コンテンツの良し悪しは判断できません。オウンドメディアの記事でも、メールマガジンのコンテンツ等でも同様です。前提をもって数値を比較することで、改善ポイントが発見しやすくなるのですね。

解析のコツ3:コンテンツ改修によって「地盤」の強化を図る

コンテンツの「偏差値」による分類、そして前提に基づいた数値の比較と共通項の発見による改善。「これでよいコンテンツを作っていける!」……かと思いきや、やはり、ことはそう簡単ではないようです。

「そもそも、『集客力の高い記事』と『誘導力の高い記事』は全く性質が違うもの。当然、コンテンツの内容にもそれぞれ特徴があります。どちらも力がある記事を目指すのではなく、それぞれのコンテンツをバランスよくミックスし、戦略的に記事を制作することが大切です」(小川さん)

どんなコンテンツなら集客力が高いのか。どういった内容なら誘導につながるのか。ここでもさまざまな数値の比較によって「集客力の高いコンテンツ」と「誘導力の高いコンテンツ」それぞれの共通項を見つけ出します。

そしてまずは意図的に、「集客力の高いコンテンツ」を一定量作成していきます。ある程度流入が確保できたら、次に「誘導力の高いコンテンツ」を作成します。

なぜ、最初に「集客力の高いコンテンツ」を量産する必要があるのでしょうか?

「ある程度の母数(記事数・ユーザーの流入数)がないと、どんなに閲覧力や誘導力を強化しても意味がありません。まずは集客に集中すること。改善フェーズに移行するのはそれからです」(小川さん)

改善フェーズの段階で重要なのは、過去に作成したコンテンツについても改修を重ねていくこと。ウェブサイトでは、過去記事への流入数も無視できないのです。小川さんが運営している個人ブログでも、1年以内に作成した記事へのアクセス数は全体の20%ほど。なんと残りの8割が、それ以前に執筆した過去のブログなのだそうです。

ウェブサイトにおいては、一時的に盛り上がる“バズ記事”と同様に、長期的にアクセスを稼げる記事も重要。地道なコンテンツの解析、そしてそれに基づいて過去記事を含めた改修を重ねていくことが、サイトへの安定した流入の確保につながるということです。

解析のコツ4:解析にはセグメント分けを活用する

ウェブコンテンツを解析する際、単純にサイト全体のPV数や、閲覧者数を見て終わってしまっていないでしょうか。小川さんによると、コンテンツマーケティングの成果を測るうえでオススメなのが「セグメントを活用しまくる」ことだそう。

例えば、以下のようなセグメント分けで数値を見るのが効果的です。

・ウェブサイトに複数回の訪問をしている

・特定のページ、コンテンツ群を閲覧している

・サイト内で複数の記事を閲覧している

・一定期間内にサイトへ再来訪している

どんなにサイト全体のPV数が多かったとしても、その大半が「1度きりの来訪者」で終わってしまっていれば、コンバージョン率がアップすることはありません。しかし複数の記事を閲覧しているセグメントの割合がアップしていれば、そのサイトのテーマに関連する興味・課題をもつユーザーが増えていると考えられます。セグメントの活用によって、PVの「質」を見極めることができるのです。

特に、コンテンツがすぐにコンバージョン(=購買やサービス利用など)につながりにくい商材、サービスを取り扱っている場合は、最終的なコンバージョン率でコンテンツを評価することが難しいものです。その際、ひとつの中間コンバージョンの指標に「再訪率」を加えることで、そのコンテンツの成果力を測ることができます。

解析のコツ5:「+1」のユーザー視点の指標を追加する

これまで見てきたコンテンツの評価・解析方法は、すべて「企業側」の視点に立ったものでした。しかし小川さんは、それ以外にも大切にしなければならない指標があると指摘します。

「企業側にとってのKPIやゴールは、あくまで企業目線で成果を測るもの。ユーザー側からすると全く関係ないんです。例えば1人のユーザーが読むコンテンツのページ数が2ページから倍の4ページになったところで、その企業に対するブランド価値が上がりますか? 決してそんなことはないですよね」(小川さん)

そのために必要なものは何か。それは「ユーザーの満足度を上げること」だといいます。

自分たちが作ったコンテンツは、ユーザーにどのような価値を提供しているのか。コンテンツを閲覧した結果、ユーザーは一体何を得られているのか。どんなアクションにつながっているのか……。

ユーザーが何を求めているのかを改めて考えることで、今までとは違った新たな評価軸が生まれます。「4つの力+1」というKPIを念頭におき、長期的な視点をもってコンテンツ制作に取り組んでいくことの大切さ。小川さんの講演を通して、その意味を再認識することができました。

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小川卓さんの著作は以下をどうぞ

ウェブ分析レポーティング講座』翔泳社 (2012/8/17)

現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書 ~Googleアナリティクスと、その他ツールを使った実践的ノウハウ~』マイナビ (2014/8/23)

入門 ウェブ分析論――アクセス解析を成果につなげるための新・基礎知識 増補改訂版』SBクリエイティブ; 2版 (2013/3/17)