「おじいちゃんのノート」から学ぶネット時代のマーケティング3つのヒント

デジタルマーケティング

はじめまして! イノーバの新人インターンの大場です。

さて、今回は先日反響を呼んだ「おじいちゃんのノート」についてお話ししたいと思います。

東京都の小さな印刷所が開発した方眼ノートが、Twitter拡散で一気に話題になり、注文が殺到したという出来事です。

このケースが示唆する現代のマーケティングについて考えてみたいと思います。

(ニュースについてより詳しく知りたい方はこちら:「おじいちゃんのノート」注文殺到 孫のツイッター、奇跡生んだ偶然/withnews)

1. Attentionを起点とする購買行動モデルの終わりとDECAX時代の到来

まず今回のケースは、AIDMA(アイドマ)のように「Attention(注意)」を購買行動のスタートとする時代が過去のものとなりつつあり、私たちがDECAX(デキャックス)の時代に生きているということを如実に示しているのではないでしょうか。

(AIDMAとは、Attention(注意), Interest(関心), Desire(欲求), Memory(記憶), Action(行動)の頭文字をとった、購買行動モデルの元祖) 
Attentionから始まるモデルとしてはAIDMAのほかに、「AISAS(アイサス)」や「AISCEAS(アイシーズ)」、「Dual AISAS(デュアルアイサス)」があります。これらのモデルはマス広告が人々のAttentionを引くことが情報との最初の接点であるということを前提に設計されたモデルであり、スマートフォンやSNSで日々新しいものに接する現在の人々の情報行動に即したものではありませんでした。

広告で消費者の注意が全く引けなくなったということはありません。しかし、人々がフォローするサイトやアプリ上のコンテンツを通して、日常のなかで能動的に商品を発見することが多くなってきていることは明らかでしょう。

そして今回の「おじいちゃんのノート」は、DECAXの購買行動モデルでうまく説明することができます。

DECAX(デキャックス)は、発見(Discovery)→関係作り(Engage)→確認や注意(Check)→行動(Action)→体験と共有(eXperience)という、新しい購買行動モデルの一つで、これを今回のケースに照らしてみると、以下のようになります。

まずフォロワーは孫娘のツイートを通してノートをDiscover(発見)します。能動的に発見しているのでノートとのEngage(関係作り)は高い確率で起こり、Check(確認や注意)の段階へと移ります。今回はノートが特許も取得した素晴らしいものだったので、確認にかかる時間は短縮されたでしょう。そして購入というAction(行動)が起きました。

さらに購入した人たちがノートについてExperience(体験と共有)することによって、またDECAXの流れが起こるという好循環をもたらし、瞬く間に方眼ノートの在庫がなくなりました。

このように、広告によるAttentionの重要性が相対的に低下する時代となっているのです。

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(DECAXをはじめとする購買行動モデルについて詳しくはこちら:コンテンツマーケティング時代の購買行動モデル「DECAX」を考える)

2. バズるのにマストなのはストーリー

今回おじいちゃんのノートはSNSなどを通して瞬く間に拡散され、Amazonで売り切れになるまでにバズりました。ヤフーのトップ画面にも掲載された今回の拡散には、図らずも構成された、心を揺さぶるストーリーが大きな力を発揮していました。

まずは特許取得に至るまでの苦難の道のり。今回のノートは70歳を超えた中村輝雄さんと製本業を営んでいた男性が2年間をかけやっとのことで成功させたものでした。しかし、広告費用が捻出できなかったことから効果的な販促活動は行えず、多くの在庫を抱えていたそうです。そして、それを救ったのがおじいちゃん思いの孫娘の行動。「友達にあげるように」と、おじいちゃんからノートを渡された彼女は、それが売れるようにとTwitterを通しての拡散を試みました。

このような、心を揺さぶり感動や驚きを与えるストーリーが構成されていたことが今回のバズりにつながったのです。

実際の最初のツイートのスクリーンショットが添えられた画像。現在は予想以上の反響があったため「欲しい人言ってください!」と書かれた最初のつぶやきは削除されています。

(「バズる」についてはこちらをどうぞ:「流入しない」「バズらない」「コンバージョンしない」コンテンツの効果が出ないときにやるべきこと)

3. ニーズを捉えた商品創りの重要性

人々のニーズをしっかりと見極めることの重要性。これが今回のケースで考えるべきことの3つ目です。あまりに当たり前すぎると思われるかもしれませんが、DECAXの時代にあって、ニーズを満たせない商品はますます売れにくくなっています。

DECAXの購買行動モデルにあるように、現代の消費者はCheck、つまり商品の確認を厳しく行います。インターネットのない時代こそ情報の発信元はそのほとんどが売り手に限られていました。しかし、現在は買い手によるネットでの情報収集や発信が頻繁に行われており、商品は厳しく評価されます。

それゆえに売り手はニーズやウォンツのリサーチを怠ることなく、新しい商品を創る必要があるのです。ビッグデータを用いた消費者行動の分析もこの流れにあるのでしょう。その点、おじいちゃんのノートは見開きで一枚になるというユーザーの願望を実現したものでした。

まとめ

いかがでしたか? 確かに今回「おじいちゃんのノート」が孫娘のツイートをきっかけに売れたことは単なる偶然だったかもしれません。しかしこのように振り返ってみると、その一連の流れは理にかなったものであり、必然であったとも言えます。

莫大な広告費を用意せずとも、ニーズを捉えた商品を創り、Webでの効果的な宣伝さえ行うことができれば、多くの人にチャンスがあるのが今の私たちが生きる時代なのです。

参考:

「おじいちゃんのノート」注文殺到 孫のツイッター、奇跡生んだ偶然/withnews

本当のところ、みんな、どんな行動をしている?/電通報

日本の企業はコンテンツマーケティングと相性がいい?/電通報

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