リードスコアリングは意味がない?マーケティングオートメーションで失敗しがちなポイント【MarkeZineDay 2015 Autumn講演レポート】

BtoBマーケティング

こんにちは。イノーバマーケティング部の亀山です。

2015年10月14日(水)目黒雅叙園にて開催されたマーケティングカンファレンス「MarkeZineDay 2015 Autumn」に参加してきました。

今回イノーバは「マーケティングオートメーションで失敗しがちなポイントと導入のコツ」をテーマに、プライベートDMP構築によるデータ解析、行動トラッキング等を得意とするマーケティングオートメーション「SATORI」を展開するSATORI株式会社との共同セッションに登壇。本日は同セッションの内容をもとにお届けします。

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「コンテンツ」と「データ」のプロが語る、BtoB企業のための失敗しないマーケティングオートメーション導入のコツ

SATORI株式会社の植山社長とイノーバ代表宗像が共同でセッションに参加するのは、実は今回で2回目。今年春に開催されたMarkeZineDay 2015 Springでは「コンテンツマーケティング×DMPでひらく新たなオウンドメディア戦略」と題してセッションを行いました。

それから、半年。BtoB企業を中心に「マーケティングオートメーション(MA)」が盛り上がりを見せる中、導入企業からも悲喜こもごもさまざまな声が聞こえてくるようになってきました。

そこで今回、両社の事例や実践経験を基に、マーケティングオートメーション導入の際につまずきがちなポイントを整理。ツール選定時に考えるべきコトをお伝えする場として同セッションを企画しました。

マーケティングのパラダイムシフトが生んだ「マーケティングオートメーション」

昨年ごろから国内でも急速に注目が高まっている「マーケティングオートメーション」。海外製ツールが立て続けに日本上陸してきたことが直接的な要因ですが、そもそもの普及の背景には下記のような買い手側の購買行動の変化があります。

ネットの普及により、買い手は購買前に積極的に情報収集を行うようになりました。「検討期間が長く」「複数の人間が意思決定プロセスに参加し」「極めてロジカルに意思決定を行う」特性のあるBtoB(企業間取引)のビジネスにおいては特に顕著な傾向です。

そんな中、BtoB企業のマーケティング担当部門には買い手の情報収集行動時に有益な情報=コンテンツを通して非対面チャネルで顧客と接点を持ち、有効商談を創り出していくことが求められています。これをシステム面から解決するために「マーケティングオートメーション」が注目されているのです。

「ツール代が高い」「単なるメール配信になっている」「一度説得した上司の手前やめられない」「もっと活用したい」

米国ではすでに200以上のツールベンダーがひしめき合い、国内でもすでに10以上の選択肢があるマーケティングオートメーションツールですが、導入企業からはさまざまな「苦しみの声」が上がっています。つまずきや失敗の要因はさまざまですが、その多くは実際のマーケティング〜営業プロセスや運用体制に合わない導入の仕方や設定をしてしまったことに起因しています。

まず無視できないのが、マーケティング先進国である米国と、現在の多くの日本企業を取り巻く環境の違いです。

米国では、その国土の広さや消費者の多様さを背景に、古くからマーケティングが高度に進化してきました。多くの企業にCMO(最高マーケティング責任者)が存在し、経営の中枢を担っています。当然、マーケティングに投下する人的・金銭的資源も多く、マーケティングプロセスが確立されているのも特徴です。

一方で日本ではまだまだCMOどころかマーケティング専任部署が存在しない企業も多く、マーケティング〜営業というマーケティングプロセスが確立されていません。マーケティング自体を重要視してこなかったことから投資にも積極的でなく、ツールに対するリテラシーやコンテンツも不足しているのが現状です。

マーケティングに対する基礎体力からして、現在主流の海外製マーケティングオートメーションツールが主戦場とする米国とは環境が大きく違うのです。

失敗1:コンテンツがない!

マーケティングオートメーションは、見込み顧客の属性や行動を基に彼らの購買検討段階や情報ニーズをくみ取り、それに応じた「適切なコンテンツを、適切なタイミングで提供する」プロセスを自動化することでリードナーチャリングを支援してくれます。

そのためには当然「ターゲットの情報ニーズに応じたコンテンツ」が必要なわけですが、これが不十分な状態でツールだけ導入してしまうことでただのメルマガ一斉配信ツールになってしまっている…といったケースが散見されます。

マーケティングオートメーションツールが広く普及している米国においても、運用のハードルとして「充分な量のコンテンツを適正なコストで準備すること」を挙げている企業が70%にのぼります。

「コンテンツとツールは両輪」ということを念頭に、充分なコンテンツを作り続けられる運用体制を考えることが肝心です。

失敗2:使いこなせない!

マーケティングオートメーションツールを選ぶとき、機能一覧表を見ると思います。複数の候補ツールを並べて、機能比較を行うのではないでしょうか。リードスコアリング機能、ナーチャリング機能、A/Bテスト、CMS機能、SEO対策機能……などなど。マーケティングオートメーションツールの機能表には、胸躍るかっこいいマジックワードが目白押しです。

『これもよさそう、どうせならこれも…この機能があったらこんなこともできるかも…』

これが落とし穴です。

はてしてその機能、すべて使いこなせますか?そもそも、必要でしょうか?


米国においても、マーケティングオートメーションツール導入時のカベとして「ツールの複雑さ」と「営業部門、マーケティング部門の連携不足」が挙げられています。
高機能すぎて使えない自社の体制では運用しきれない、という課題です。

また、それを背景に、ツール導入時の評価項目として「価格」「他のツールとの機能連携」に次いで「使いやすさ/学習のしやすさ」が挙げられている点は特筆に値すると言えます。

日本人はとかく「全部載せ」を好みますが、機能ありきでツール選定をしてしまうと、機能に振り回されて終わります。

目的と実現したいコトが存在し、そのために本当に必要な機能はなんなのかを見極めた上で、比較選定の際に重視する機能に重み付けを行うことがポイントです。

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失敗3:リードスコアリング神話

見込み顧客の検討度合い、いわゆる「どのくらいホットなリードなのか」を可視化する手段として「リードスコアリング」という機能があります。マーケティングオートメーションツールの目玉機能の一つで、そのわかりやすさから導入時の説得材料として使われることも多い機能でしょう。

しかし、このリードスコアリングが逆に、「ゴミ商談」を量産しているというケースが多々あります。

【ユーザーの苦しみの声】

  • 90点で成約しない見込み顧客がいる一方で、50点でも成約するケースがある
  • スコアがすぐにインフレをおこして、あっという間に「1万点」とかになってしまう
  • 1000点と1200点ってなにが違うんだっけ…?

結果、スコアに応じたアクションを取るわけでもなく、ただ高スコア順にソートするために使うだけ…といったことが現場では頻発しています。

「高スコア=購買に近い」わけではない

なぜこういうことが起きるのか。

大きな理由は「顧客の意思決定プロセスとの対応が難しい」点にあります。

上の図のように、買い手は購買に至るまでに「課題を認識」してはじめて「解決手段の調査」を行い、「検討候補をリストアップ」した上で具体的な比較検討を行います。

売り手側がもっともアプローチしたいタイミングである「検討候補のリストアップ」のタイミングというのが、スコアであらわすところの何点なのか?

必ずしも「高スコア=購買に近い」わけではなく、その対応が非常に困難なのです。

スコアリングは通常、ユーザーの「属性」「興味」「活性度」を切り口に、各項目に点数を付与することで加点(もしくは減点)していきます。

「企業規模100人以上なら+10点(属性)」
「ブログ記事を1記事読んだら+2点(興味)」
「機能比較表を閲覧したら+5点(興味)」
「サービス資料請求+50点(興味)」
「直近の2週間以内にサイト未訪問だとー10点(活性度)」

といった具合です。

では、ブログ記事を30記事読んだユーザーA(60点)とサービス資料請求を行ったユーザーB(50点)では、どちらが検討度合いが進んでいると言えるのか?

この場合であればおそらくユーザーBであると言えそうですが、これはスコアだけ見ていてはわかりません。そして、実際にはもっと膨大な因子が存在します。

スコアリングの考え方は非常にロジカルで納得感もありますが、限界も存在する、ということを理解しておく必要があるのです。

実際に、SATORI社のツールを導入している企業において成約した顧客の行動を分析したところ、興味深い結果が得られました。「無料トライアル」や「メルマガ開封」といった、マーケティング部門がスコアリングの加点対象としていた行動が、実際の購買に対して負の相関にあったという事例です。


こういった、実際の購買行動との乖離を減らすためには、マーケティング部門だけでカスタマージャーニーを想定するのではなく、営業部門に実際の顧客の購買行動やトリガーとなるアクションをヒアリングしながらプロセスを決める事が重要です。

その上で過去の受注データに照らし合わせてレビューを行うことをおすすめします。

失敗4:メールドリッププログラム神話

最後に、リードナーチャリングです。

マーケティングオートメーションツールの多くには、見込み顧客に対してナーチャリングを目的に段階的なメール配信を行うための機能が備わっています。

”メールドリッププログラム”などと呼ばれ、ユーザーの行動に応じて枝分かれしていくストーリーを自動配信する機能です。

ユーザーの行動に応じてコンテンツを配信するという、こちらも非常にロジカルで納得感のある機能であるがゆえ、導入企業はナーチャリングのための主力手段としてこのドリッププログラムに大きな期待を抱きますが、ツールの機能に縛られ、メールだけに依存するとすぐに限界が訪れます。

【ユーザーの苦しみの声】

  • メール開封とウェブ行動だけで顧客がよく分からない
  • メールの反応が日々下がっている
  • メール配信以外の施策はどうしたらいいのかわからない

顧客の意思決定は多次元である

ドリッププログラムの”わかりやすさ”の背景には、仕組みのシンプルさがあります。「発信側の問いかけに対してどんなリアクションを取ったか」という反応に応じてコンテンツを出しわけるのですが、これはアクション⇔リアクションという1次元的な行動です。

しかし、実際のユーザーは発信側が投げかけたメッセージ(ドリッププログラムで送られるメール)以外にも日々さまざまな情報に触れ、多次元的に意思決定を行っています。誰もあなたのメールだけを一日中PCの前で待っているわけではないのです。

また、そもそもメールアドレスというのは年平均25%の割合で死んでいく(無効になっていく)と言われています。

リードナーチャリング手段はメールだけじゃない

メールによるナーチャリングが役に立たないというわけではありません。メール以外の手段も組み合わせるべき、ということです。

  • ウェブ接客
  • ユーザーの行動や興味関心に応じたリターゲティング広告(ダイナミックリターゲティングや経路リターゲティングなど)
  • Facebookリマーケティング
  • インサイドセールスによる電話での直接コミュニケーション

上記は一例ですが、見込み顧客の情報収集行動に合わせてさまざまな手段でコンテンツを届けていくことが重要です。

まとめ:これからMAツールを選ぶなら

マーケティングオートメーションツールは、顧客情報をきちんと一元管理した上で正しく導入すればマーケターにとって非常に強力な武器となりえることは間違いありません。

しかし、集客〜リードジェネレーション〜リードナーチャリング〜商談化〜成約という一連のマーケティングプロセス自体が確立されていなかったり、営業のヨミ管理が徹底されていないような状態ではどのツールを導入しても機能しません。

これらの準備がそろった上でマーケティングオートメーションに取り組む際のポイントをまとめます。

ツール選定時のポイント

  1. 解決したい問題はなにかを明確にし、検討の軸を持つ(集客?リード獲得?商談化率向上?成約率向上?離脱防止?)
  2. そのために必要な機能はなにかを考え、比較検討時には重要機能に重み付けを行う
  3. コンテンツの制作を含む継続的な運用が可能か、運用にかかる予算配分に加え、使いやすさ/学習難度を含めて考える

運用時のポイント

  1. 可能な限り多くのデータを取り込む
  2. メールなど、ツールの機能ありきな特定のコミュニケーション手段に依存しない
  3. 実践の中から自分たちの「勝ちパターン」をつくる

マーケティングオートメーションツールはさまざまな期待を抱かせる、とても「ワクワクするツール」ですが、魔法の杖ではありません。マーケターにとっては毒にも薬にもなり得る道具です。

自社のマーケティング課題を振り返り、マーケティングオートメーション導入によって解決したい課題を明確に定めた上で身の丈にあった「必要十分な」ツールを選ぶことが成功の秘訣と言えそうです。

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