企画力を高める4つの習慣―インプレス編集長の頭の中をのぞいてみた

コンテンツマーケティング

デジタルマーケティングの戦略家レベッカ・リーブは、コンテンツマーケティングの極意として、“Think Like a Publisher(編集者のように考えよう)”と唱えています。

コンテンツマーケティングやオウンドメディアを運用するWeb担当者は、ユーザーを引き付け、関係性を構築してビジネスにつなげるコンテンツ作りの技術、まさに、「編集者」としての力量が求められるのです。

では、出版業界で活躍する編集者たちはどのようなことを考えながらコンテンツを作っているのでしょう?

今回は、イノーバの宗像、亀山著の書籍『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本 人気講師が教える宣伝せずに売れる仕組み作り (「いちばんやさしい教本」シリーズ) 』の編集を担当していただいた、株式会社インプレスの執行役員の藤井貴志さんにお話をうかがい、編集のヒントを探りました。

いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本 人気講師が教える宣伝せずに売れる仕組み作り (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本 人気講師が教える宣伝せずに売れる仕組み作り (「いちばんやさしい教本」シリーズ) 』宗像 淳 (著), 亀山 將 (著), インプレス

株式会社インプレスで、できる編集部・クリエイティブビジネス編集部・できるネット編集部の3つの編集部の編集長を兼務する藤井さんはどんなふうに企画を作っているのでしょうか。

(聞き手:イノーバ マーケティング部 南さくら)

企画力を高めるにはインプットとアウトプットのくり返ししかない

—— 藤井さんは、これまで『できるシリーズ』をはじめ、多くの書籍や雑誌を世に送り出してこられましたが、いつも、どのように企画を作っているのでしょうか?

藤井さん(以下敬称略): 
「よし、これから企画を作ろう!」と思って根を詰めて考える時間というのはありません。「いつもなんとなく考えている」という感じでしょうか。生活していると日々いろんな情報に接したり刺激を得たりしますが、いつもそのなかから企画のヒントになるものを探している感じです。

「忙しくて企画を考える時間がないから、毎週、1時間は企画のための時間を取らなきゃ」と言っている人もいますが、それはあまり意味がないと私は思います。企画は思いつきやひらめきによる「発明」ではなく、身のまわりのふとしたところに転がっているものを「発見」するようなものだと思っているからです。

—— 時間があれば企画を作れるわけではないということでしょうか?

藤井:
企画をたくさん出せる編集者を見ていると、企画を作るための時間をわざわざもうけるようなことはしていません。むしろ、人に会いにいったり、イベントに出かけたりして、忙しくしているものです。

——オフィスで考え込むよりも、外に出た方がよさそうですね。

藤井:
そうですね。企画を立てるにあたって、人に会ったり、本を読んだり、いろいろなものに触れたりして情報をインプットすることは欠かせませんね。私が編集者だから言うのではありませんが、とくに読書については、費用対効果の面でも非常にすぐれたインプットの手段だと思います。

—— 企画を作るには、まずは情報収集から、ということですね。情報収集をする際には、企画や書籍が「売れるかどうか」は、はじめから考えるのでしょうか?

藤井:
ビジネスである以上、書籍が売れるかどうかは常に考えていますが、企画が生まれるきっかけで言えば、人との出会いによる縁から生まれる場合が多いですね。うち(株式会社インプレス)は専門書を取り扱う版元なので、特定の分野で高い専門性を持つスペシャリストの方々とのお付き合いが多いのですが、そんな方々とお話しするなかから、「あ、これは企画になりそうだ!」と思ったものを膨らませて、企画が生まれることもよくあります。

企画を考えるということにおいて、「こうすればすぐにいい企画を立てられる」という特効薬のようなものはありません。そうではなく、いつも頭の片隅で企画のことを考えながら日々を過ごしていくことで、常にいろんな物事を企画のアイデアとして摂取できるようになる。そうしてだんだんと企画体質になっていくんじゃないでしょうかね。

—— 企画が生まれやすい状態を作っておくとも言えそうですね。

いい情報を発信するところにいい情報が集まる。アウトプットの重要性

—— 企画力を高めるために、ほかにどのような方法があるでしょうか?

藤井:
情報やアイデアをじっと抱え込まないでアウトプットすることも大切です。人に話したり、ブログを書いたり、SNSで発信したり。今ではいろいろな手段がありますね。

「アイデアの風通し」と言いますか、いつも自分のまわりでいろんなおもしろいことについての会話や情報が流れている状態を作ることを心がけています。なので私は仕事中も近くにいる人に「これおもしろくない?」「これどう思う?」といった話をよく振っています。自分やチーム内でのアイデアの風通しをよくしたいと思うからです。まわりの人は迷惑かもしれませんけどね(笑)。

—— なぜ企画をするうえでアウトプットが必要なのでしょう?

藤井:
よく、「いい情報を集めたければ、いい情報を発信しろ」と言われます。アウトプットが大切なのは、情報というのは出しているところに集まるものだからです。著名なブロガーの方などがいい例ですね。ブログで発信する情報の質が高ければ高いほど、その人と話をしたい、意見を聞きたいと、いろんな人や情報が集まってきます。ブログでのアウトプットが結果的に質の高い情報収集にもなるわけです。何かをアウトプットすることで、表現や編集の工夫も学べますしね。

「なぜ?」と疑問を持つ習慣が、編集力を高める

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—— 情報収集するときには、世の中のトレンドも参考にしておられますか?

藤井:
そうですね。新しい情報は常に気にしてはいます。でも、編集者は世の中の動きだけでなく、自分の感覚や感性にも敏感になる必要があると思っているんです。

—— 自分の感性に敏感になる?

藤井:
はい。普段なにげなく生活していると、ものを見て「きれいだ」「なんか嫌だ」と思っても、「なぜきれいだと思ったのか」「なんで嫌だと感じたのか」を深くは考えないものだと思います。でも編集者のように何かを人に伝える仕事では、人間の気持ちが変化する因果関係にどれだけ敏感であるかが、とても大切な資質だと思うのです。

たとえば、毎日、会社に来るまでの間に、たくさんの情報に触れますよね。そのなかで印象に残ったものがあったら、「なぜ、これが気になったのか」を考えるのです。

電車で気になる中吊り広告があったケースを例に言うと、「なんで自分は今、この広告をいいと思ったんだろう?」とか、逆に、「なんでちょっと嫌だなと思ったんだろう?」と、その理由を掘り下げて考えてみるのです。色使いがビビッドで目立っていたから気になったのか、文字の書体がきれいだと思ったからなのか、あるいは自分が好きなタレントの名前が載っていたからなのか……。そもそも好きな雑誌だったからなのか? いろんな理由が挙げられるんじゃないでしょうか。

そんなふうに、その広告が自分に刺さってきた理由をあれこれと考える。そこには、人の気持ちをどうすれば動かせるのかのヒントがあるはずです。「なぜ?」と問う習慣は、編集のトレーニングにもなると思います。

ふだん目に入ったものを分析することを習慣化するだけで、自分なりの仮説をたくさん立てられるようになります。

—— 自分なりの仮説とは?

藤井:
「この表現手法を使えばこういう反応を引き出せる」という仮説です。色で伝えるのか、文字で伝えるのか、ビジュアルを使うのか、ネームバリューやブランド力を生かすのか、など、こうすればああなるという伝え方と受け手の反応の関係を、自分なりの仮説として豊富にストックしておくということです。

人の気持ちを少しでも揺さぶれる表現には、必ずそうするための仕掛けがなされています。それをいくつストックできているかは、すごく大事だと思うんですよ。人の気持ちを揺さぶれるワザを、いくつも自分の引き出しのなかに収めておく。そうすれば、自分が何かを表現するときに、「今回は、あの手法を試してみようか」っていうのが自然と思い浮かぶはずです。

—— 表現手法のバリエーションを持っておく、というようなことでしょうか。

藤井:
はい。書籍を例に言うと、手に取ってもらうためにはどうするかを考える。書籍は、どこかしらに引っかかりを作らないと、なかなか手に取ってもらえません。振り向いてもらうために必要なのは何かを考える。

五感に訴えるのもひとつの手ですね。書籍のカバーにUV印刷を使って文字に凹凸を与えて触覚に訴えたり、ラミネート加工で文字をキラキラさせて視覚に訴えたりするとか。Webの記事において、まずはクリックしてもらうためにOGPイメージやタイトルに凝るのと同じですよね。

自分の気持ちの動きに丁寧に向き合うことを習慣化することで、「相手のどんな反応を引きだすには何が効くんだ」っていう因果関係の、自分なりの仮説を増やしていけるのです。

今すぐ使えない表現手法でも、常にストックし続ける

—— 表現手法のバリエーションを広げるために、どのようなことをしておられますか?

藤井:
さきほど申し上げたように、日常的に「あれっ!?」と引っかかったものを集めておくことでしょうか。私はなにか気になることがあればiPhoneでEvernoteに写真やメモをどんどん放り込んでいきますね。

あとは雑誌の編集部にいたときは、よく海外の雑誌の記事などをスクラップしていました。「こんなレイアウト、俺には思いつけないだろうな」とか「いつか自分でこういうのやりたいな」と思いながら……。こうして集めた表現手法がいつか必ず使えるとは限りません。でも、あるタイミングで、「あっ、この企画ならアレが使えるぞ!」っていうのがあったときはテンションが上がりますね(笑)。

—— 企画ができてから手法を考えるのでなく、企画と手法をほとんど同時に考えておられるようですね。

藤井:
そうですね。「誰に」「何を」「どうやって」伝えるのか? ということはセットで考えていますね。そのどれか1つでも欠けると企画としては不安定なものになってしまうので。

その意味でも、いつどんなアイデアに出会っても、それを適切に表現したり編集したりできるようにトレーニングしておく必要があるのです。表現や編集の手法はきっと無限にあるはずなので、いざ何かを作るときにピッタリな表現がすぐに出てこないこともよくあります。さきほど述べたように、世の中にいっぱい転がっている伝え方のヒントを常にひとつずつ、学んでストックしていくことは、編集者としての基礎体力を高めることにつながるのではないでしょうか。

—— ありがとうございました。

まとめ

コンテンツ作りの肝となる「企画力」は、情報収集力を高めること、さらに、表現手法のバリエーションを広げ続けることで鍛えられていくようです。

編集のプロは、以下のような4つの習慣を持っていることがわかりました。

  • オフィスを出て情報収集をする
  • アウトプットを意識する
  • 自分の感情の動きを分析する
  • 表現手法をストックする

コンテンツの「企画力」を鍛えたいという方は、まずはこれらの習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。