ダイレクトメールに学ぶマーケティングの偉大な歴史

インバウンドマーケティング

ダイレクトメールと聞くと、不特定多数の人にチラシを撒くプッシュ型のマーケティングといったイメージを受ける人も多いのではないだろうか。しかし、ダイレクトメールは正しく使えば、嫌がられるどころか、顧客と中長期的な関係を築ける有効な施策だ。

1900年代のダイレクトメール事例

ダイレクトメールはインバウンドマーケティングに欠かせないツールの1つとして、1世紀以上に渡り使われ続けている。ここでは1900年初頭から、アメリカの各メーカーやブランドが展開したダイレクトメールの事例を紹介し、その効果的な使い方のヒントを探ってみよう。

1900年頃-1930年頃 米石鹸メーカー Colgate Palmolive

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「FREE - a Full Size Cake - Price 10 Cents.(10セントの石鹸を無料でご提供します)」

引用元:https://onbeyondholcombe.wordpress.com/2015/03/12/b-j-johnson-soap-co-manufacturer/

米石鹸メーカー Colgate Palmoliveが配布したクーポン付きダイレクトメール。左下にトラッキングコードが記載されているのがわかる。

オハイオ州クリーブランドがテストマーケティングのエリアに選ばれ、大規模なキャンペーンが展開された。このクーポンを地元のショップに持ち込むと、無料でPalmoliveの石鹸と交換できる仕組みである。ターゲットとしていた主婦層に20万通を配布したところ、一週間以内に2万通のクーポンが商品と交換された。この施策によって、Palmoliveはこの産業におけるリーダーのポジションを獲得した。

1900-1945年 米大手歯磨き粉ブランド Pepsodent

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「10-Day Tube Free(10日分のサンプルを無料提供)」

引用元:http://justjasonjames.com/direct-response-copywriting-examples/

歯を美しく保つためのお得な情報を盛り込んだPepsodentのダイレクトメール。Pepsodentの歯磨き粉を10日分、無料で提供して試してもらう取り組みだ。無料のキャンペーンで消費者の関心をひき、実際に使ってもらうことで商品について理解してもらうことで、購買に結びつける戦略である。

1920年代 米自転車メーカー Mead Cycle Company

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「30 Days Free Trail(30日無料で試乗できます)」

引用元:https://econsultancy.com/blog/61934-nine-conversion-techniques-from-the-1920s-to-try-today/

米自転車メーカーのMead Cycle Companyが1920年代に配信したダイレクトメールは、無料で自転車の試乗機会を提供するものだった。期限付きクーポンはレスポンスがよく、高い効果をあげた。

「広告は博打ではない」ダイレクトメールの画期的な発明

ダイレクトメールのこの手法は、およそ100年前に、クロード・ホプキンス氏によって発明された。

1900年初頭まで、広告はやってみなければわからないという博打の要素を多く含んでいた。ホプキンス氏が当時打ち出したA/BテストやPCDAの概念の元となるこのダイレクトメールのレスポンスが見える仕組みは画期的であった。

レスポンスを計測する仕掛け

ホプキンス氏は、ダイレクトメールに割引クーポンや無料サンプル申し込みの特典をつけて送った。
これに興味を持ったターゲットは、クーポンを同封して郵便で申し込みをしたり、ダイレクトメールに記載されている専用の内線番号へ電話をかけたりする。この仕掛けによって、どのダイレクトメールから何件のレスポンスを獲得したかを明確な数値で計測することができた。

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ダイエットメーカーのクーポン付きダイレクトメール

(右下の「4M-150」が計測に必要なレスポンスコード)

引用元:https://econsultancy.com/blog/61934-nine-conversion-techniques-from-the-1920s-to-try-today/

A/B テストの発明

ダイレクトメールの画期的な発明の1つがA/Bテストによる効果検証の仕組みである。複数パターンのダイレクトメールを制作し、ターゲットに郵送する。それぞれのレスポンスを計測し、より効果の高いダイレクトメールを作り上げていく。

マーケター側は、新規顧客獲得、コンバージョンアップ、売り上げアップ、ROI向上のために、マーケティング戦略を立てることが可能になった。何よりもターゲットが欲している情報を知るために、計測、分析、改善する仕組みを確立したことは大きい。

クロード・ホプキンスのこの発明が後の広告、マーケティングに与えた影響は大きい。彼の著書『広告マーケティング21の法則』は、かの有名なデビッド・オグルヴィやダン・ケネディも絶賛しており、今もなお、多くのマーケターのバイブルとなっている。

ターゲットにアクションを起こさせるツールとしてのダイレクトメール

一方的に送りつけるスパムのようなイメージもあるダイレクトメールだが、効果的に配布すれば強いインバウンドマーケティングのツールになる。

ダイレクトメールへのレスポンスは、ターゲットからの承諾のサインでもある。例えば、割引クーポンやサンプル申し込みのアクションは、潜在顧客が見込み客になるサイン、見込み客が比較・検討のプロセスに進みたいというサインだ。

ダイレクトメールは、買い手とコミュニケーションをとりながら関係性を進めることができるツールなのである。

「納得して買う」理想の購買プロセスが根強いファンを育てる

ダイレクトメールの内容が魅力的であれば、ターゲットは納得して次のステップに進むことができる。これは、製品を購入したり、サービスを申し込んだりするに至るまでの理想的なプロセスである。納得して製品を買った顧客の企業へのロイヤリティは高い。

結果的に、企業は中長期的な安定顧客を得るとともに、売り上げの安定を図ることができる。これらのメリットこそが、ダイレクトメールが長きに渡って実践されてきた理由であろう。

まとめ

ダイレクトメールは、インバウンドマーケティングを成功させる戦略の1つとして長きに渡りその効果を発揮してきた。
ITの進化により、そのシェアは以前に比べ変化しているものの、独自の役割を果たすことができる。オフラインの潜在顧客を自社のウェブサイトへ誘導し、オムニチャネルな展開をすることも可能だ。

ダイレクトメールの戦略を正しく理解すれば、ターゲットとのコミュニケーションをフォローアップするツールとして、成果につなげられるだろう。

参考:

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