導入後に後悔しないマーケティングオートメーション選びとは?失敗例と成功の5つのポイント

マーケティングオートメーション

近年、注目を集めている「マーケティングオートメーション」。見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)とニーズ育成(リードナーチャリング)のマーケティングプロセスを「自動化」するシステムです。米国で200以上、国内でも10以上のベンダーがあり、ツールの選択肢は広がっています。

日本でもツールを導入する企業が増えてきていますが、「効果的に活用できない」「当初期待していた効果が得られない」という声も聞かれます。今回は、マーケティングの本場・米国におけるマーケティングオートメーションツール運用の実態を踏まえながら、なぜ日本企業が失敗するのか、日本企業に適したマーケティングオートメーションとはどのようなものかを考察します。

2015年時点で14万社がマーケティングオートメーションを導入

広大な国土に多様な消費者が存在する米国では、早くからマーケティングが発達してきました。米国企業にはCMO(最高マーケティング責任者)が統括するマーケティング専門の部署が配置され、社内のマーケティングのプロセスは確立されており、ツールへのリテラシーが高い人材もそろっています。

そのような環境だけあって、マーケティングオートメーションが開発されると、米国ではたちまち普及しました。ある調査によると、2015年時点で、マーケティングオートメーションを導入している企業は14万社を超える勢いとなっています。ところが、さらに詳しく調べてみると、意外にも上位10,000のWebサイトのうち、わずか369の企業しかマーケティングオートメーションを実装していないことが分かったのです。(参照:The Marketing Automation Industry in 2015: Vendor Market Share & Overview)なぜ、マーケティング先進国の米国でも、日本と同様、マーケティングオートメーションツールの運用に失敗している企業が多いのでしょうか。

実は、米国でも機能を使いこなす企業は少ない?

マーケターを対象にマーケティングオートメーションの導入・運用について調べた報告書では、「想像以上に時間とコストを要した」という意見が32%で、1位でした。次に「購入費用が高額だった」(24%)、「ツールを使えるスキルを持つ人材が必要」(24%)、「運用するには十分なリソースが必要」(21%)と続いています。(参照:The Untold Truths and White Lies of Marketing Automation Software

つまり、マーケティングオートメーションツールを導入したのはいいものの、当初考えていたよりも人材や時間などのリソースがかかることが分かり、すべての機能を利用するには至っていない、というのが実情のようです。初期投資の大きさを踏まえると、現状ではROI(投資対効果)はかなり低いとみられます。

さらに、見込み客の購買意欲をはかる「リードスコアリング」などの高度な機能が複雑なあまり、設計や分析などの作業に時間を取られて、忙しいスタッフの足を引っ張ってしまうトラブルや失敗も起きています。

日本企業が陥りがちなマーケティングオートメーション導入の失敗例

日米では、Webマーケティングの浸透度もさることながら、企業内でのマーケティング組織体制やマーケティング担当者の経験や知識に大きな差があります。そのため、魅力的な機能に惹かれて、外資系マーケティングオートメーションツールを導入しても、当初期待していた効果が得られず、「費用はかけたのに使わないまま放置してしまった」などという失敗例が後を絶ちません。

ツールの導入や運営上のさまざまな理由により、結果的にマーケティングの「自動化」に至らなかった日本企業の例をご紹介します。

■ ツールの設定が想像以上に難しく面倒だった

リードスコアリング機能、ナーチャリング機能、CMS機能、SEO対策機能など、ハイスペックが売りのマーケティングオートメーションツール。しかし、各機能を活用するための的確な設計には、手間と時間がかかります。実際にあるツールを導入した企業では、「設定が面倒過ぎて、やる人がいない」という声も。

なお、海外のベンダーは、ツールの機能をアップデートして製品の価値を高めることをミッションにしているため、日本でのサポート体制がまだ十分ではありません。販売代理店が知識不足であることも多いので、外資系マーケティングオートメーションツールの導入時には注意が必要です。

■ 結局、一斉メールにしか使っていない

ツールの各機能の設定が面倒だった結果、結局は、一斉メールにしか使っていないという事態も数多く起きています。これでは、せっかく高いコストをかけても全く使っていないも同然です。マーケティングオートメーションでは、見込み客の購買検討段階やニーズに応じて、適切なコンテンツを、適切なタイミングで提供する必要があります。コンテンツが不十分な状態でツールだけ導入してしまうと、サイトへの流入も少なく、メールを一斉送信するだけになってしまうのです。

■ サイトに流入がなく、スコアリングがたまらなかった

サイトの訪問者や閲覧者が少ない場合は、スコアリングの対象となる顧客が少なくなります。ツール導入後、スコアがたまらないまま半年間経ってしまったというケースも。待てど暮らせど、スコアリングでリードにコンバージョンしたお客さんが現れない。ようやく「そもそも商品ページを見てくれる人が少なかった」ことに気付きました。この例では、まずサイトへのアクセスを増やす戦略を練らなければなりません。

■ コンテンツを作る手間が予想以上にかかった

マーケティングオートメーションにおいて、ツールの機能と同じくらい重要なのは、顧客のニーズに応じたコンテンツです。自社を知ってもらうためのコンテンツから、興味を持ってもらうためのコンテンツ、競合他社にない優位性を示すコンテンツまで、多岐にわたります。

米国で行われた調査でも、対象企業の70%が、マーケティングオートメーションツール運用のハードルとして「十分な量のコンテンツを適正なコストで準備すること」を挙げています。(参照:リードスコアリングは意味がない?マーケティングオートメーションで失敗しがちなポイント【MarkeZineDay 2015 Autumn講演レポート】)優良なコンテンツをコンスタントに発信していくことにも、十分なリソースが必要なのです。社内でカバーできないときは、外部のスタッフを使うなど体制を見直す必要があります。

■ 他部署との連携ができず、的確な設計ができなかった

日本企業では、マーケティング専門の部署や担当者が存在しないこともありますが、マーケティングやシステムの部署でマーケティングオートメーションを担当する場合には、自社商品やサービスが「誰に」「どのように」買われるかに詳しい営業部との連携を強化することが重要です。連携が弱いと、コンテンツの的が外れていたり、見込み客の評価軸を見誤ったりしてしまうかもしれません。営業担当者とよく相談して、リードジェネレーションやナーチャリング、スコアリングのための設計をすると、より作業の精度が高まり、効果的にツールを運用していくことができます。

■ 一部の機能に依存しているため「やめるわけにはいかない」

現在、導入しているツールの機能を十分に使いこなしていなくても、メールの一斉送信など一部の機能に作業を依存しているため、「使うのをやめられなくなってしまった」という声もよく聞きます。また、他のツールへ乗り換えるのも面倒だからと、そのまま使い続けてしまう企業も。ROIが高くないまま、同じツールを使い続けるのは、企業にとって決して前向きなことではありません。自社や部署の課題や状況を把握して、再度、適切なツールの導入の検討をしましょう。

マーケティングオートメーション導入・運用を成功させるために知っておくべき5つのポイント

それでは、そうした米国での意外な実態をもとに、日本企業がマーケティングオートメーションツールを効果的に運用するためには、どのようなことが必要なのかを見ていきましょう。

1. Webマーケティングのノウハウを持つ人材は必須

マーケティングオートメーションは、マーケティングを「自動化」するというネーミングの影響か、マーケティングの知識や経験の浅いスタッフでも結果が出せるという夢を抱かれがちですが、あくまで正しく導入し、適切に運用されてこそ、効果を発揮するものです。そのためには、基本的なwebマーケティングの知識が必要です。少なくとも、受信者ごとに最適化する「メールマーケティング」の戦略、ユーザーにアクションを促す「CTA(Call to Action: 行動喚起)」の設計、効果測定などのノウハウが求められます。

2. 十分なリソースを確保する

前項で紹介した米国での報告書の結果からも、マーケティングオートメーションツールの運用には十分なリソース、特に人材が必要であることが分かります。米国のマーケティングオートメーションツールベンダーMarketoが推奨する、効果的に運用するための必要人員は、およそ6~7人。マーケティングオートメーション運営責任者の他に、メールマーケティング、ランディングページ作成、効果測定、CRM(顧客管理)が各1人、マーケティングコミュニケーション(マーコム)が2人という構成になっています。このうち、専任となるのは3人で、コンテンツやランディングページの作成に関しては、他部署からサポートを受ける形でもいいようです。(参考:How to Structure Your Marketing Automation Team for Success

ツール運用のための実際の必要人数は、ツールの種類やマーケティングオートメーションで達成したい目標によりますが、十分に機能を活用には、人的リソースの確保は必須です。

しかし、日本において企業のマーケティング体制が不十分だと言われているなか、これだけの人材を確保できる企業は限られています。そのため、スペックが高すぎるツールは扱い切れないという状況が生まれています。

3. リードスコアリングは万能ではない

マーケティングオートメーションツールの目玉機能のひとつである、見込み客の購買意欲をはかる「リードスコアリング」。見込み客の属性、興味、活性度といった情報に基づいて、検討度に加点・減点していくものですが、この概念を理解することはできても、的確な設計をすることは、かなり難易度が高いと分かってきています。

例えば、ホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーと、資料請求を行ったユーザーと、どちらがどのぐらい優先度が高いかを判断できるスタッフはほとんどいません。また、ブログを100記事閲覧したユーザーは、自動的に「ホットリード」(購買意欲の高い顧客)」になりますが、実際にはバグが多数混ざっていることも。しっかりした設計をしなければ、実際に手に入るデータは役に立ちません。リードスコアリングが万能ではないことを理解しておくことが必要です。

4. 十分な顧客リストが必要

米国では、企業がハウスリストを購入してビジネスに利用することが許可されています。ハウスリストとは、リードジェネレーションやナーチャリング、スコアリングにより収集した顧客情報のこと。日本では、こうした顧客情報の売買は個人情報保護法によって規制されているため、自社で独自にデータを収集しなくてはいけません。しかし、メールマーケティングのオートメーションとして生まれた外資系マーケティングオートメーションツールでは、日米の法律や商習慣の違いから、顧客情報獲得のための機能を持たないものもあります。

5. メール制作のノウハウが必要

米国と日本では、メールマーケティングの戦略と制作の洗練度に大きな違いがあります。日本では、購読者に一斉送信される「メールマガジン」に代表されるように、受信者ごとに最適化するメールマーケティングはまだ一般的ではありません。一方、米国では、テキストメールでは使えない色文字やフォントサイズの変更、画像の埋め込み、表の使用などが可能となる「HTMLメール」や、絞り込んだ対象者にだけ送る「ターゲッティングメール」など様々な手法が利用されています。日本企業がマーケティングオートメーションツールを活用するには、自社のメールマーケティングの強化も視野に入れておくべきでしょう。

導入後に後悔しないマーケティングオートメーションツール選び

このように現状では、日本企業では海外で開発された製品を十分に活用されていないようです。しかし、適切に運用すれば、マーケティングオートメーションツールはマーケターの強い味方となることに変わりはありません。

マーケティングオートメーションツールの導入を検討しているならば、まずは、米国で開発されたマーケティングオートメーションツールが、企業内でのマーケティング組織体制が確立され、経験や知識が豊富なマーケティング担当者が多い米国企業向けに作られているということを念頭に置く必要があります。そのうえで、自社が準備できる運用体制を考慮し、導入後に現実的に運用できるツールを選ぶのが大切です。

とくに、自社のマーケティングの体制がまだまだ十分ではない、自社サイトへの流入がそもそも少ないという企業が、マーケティングオートメーション導入後に現実的に運用するためには、以下のポイントを確認しましょう。

  • 顧客情報リストを持っていない、またはサイトへの流入が少ない場合は、顧客情報を得るための「集客機能」があること
  • Webマーケティングのノウハウやデジタルスキルを持つ人が社内に少ない場合は、「サポート体制」の有無を確認すること
  • 十分な数のスタッフを確保するのが難しい場合は、現実的に運用可能な「シンプルな機能」、もしくは、自社の課題によって必要十分な機能が選べる「選択制」があること

以上のような点に注意して、自社の課題や目的に適したツールを導入・運用することができたら、マーケティングの自動化は、よりあなたの近いところまで訪れるはずです。

参考:

➢      Why Marketing Automation Software Fails to Deliver |Marketing Software |CRM search

➢      マーケティングオートメーションの導入が失敗してしまう理由とは?求められるマーケティングプラットフォーム|マーケティング|AdverTimes

➢    『B to Bのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方』(庭山一郎著、翔泳社)