ソーシャルメディアをマーケティングに利用するために知っておくべき「反響の設計」

デジタルマーケティング
ソーシャルメディアの活用には、販促、新規顧客の獲得などの効果あり
2015年12月に、Yahoo! JAPANが企業におけるコンテンツマーケティング実施者/非実施者1,030人を対象に行った『コンテンツマーケティングの実態調査2016』によれば、実施手法で一番多かったのは、2位の「自社ブログ」(49.1%)を抜いて「ソーシャルメディアの利用」(66.6%)でした。活用メディアでは、Facebookが84.8%と最も多く、Twitter(65.0%)、LINE(43.7%)と続きます。
また、NTTコム リサーチとループス・コミュニケーションズによる『第7回 企業におけるソーシャルメディア活用 』(2015年7月)に関する調査で、実際の「ソーシャルメディア運用の具体的な効果」について聞くと、「問い合わせ・アクセス増」や「評判・満足度向上」が実感され、とくに、「新規顧客数の増加」「既存顧客のリピート率の向上」「顧客単価の増加」の上昇が目立っています。
つまり、ソーシャルメディアの活用には、情報拡散による販促効果が高く、顧客とのコミュニケーションの深化やブランディングにも効果を発揮するのです。
コントロール不能のため、対応を誤ると誰もが炎上!?
しかし、気をつけなければいけない点は、ソーシャルメディアの反響は「コントロールできない」ということです。コンテンツを受け取った消費者や顧客の反応やコメント、情報の拡散は、発信者の思い通りに運ぶとは限りません。以下に、海外でのいくつかの炎上例をご紹介しましょう。
【炎上例1】場違いなツイートで、メディアに叩かれる
米ファッションブランドのケネスコール(Kenneth Cole)は、2011年のエジプトでの政治状況の緊迫が連日報道されていた際に、
「何百万もの人々がカイロで大騒ぎをしている。うわさによると、彼らは私たちの新作春のコレクションがオンラインで買えるようになったことを聞いたらしい。」
と、#Cairoというハッシュタグをつけて、自社Twitterアカウントからツイート。コメントの最後には、自社の販売サイトのリンクを貼り付けていました。このツイートは、スクリーンショット付きで、CNNを始めとする大手メディアで報道されてしまいます。情勢を読まない無神経な内容が、世間から反感を買いました。
【炎上例2】「反響」を読み間違えて、揶揄が殺到する
グローバル総合金融サービス のJPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)では、伝説的なディールメーカーであるジミー・リー副会長 とフォロワーとのTwitter上でのQ&Aセッションを企画。
しかし、ビジネスの助言を求める内容ではなく、過去の不正疑惑や貧者を無視するようなビジネスのやり方への揶揄(やゆ)が殺到し、企画は中止に追い込まれます。良かれと思い対象を一般に広げるも、その一般層が企業に対し抱える好感度を読み違え、無法状態の発言の場と化してしまいました。
【炎上例3】キャンペーン内容の対応を誤って、メディアを賑わす事態に発展
ノルウェーの大手チョコレート会社フレイア(Freia)が、人気チョコレートのパッケージデザインに消費者が自由に言葉を書き込み、SNSに投稿できるというキャンペーンを実施。
ところが、ノルウェーでは、原材料であるパーム油は、「熱帯雨林の破壊」という意識が広まっていたために、「熱帯雨林を壊さずに、イースターチョコを食べたい」「燃える熱帯雨林の味」などハッシュタグ付きで画像が拡散。フレイア社では、クレームに応える代わりに、禁止用語を設定。そこからさらに火種は広がり、国内大手メディアで大きく報道される結果に。消費者が常日頃から思っていた問題意識とクレーム内容を完全無視したことにより、火に油を注いでしまいました。
ここに挙げた炎上経験企業は、ソーシャルメディア初心者というわけではなく、むしろ、積極的なユーザーです。しかし、「情報がどのように広まるのか」という反響の設計や炎上後のリスク管理が不十分であったため、事を深刻にしてしまったのです。
リスク対策の方法 考え方のポイント
こうしたリスクと向き合うためには、ソーシャルメディア活用への認識を正しく持つことが大切です。
よく聞かれるのは、「ソーシャルメディアさえ展開すれば、すぐに売り上げにつながる」という“金のなる木”的な期待ですが、これは改めるべきです。まず、特性を理解しましょう。
ソーシャルメディアの基本的な特性
- 良いことも悪いことも広く拡散してしまう。
- コントロールは困難
そのため、発信する内容には、しっかりとした計画と設計が必要となります。そのためには、以下のような活用への正しい認識を持つことが重要です。
ソーシャルメディア活用のための正しい認識
- 一方向発信のマスメディアと異なり、顧客との「交流の場」と捉える。
- 顧客/潜在顧客との長期の関係の構築を視野に入れ、顧客エンゲージメントを獲得する場である。
管理の設計・リスク対策の方法
ソーシャルメディアの炎上は、企業側の投稿やコメントに不適切・不正確な内容や行為があった場合や寄せられたクレームが原因として起こります。そうした事態を事前に防ぐには、具体的に、以下のようなリスク対策が考えられます。
- ソーシャルメディアをモニターする
炎上の火種が小さいうちに消火するには、インターネットをモニターする必要があります。
しかし、毎日ネット上を検索することは不可能。そこで「Googleアラート」などのブラウザやアプリのモニター機能を利用するのも、ひとつの選択肢です。自社に関するキーワード(社名、商品名、ブランド名、広告のキャッチコピー、SNSアカウント、URL、代表者名、担当者名等)を登録しておくと、ネット上やSNS内のつぶやきでキーワードが出たときに、お知らせメールが届く仕組みとなっています。すると、実は風評被害が起きていた、会社側で気付いていない過失があり文句が上がっていたなどの情報を早い段階でキャッチすることができます。
- 対策ガイドラインを作成する
問題が発生した際に、どのような対策を取るべきかの方針や具体的な事例による対処法を示したガイドラインの作成をしましょう。
例えば、大炎上の大きな原因のひとつは、対応の遅れです。早急な対応を指針として設定することで、このミスは防ぐことができます。そのほかにも、どのような投稿に返信すべきか、批判に対する基本姿勢の取り方、謝罪文はどのように書くべきか、公に/個人宛に返信するか、などケース・バイ・ケースのガイドラインの作成も、いざと言うときに役立ちます。
- 問題発生時に備え、チームを編成する
早くに問題に対処できるよう、予め対策チームを編成しておきましょう。想定外のトラブルが発生した際や具体的な対処法を考えるとき、足並みをそろえる時間が節約でき、早急かつ適切な解決策を話し合うことができます。
- 社員向けにも「ガイドライン」の作成
炎上は、内部からも起きます。例えば、不動産会社社員が有名人夫妻の新居情報を流してしまったなど、従業員のプライベートSNSが原因となる事件もあとを断ちません。
当人の「プライベートだから」という低い危機管理意識から、ちょっとした内情や機密に関するつぶやきが、ブランドに傷をつけるような大きな問題に発展することもあります。社員に対する周知徹底したマナーとルールの定着に取り組んで、組織として危機管理をおこなうことが不可欠です。
完全にコントロールすることができないソーシャルメディアですが、その反響を設計し、管理することは可能です。上手な活用ができれば、低コストと少ないリソースで大きな効果を期待できます。
参考:
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